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「HELLSING」噛まれても、童貞・処女以外は吸血鬼になれません

今回は、「HELLSING」について書いてみたい。
これ、TVアニメ版とOVA版の2種類あるのよ。
まずTVアニメ版が2001年、GONZOによって制作された。
だけど原作者の平野耕太先生は、かなりこれの出来が不満だった様子。
監督はOVA「デビルマン」の飯田馬之介、脚本は「serial experiments lain」「デビルマンレディー」等の小中千昭とあって、かなりホラー色の強いものになってるんだ。
原作にあるコミカル要素などは一切排除され、また原作で重要なカギを握るナチスも一切出てこない。
つまり「少佐」は出てこないし、あとヒロインといい感じで絡む「隊長」も出てこない。

TVアニメ版「HELLSING」(2001年)

まぁ、ファンから酷評されてる本作にせよ、でも原作をヌキにして見れば、言われてるほどには酷いものとも思わなかったけど?
00年代アニメ特有の重苦しい暗さみたいなものが、逆に結構ハマってるよ。
かなり美意識が高い、カッコいい系の作品である。
とはいえ、後に出たOVA版の方がこのTVアニメ版のクオリティを遥かに凌ぐ出来だったのは事実だと思う。

OVA版「HELLSING」(2006~2012年)

これの制作は平野先生自ら関わってたらしく、今度こそ原作に忠実な形でのアニメ化である。
そのせいか、めっちゃ濃いのよ!
何が濃いかって、作画や音楽もそうだが、何より声優である。
何より大きいのは、アンデルセン神父役を野沢那智から若本規夫に変更したことだろう。
私はこれを若本効果として見てるんだが、このOVA版ではTV版からの続投となったアーカード役・中田譲治、インテグラ役・榊原良子も見違えるように芝居が濃くなってるのさ。
よく考えたら、<中田譲治+若本規夫+榊原良子>という組み合わせも凄くないか?
まさに、混ぜるな危険、って感じ。

中田譲治=言峰綺礼(Fate)

若本規夫=シャルル皇帝(コードギアス)

榊原良子=ハマーンカーン(Zガンダム)

「混ぜるな危険」と言ってるのに、このOVAではこの3人がよく絡むんだわ。

若本規夫と榊原良子のタイマン!

絶好調、若本規夫!

それに呼応する、中田譲治!

もうね、これ以上濃いのはマジ見たことないよ。
まさに脂vs脂vs脂で、それこそ霜降り肉のサーロインステーキにパン粉をつけて油で揚げて、それに濃厚デミグラスソースをかけたような感じ。
ちょっと胃にクルけど、たまに食べたくなるよね!
この御三方が収録してる現場とか、ぜひ見たかったなぁ・・。

いや、この御三方に限らず、本作はやたら声優さんの熱がスゴイ。
みんなセリフが妙に長くて、1分以上のセリフとかしょっちゅうあったよ。
コレ↓↓なんか、約6分だぞ?

これは、今なお伝説として語り継がれてる「少佐の演説」、声優は飛田展男である。
飛田さんといってもいまどきピンとこない人もたくさんいるだろうけど、「Zガンダム」のカミーユビダンといえばご理解いただけるだろう。

あの時のカミーユ、ヤバそうだなと思ってたが

結局、こんなオトナになっちゃったのね・・。

で、この時の飛田さんの6分演説の収録がリハなしの一発録りだったらしくて、それもNGなしの一発OKだったらしいよ。
やっぱその時、収録スタジオの熱気は凄かったらしい。
いやはや、このシーンだけでも「HELLSING」は名作殿堂入りだよね。

とにかく鮮烈な印象を残した狂気のラスボス・少佐だが、実をいうと主人公アーカード(中田譲治)は少佐を倒せないのよ。
というか、むしろ逆に倒されてしまう。
じゃ、少佐を誰が倒したのかというと、そりゃもちろん、榊原良子ですわ。

やっぱカミーユ(飛田展男)を倒すのは、  ハマーンカーン(榊原良子)である。

この時の榊原良子さんのド迫力がまた凄い・・

もうね、この「HELLSING」はベテラン声優さんたちの熱気が凄すぎて、私、最後の方はストーリーとかヌキでホント涙が出てきちゃうのよ・・。

このOVAの企画は2006年から始まり、完結したのは2012年だから足掛け6年である。
その間に制作会社は2度変更(サテライト⇒マッドハウス⇒グラフィニカ)し、監督はコロコロ替わり、それでも一定の高水準クオリティを保てたのは、他の何でもない、声優さんたちの頑張りが大きかったんだと思う。
なんていうかな、これは声優vs声優のバトルなのよ。
このOVA、妙に長尺の難易度高いセリフが多いんだが、そこは各々キャリアある人たちばかりで皆さん誇りもあるし、1ミリも手を抜けない。
そして、負けてられない。
そういう意地と意地のぶつかり合いみたいなものを、「HELLSING」から感じ取ってほしい。

中田譲治vs若本規夫のドツキ合いには手に汗を握った

いやもちろん、この作品は声優だけが見どころというわけでもないさ。
ちゃんと物語も面白いよ。
特に私が本作で面白いと思ったのは、

吸血鬼に噛まれた場合、その噛まれた人間はグール(自己の意思をもつことのないゾンビのような喰種)となるが、童貞・処女が噛まれた場合、その人は吸血鬼になる

という設定である。
なるほど。
童貞・処女、そこがポイントなのか。

処女ゆえ、吸血鬼になったヒロイン・セラス
インテグラは噛まれたことがないが、今なお処女である

この作品、童貞・処女を大切にしましょう!というメッセージ性があるんだね。

しかし、童貞・処女も定義が難しいところである。
一応未経験だけど、先っぽを少しだけ挿れたことがある人はどうなるのか?とか、一応処女だけど、体育の時間にハードル走で膜が破れた子はどうなるのか?とか、普段のオモチャの使用は大丈夫ですか?とか、私としては確認しておきたいシチュエーションが100ほどあります。
そこは、できれば作中でハッキリさせておいてほしかった。

作中、かわいい女子がセラスだけだったというのが何とも・・

それだけじゃなく、この「HELLSING」はヤバいな・・という表現が結構多いのよ。
特にヤバいと思ったのは

・ローマカトリック教会
・英国王室
・ナチス

という実在する、もしくは実在した組織を題材にしてるところ。
吸血鬼vs人間の攻防なんてフィクションだから全然いいんだけど、一方、そのどさくさでカトリックvsプロテスタントの人間同士で殺し合う描写が結構多く、これヤバくね?と率直に思わざるを得ない。
しかも、バチカンの大司教が自ら指揮してロンドンを空爆し、市民を大虐殺するくだりがあり、多分このOVAって普通に欧州でも流通してると思うし、こういう内容はあっちで大丈夫だったの?と心配にもなるさ。

「HELLSING」が描いたバチカンの大司教

昔、「ダビンチコード」がベストセラーになった時にバチカンと結構モメたという話も聞くし、だとすりゃ「HELLSING」もヤバかったんじゃない?
作中の大司教なんて、明らかに狂人として描かれたし。
・・といいつつ、この作品、海外でめっちゃ人気あるみたいだね。
うん、あっちの人たちも大体は、こういうのをシャレのきいたファンタジーというふうに解釈してくれているんだろう。
聞けば、今ハリウッドがこれの実写化で動いてるらしいね。
ちょっと楽しみである。

「HELLSING」脚本を担当するデレク・コルスタッド氏

まぁとにかく、ダークファンタジー好きの人ならばOVA「HELLSING」は必見である。
私、こういう薄暗い世界観が大好きなんだよね。
おそらく、TYPE-MOONにも大きな影響を与えた作品だと思う。
未見の方がいらしたら、是非ご覧になってください。

中田譲治になら噛まれてもいい・・


間違いなく、そう思える作品です。


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