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「PSYCHO-PASS」シビュラシステムとは一体何なのか?

今回は、ノイタミナの名作「PSYCHO-PASS」について書きたい。
私。これ大好きなんだよね。
世間一般でも、結構人気が高いと思う。
実際、某サイトが昨年実施した「ノイタミナ人気投票結果」を見ると、以下の結果だったわ。

【1位】PSYCHO-PASS

【2位】あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。

【3位】モノノ怪

【4位】甲鉄城のカバネリ

【5位】ギルティクラウン

【6位】東のエデン

【7位】バクテン!

【8位】残響のテロル

【9位】C

【10位】東京マグニチュード8.0

しかもこれ、1位の「PSYCHO-PASS」は総投票数の約5割をも占めるという圧倒的大差のトップだったみたい。
だけど私は、これってかなり凄いことだな、と思ってね。
だってさ、どう考えても「PSYCHO-PASS」はSFとして難解な部類に入る作品でしょ?
なのにこれだけ支持を受けてるということは、多分それだけ理解できてる人が存在する、ということなんだよ。
日本のアニメファンの知能たるや、まさにおそるべし・・。

とはいえ、中には「話が急に難しくなって、途中で落ちました」という人も一定数いると思うんだ。
しかし、それは決して恥じることではない。
というか、このアニメは基本、全般的に説明不足だと思うんだよね。
特に虚淵玄冲方丁といった「あっちの世界」の人たちが制作に絡んでたりするので、彼らは「これぐらいことは誰でも分かるでしょ?」という専門家である自分の基準で作品を作っちゃうのよ。
「PSYCHO-PASS」も最初、猟奇的殺人犯vs公安の刑事というサスペンス物として視聴者は見ていたのに、後半の「シビュラシステム」の実態を明かすあたりから急にSFっぽさが出てきて、やたら小難しくなるでしょ?
これ、作り手側の配慮の問題だと思うけどなぁ・・。

で、今回は私なりに、この作品において一番ややこしい

「シビュラシステムとは何ぞや?」


ということについて書いていきたいと思う。
正直、これは結構難しいっすよ・・。
私も決して頭のいい方ではないので、虚淵さんや冲方さんの意図したところを正しく理解できてるとは言いがたい。
だから間違いもあるかもしれんが、そこは最初にご容赦ください。

じゃ、まずは

「シビュラシステムは、なぜ犯罪係数(犯罪を犯す可能性)を測定できるの?」


という問題から。
これはね、率直にいって、シビュラが人の意識にアクセスできるからですよ。

じゃ、その仕組みの説明から入ろう。

【図①】

【図②】

図②は、人間個々のパーソナリティである「意識」の構造を表したもので、こうした個々のパーソナリティが、図①みたく根っこの「集合的無意識」によって束ねられてる、というふうに解釈してみてください。
これは、ひとつのネットワークみたいなもんだよね。

いわば人間個人個人が「端末」、それを束ねる根っこが「メインフレーム」だと解釈してもらえばいいと思う。
で、この場合のメインフレームの強みは何かというと、それは個々の端末をハッキングできること(一方、端末側からメインフレームへのハッキングはできないと思う)。
うん、実はメインフレームって、個々のファイルを隅から隅まで読むことができるんだ。
そのファイルってのも、図②でいうところの顕在意識のみならず、潜在意識(それがファイルの90~97%だと図②にある)までも、である。
それらが全部読めちゃうから、いちいちリクルート活動の面接とかしなくていいのよ。
そもそもリクルート活動の面接って、その個人のファイルの中身を質疑応答によって開示させる作業でしょ?
そんなメンドくさいことしなくても、メインフレームが読み取れば一発だよということで、この「PSYCHO-PASS」の世界ではリクルート活動というもの自体がないらしい。

いうまでもないけど、このメインフレームの存在こそが、シビュラシステムそのものである

・・え?それって変じゃないか?
と、勘のいい人ほど感じるだろう。
図①を見る限り、そのメインフレームに該当するのは単に「集合的無意識」であって、そんなのはたかが無意識の集合体にすぎないでしょ、と。
うん、まさにその通りなんだわ。
だからこそ、ここで必要とされるのが、サイコパス(猟奇的犯罪者)の存在なのさ。

シビュラシステム

作中に出てきた、たくさんの脳が配置された一室。
あの脳は全て、生前に猟奇的犯罪を犯したサイコパスたちのものだという。
ここで、「はぁ?」となるよね。
いきなり、話が飛躍しすぎてるし。
これに対する作中での説明は

「システムを逸脱した者には、システムの運用を委ねればいい。             それが最も合理的な結論です」


としか言及しておらず、こんな言葉足らずでは、話はワケが分かんなくなるのも当然である。
しかし、実際これはどういうことかというと、補足説明すると

サイコパス=共感性の欠落したパーソナリティ
サイコパス=集合的無意識の中に同化しないパーソナリティ
サイコパス=集合的無意識を意識できるパーソナリティ


ということ。

つまり、無意識を意識できるサイコパスの脳(意識)を媒介にして、初めて集合的無意識が体系化された知的人格、シビュラになれる、ということ。


このへん、システム的には「ID:INVADED」とほとんど同じロジックなんだよね。
補足資料になるかもしれないので、念のため貼っておきしょう。

で、ひとつの「人格」として体系化された集合的無意識って、いわば人格化された「アカシックレコード」であり、解釈によっては全知の神ともいえる存在なんだ。
主人公・常守朱は、そこに疑念を抱いてるんだけど・・。
で、「シビュラ」は全知であっても全能ではない、と考える常守ちゃんは、あるキーパーソンを公安にニューフェイスとして引っ張ってくるわけさ。
それが、3期から主人公になったこいつ、慎導灼↓↓

慎導灼(cv梶裕貴)

慎導灼は、実は凄い能力を持ってるのよ。
それは「メンタルトレース」というやつなんだけど、これってどう考えても図①の「集合的無意識」、もしくは「潜在意識」へのダイブだよね?

メンタルトレース状態の慎導
作中では、メンタルトレースによる心理操作の可能性まで示唆されていた

無意識への侵入。
これは本来、この世界ではシビュラだけが侵入可能とされた領域である。
だけど慎導がダイブできてるということは、ひょっとしてこいつ、

端末の側(人間)から、メインフレームの側(シビュラ)にハッキング仕掛けられる唯一のチートなんじゃないの?


思えば、常守ちゃんが3期ラストで現場復帰したことだし、あるいは4期、慎導と常守ちゃんでシビュラをハッキングする展開がきそうな予感・・。
というか、慎導はシビュラがドミネーターでは裁けない「免罪体質」なんだよね。
それは、常守ちゃんも同じく。
作中では、
免罪体質=イレギュラー=サイコパス(猟奇的犯罪者の資質あり?)
ということになってるんだけど、慎導や常守ちゃんを見てると、どうしてもそこが腑に落ちない。
多分これ、必ず裏設定あるよね。
私が予想してるのは、

シビュラは、自分自身(シビュラそのもの)を裁けない
⇒だから、シビュラと同等の能力をもつ者(慎導の無意識へのダイブ等)も同じく裁けない

というロジックかと。
きっと常守ちゃんの異様な犯罪係数の低さも、そのへんが原因になってるんだろうよ。

常守朱(cv花澤香菜)

で、「PSYCHO-PASS」のこれからの展開は、

シビュラシステムあるから、もう法律なんていらねーじゃん!
よし、法律も裁判も全部なくそう!

という官僚・政治家たちの動きに対して、今後の常守ちゃんたちがどう対抗するか、なんだよ。
このままでは日本は非法治国家になり、人々は皆、シビュラシステムの奴隷に成り下がってしまう。
人間は物事を決める必要はない、全てシビュラが決めてくれるから、というディストピア・・。
怖い世界だなと思うけど、一番怖いのは、作中でこれを怖いと思ってる人間が世間にはそんなにいない、という事実の方だね。
これに警鐘を鳴らす為、常守ちゃんはわざわざ衆人環視の中、銃で人を殺すという犯罪をやってのけたのよ。
案の定、人を殺したのに彼女の「犯罪係数」に変化はなく、つまりシビュラでは裁けない犯罪者が実在するよ、私がそうですよ、と自ら実証してみせたわけだ。
これが、劇場版「PSYCHO-PASS PROVIDENCE」のオチだったよね。

「PSYCHO-PASS PROVIDENCE」(2023年)

この映画、良かったわ~。
敢えて3期の後に、時系列では遡る形のこの映画を公開したということは、つまり4期はまた常守ちゃんが主役に返り咲くという意味だろう。
今となっては常守朱も、草薙と並ぶ日本公安のエースである。

銃口を額に突き付けられても、最後まで動揺を見せなかった常守ちゃん。
このシーンを見た時、

あ、この子、ひょっとして真性のサイコパス?


と思ってしまった。
その可能性も、確かにゼロではないんだ。
自分の手で人を殺しても、目の前で友人を殺されても、彼女の係数に影響が全く出なかったのは一応事実だからなぁ・・。


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