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「ラストエグザイル」の頃のGONZOは最高だった・・

今回は、GONZOについて書いてみたい。
このアニメ制作会社は、1992年にガイナックスから独立して立ち上げられたところである。
ふしぎの海のナディア」(1990年)プロデューサー・村濱章司さんを軸にして、あと前田真宏さんや樋口真嗣さんあたりもここに加わっている。
かなりココロザシの高い独立だったと思うんだ。
そのココロザシの高さは、一番最初に作ったアニメに顕著に出ている。

OVA「青の6号」(1998年)

「青の6号」(1998年)

これはOVAゆえ一般的にはさほど知名度ないかもしれんが、98年に3DCGをここまで導入したアニメというのはかなり珍しかったと思うんだよね。
もうホント、ビックリするほど映像が凄い!
これ、テレビ放送されてないのが惜しいなぁ。
テレビでやりゃ、絶対話題騒然となっただろうに。
ストーリーは、世界で最も権威ある科学者・ゾーンダイクが、ある時期から突如として反旗を翻し、半魚人っぽいミュータントを生み出して人類に対して攻撃を仕掛け始めた、という荒唐無稽なものである。
やがて世界は崩壊し、10億もの人々が死んでいくことに・・。
ゾーンダイクの意図するところはずっと謎のままにされ、ひたすら人類vsミュータントの闘いが描かれていく。
また、このミュータントの造形ってのがなかなか凄いんだわ。

この作品の監督は前田真宏
彼はガイナックスの中でも特殊な立ち位置にいたイメージが私にはあって、かなり映像表現志向派の人だったんじゃないかと。

思えば1989年、彼が手掛けたミュージックビデオがこれだったわ↓↓

懐かしいな~!
布袋寅泰の全盛期じゃん!
そういや、全盛期の布袋さんは身長が2メートルを超えてたらしいぞ?
それにしても、前田さんはこの89年の時点でアニメと実写の融合をやってるんだよね。
しかも、アート志向が強い。

彼が「青の6号」の次に監督を手掛けたのが「巌窟王」で、これも3DCGを大胆に取り込んだ芸術性の高い映像表現の作品だった。

「巌窟王」(2004年)

そして、この「巌窟王」とほぼ同時期に手掛けたのが「アニマトリックス」というハリウッド企画のオムニバス作品であり、前田さんが監督したのは「セカンドルネッサンス」という特にエグいパートだったわ。

「アニマトリックス/セカンドルネッサンス」(2003年)

この「アニマトリックス」で前田さんの国際知名度が上がったのか、その後クエンティンタランティーノの「キルビル」アニメパートに絡んだり、近年ではジョージミラーに招聘され、「マッドマックス/怒りのデスロード」にてデザイナーを務めたりもしている。
ジョージミラーとしては、前田さんと組んで「マッドマックス」アニメ企画まで構想してたらしいぞ。

思えば、前田さんは元ガイナックスには相応しくないイケメンだった

GONZOが不幸だったのは、こうして才能が外に引っ張り出されていったという流れである。
樋口さんも2005年「ローレライ」、2006年「日本沈没」など東宝特撮映画の監督をやる流れとなっていた。
やがて、社長の村濱さんまで2009年にGONZOを離れていくことに・・。
その頃には前田さんも樋口さんも拠点をカラー(庵野秀明が立ち上げた会社ね)に移しており、創設メンバーは誰もいなくなってしまったわけだ。
以降のGONZOは凡庸な制作会社になったというべきか、個人的には面白みのない会社になったと思う。
少なくとも00年代前半までは、日本でもトップクラスの野心的なアニメ作りをするところだったんだぞ。
たとえば、2002年のOVA「戦闘妖精雪風」。

「戦闘妖精雪風」(2002年)

これも3DCGを駆使したやつで、その空戦の迫力たるや、これまでのアニメの常識を覆すほどの次元だったと思う。
なのにOVAゆえ、「青の6号」と同じで、さほど話題にもなっていないのが哀しい・・。
GONZOのよくない点は、こういうところだよね。
作品のクオリティが、まるで商売に繋がってない。
そもそも、3DCGの導入は初期投資にめっちゃおカネがかかると聞いているし、初期のGONZOは赤字続きだったのでは?
・・だけど村濱社長は、身を引く前にひとつ、実にいい仕事をしてくれたと思う。
それが、GONZO10周年記念作品「ラストエグザイル」の制作である。

「ラストエグザイル」(2003年)

私、これめっちゃ好きなんですけど!
内容は、ほぼ「ふしぎの海のナディア」ですわ(笑)。
でっかい戦艦があって、そこにワケありの艦長がいて、血縁とか色々な因縁があって、ラストは「ラピュタ」っぽく締める、という流れは「ナディア」そのまんまだし。
まぁ、村濱さんは「ナディア」のプロデューサーだったからね。
GONZOで3DCG版「ナディア」にチャレンジしてみたかったんだろう。
この作品で前田さんはプロダクションデザインを担当していて、これがもう見事なスチームパンクの世界観を構築してくれている。

もともと前田さんは宮崎駿信奉者で、「風の谷のナウシカ」制作の手伝いに行こうと言い出して庵野さんを連れ出したのは他ならぬ前田さんである。
そういう人ゆえ、空を飛ぶヴァンシップには並々ならぬ強い想いがあったに違いない。
あと私は、この作品のオープニングがめっちゃ好きなのよ。
00年代アニメの中では、完全に頭ひとつ抜けたクオリティだったと思う。
じゃ、その映像をご覧ください。

・・完璧だよね。
正直いって本家「ナディア」を遥かに凌いでるし、ここまでのものを作ったGONZOが、その後堕ちていったのはホントに残念である。
多分だけど、この時代ではまだ3DCGでがっつりやると収支が合わなかったんじゃないだろうか。
ガイナックスにおける有名な話だが、実は「ナディア」を作ったことによりガイナックスは莫大な借金を背負った、といわれてるのね。
おかしな話である。
ちゃんとアニメとしては成功したのに、逆に借金を抱えるなんて・・。
でも、案外そういうものなんだ。
作品のクオリティを追求すれば予算をオーバーしちゃうことってあるわけで、そこはプロデューサー次第なんだけど、「ナディア」のプロデューサー村濱さんは「予算オーバー上等!」とするタイプの人だったんだろうね。
で、そういう人がGONZOの社長だけに、初期GONZOの作品ってやけに贅沢な作りのものが多い気がするのよ。
この「ラストエグザイル」もそうである。
オープニングとか、「これ劇場作品かよ!」とツッコみたくなるほど贅沢な作りである。
結果として、GONZOは経営に行き詰ったんだと思う。
やがて09年、どこぞの会社に買収されてしまった・・。
それ以降「予算の範囲内で作る」堅実な作風となり、クソつまらなくなったんだけどね。
だから、皆さんに言っときたい。

GONZO作品は、初期のものだけ見るべきだ。

いくつか、他にもGONZO初期の名作をご紹介しておきたい。

フルメタルパニック(2002年)

この名作の第1期はGONZOだった

最終兵器彼女(2002年)

この作品あたりから、GONZOの鬱傾向が強くなっていく・・

キディグレイド(2002年)

萌えSFの隠れ名作

SAMURAI7(2004年)

黒澤「七人の侍」アニメ化という発想がシブい!

バジリスク甲賀忍法帖(2005年)

山田風太郎を、OVAでなく地上波でやったことに価値がある

SPEEDGRAPHER(2005年)

ハードボイルドの隠れ名作

ソルティレイ(2006年)

アニメオリジナルとは思えぬほど緻密な世界観!

パンプキンシザーズ(2006年)

2期を待ち続けて、はや20年近く経っている・・

ぼくらの(2007年)

鬱アニメの決定打

アフロサムライ(2007年)

ハリウッドを巻き込んだ野心作だったのに・・

残念ながら、08年以降のGONZOにはほとんど好きなのがない。
ただ例外的に09年の「シャングリ・ラ」、これだけは見るべき価値があると思う。
なぜなら、

中田譲治と大塚芳忠が、コンビでオカマ役をやってくれてるから。

しかも中田譲治さんはめっちゃカッコよくて、言峰綺礼以上のカリスマ性があるんだよなぁ・・。
事実上、これがGONZOらしさのあった最後の作品になってしまった。
ちなみに前田真宏さんは今どうしてるかって、がっつりカラーに籍を置いて劇場版「エヴァ」の「Q」「シン」の監督やってたよね。
樋口さんも庵野さんにくっついて、「シンゴジラ」や「シンウルトラマン」の監督をやっていた。
なんていうかな、ガイナックスのゴタゴタからもう30年ぐらいが経ち、また旧メンバーが集まってワイワイやってるのが微笑ましくてしようがないよ。
GONZOは、そういう彼らの迷走の中の1ページだったということさ。


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