「文学少女」シリーズを再評価しよう!
今回は、アニメ「文学少女」シリーズを取り上げてみたい。
原作は、野村美月著のライトノベル。
これ、出版界業界的には結構な人気シリーズで、2009年「このライトノベルがすごい!」では作品ランキング1位に輝いてる。
この1位は、非常に価値のあることだと思う。
実際、ここでランキング1位になった作品はやがてアニメ化され、神アニメとなるケースも非常に多いんだから。
じゃ、この「文学少女」が1位になった2009年前後の1位作品群を見てみようか。
<「このライトノベルがすごい!」1位作品>
【2007年1位】狼と香辛料
【2008年1位】フルメタルパニック
【2009年1位】文学少女
【2010年1位】バカとテストと召喚獣
【2011年1位】とある魔術の禁書目録
【2012年1位】ソードアートオンライン
見ての通り、1位作品はどれもアニメ化された有名作品ばかりでしょ?
ただ、これらの作品群の中で、「文学少女」だけ知名度が少し劣ってる気がするんだよねぇ~。
いや、私だけの勘違いかもしれないけど。
私が思うに、これはアニメ化の戦略にやや問題があったと思う。
なんせ、「文学少女」はテレビアニメ化されなかったんだから。
アニメ化は、劇場版1本、OVA4本という形だった。
何でテレビアニメ化しなかったの?
小説が16巻もあるなら、テレビアニメ1クール+劇場版という形で仕上げるのが普通だろうに。
まぁ、済んだことをとやかく言ってもしようがない。
でも、アニメそのものの出来は決して悪くなかったし、モッタイナイなぁ、と思ってね。
ちなみに、アニメの制作はProduction I.G。
「攻殻機動隊」で理系のイメージの強いProduction I.Gが「文学少女」というのも悪い冗談だが、「うち、こういう文系の仕事もできますよ!」と主張をしたかったんだろう。
確かに、ヒロイン・天野遠子をcv花澤香菜が演じ、例のふわふわ~とした雰囲気で柔らかい演出だったと思う。
いくらProduction I.Gだからって、さすがに天野遠子のcvを田中敦子にするほどアホじゃないですよ(笑)。
この物語のヒロイン天野遠子は、本を読むことが何よりも大好きな女子高生で、文芸部部長。
「涼宮ハルヒ」長門有希ばりの読書家なんだが、彼女にはひとつの変な癖がある。
それは、本を食べてしまうこと。
本を食べる、それは文章を味わうという比喩的な意味でなく、物理的に本の頁をちぎって、その紙を食べてしまうわけよ。
まぁ、普通の人間じゃないことは確かである。
一般的な食べ物の味は彼女には分からず(味覚障害?)、その代わりに物語の味は理解できるというんだから、一種の「共感覚」みたいなものだろう。
それが栄養になってるかどうかまでは分からん。
とにかく人間というよりは、妖精に近い気がする。
といっても、何か特殊な能力があるわけでもなく、しいて能力を挙げるなら「本で得た豊富な知識」という、何とも地味な設定(笑)。
一応、その能力で学内の問題を解決していくという、一応は青春ミステリーということになるのかな?
で、地味ながらもかなり面白いんだけど、問題はアニメ化の方法論である。
一応、アニメを見る順序としては、まず4つのOVAを視聴し、その完結編として最後に劇場版を見るべきなのに、多分ほとんどの人がその順序を守ってないよね。
おそらく、多くの人がこういう感じ↓↓
①劇場版を見て、後から補完としてOVAを見た。
②劇場版を見て、OVAの方は見ずにそれっきり。
この場合、①はまだいい。
問題は②である。
この劇場版は変に出来がいいので、OVAを見ずとも映画だけでもそれなりに概要を理解できるし、また一番おいしいクライマックスを映画は描いてくれてるので、それを見ただけで「はい、OKです」という気持ちになっちゃうのよ。
あれ?このパターン、以前にどこかで経験したことあるな・・と思ったら、そうだ、これはProduction I.Gが以前に手掛けた「GHOST IN THE SHELL」のパターンじゃないか?
・・いやいや、「文学少女」は「攻殻」と少しタイプが違うでしょ。
こっちは、学園内で起きる日常の事件の積み重ねにこそ味わいがあるわけで、劇場版で起きるひとつの大きな事件(壮絶な鬱展開)だけではこの作品の真髄など理解はできまい。
だからどう考えても、「文学少女」の場合、全12回のテレビシリーズでこそ真価を発揮するタイプだったと思うんだけどな・・。
そもそもOVAは、4本でも全然足りない。
しようがないので、私はドラマCDまで聴いて補完したけど。
この作品を未見の方には、できれば劇場版を見る前にドラマCDを幾つか聴くことをお薦めします。
別にわざわざ購入しなくとも、今の時代はYouTubeでいくらでも無料で視聴できるからね。
「文学少女と死にたがりの道化」編は、マジで凄かったのでおススメ。
しかしなぜ、この「文学少女」に限ってドラマCDをお薦めするのかというと、それは
この「文学少女」のアニメ化作品って、劇場版にせよOVAにせよ、肝心のミステリーとしては ほとんど成立してないんだよ。
ちゃんとミステリーとして成立しているのはむしろドラマCDの方であって、こっちの方が「文学少女」の真髄であり、本丸だと思う。
というか、これ聴いてつくづく思ったわ。
こんな凄い作品、絶対に再アニメ化をすべきだし、できれば次こそはテレビシリーズで本丸の方をやるべきじゃないか、と。
この作品は「氷菓」や「小市民」のイメージに近く、こういう作品を好きな人は結構多いでしょ。
「ビブリア古書堂」にも近い。
「文学少女」も本丸の方のアニメ化さえすれば、間違いなく人気シリーズになったはずなんだよな・・。
まぁ、そうは言っても、劇場版「文学少女」もそこそこイケてる作品だし、未見の方は是非一度ご覧になってみてください。
この作品は、いわゆる「ヤンデレ」、ちょっとヤバい系のオンナノコの物語である。
そのオンナノコというのは、ヒロイン・天野遠子のことではなく、この人、朝倉美羽のことね↓↓
この子、めっちゃ恐いタイプなんですよ。
どうも家庭に問題があり(毒親)、子供の頃から「妄想の世界」に逃避してきたタイプ。
で、その妄想ゆえ息をするように嘘をつくタイプ。
そして、心を閉ざして現実を絶対見ようとしないタイプ。
早い話が、心療内科でないと扱えないタイプだね。
もはや彼女自身、どこまでが嘘でどこまでが現実かを自分でもよく分からなくなってる感じ・・。
妙な話だが、この朝倉美羽は天野遠子との綺麗な対比構図になってるのよ。
遠子もまた「文学少女」で、文学の世界に没頭することで現実とはまた別の妄想世界に浸ってるタイプだから。
そして美羽の方も、作家志望の子だったのよ。
美羽⇔遠子は、意外と紙一重だったのかもしれん。
なんというか、これはかなり闇が深い話なんだよね。
この作品の作者・野村美月先生は、多分女性だと思う(名前だけでは判断がつかないけど)。
元文学少女だったんだろう。
遠子、美羽、どっちに近かったのかは知らんが・・。
そういや、今回のノーベル文学賞受賞者は韓国の女流作家だったと聞く。
女流作家か。
うん、確かに「文学」って、結構女性に適したジャンルだと思うのよ。
男性脳と女性脳の最も大きな差は、右脳と左脳を繋ぐ「脳梁」という部位のスペックだという。
なんと、女性の脳梁のスペックは男性の数十倍にも及ぶらしいぞ?
私はオトコだし、どうしても文を書くときはほとんど左脳(言語脳)だけで書いてしまう。
だけど、オンナは脳梁がオトコの数十倍も強いがゆえ、文を書く時には右脳の「イメージ」を左脳の「言語」に移し、うまく変換できる。
それって、ほぼ右脳で文を書くことができるってことでしょ?
だからこそ、彼女らにはオトコに絶対書けないものを書けちゃうわけね。
正直、羨ましいわ~。
つまり、文学⇔少女、これはとても相性のいい関係なのよ。
そういや、日本で初めて長編小説を書いたのは女性、紫式部だったよね。
日本は、もともと文学少女の国。
女流作家の作品には傑作が多い。
この「文学少女」シリーズも、まさにそうだろう。
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