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「サイボーグ009」の歴史は、日本アニメの歴史

今回は、「サイボーグ009」について書いてみたいと思う。
これは言わずと知れた石ノ森章太郎先生の代表作のひとつであり、その連載は1964年に始まったという。
そして、アニメ化もめっちゃ早いんだよ。
なんと、1966年に劇場版「サイボーグ009」が公開されてるから。
続けて翌年にも、劇場版「サイボーグ009怪獣戦争」が公開。

「サイボーグ009」(1966年)東映

これ、日本アニメ史的にも結構重要な位置づけの作品といえるのかと。
なぜって、これを制作したのは東映動画だから。
それまでの東映は、劇場版アニメは

・長編(長さが80分前後)
・1コマ打ち(1秒24フレーム)のフルアニメーション
・文芸作品


という一貫したコンセプトがあったわけね。
ところが、この「サイボーグ009」は

・中編(長さが60分程度)
・3コマ打ち(1秒8フレーム)のリミテッドアニメーション
・漫画のアニメ化


となっていて、今までの路線とは大きく異なってるんだ。
東映の社内では既存の長編路線を「A作」、そして「009」のような中編路線を「B作」と呼んでいたらしい。
で、フタを開けてみれば、不思議と低予算のB作の方がA作の人気を上回ったみたいで、結局はその後、東映の方針はだんだんとB作にシフトしていき、やがては「東映まんがまつり」という企画に繋がっていくわけだね。

ある意味、このB作第1弾の「009」が東映の基本方針を大きく変えた、ともいえるわけさ。

で、私は正直、最初ちょっと不思議だったのよ。

3コマ打ちの虫プロ(鉄腕アトム)のことを小馬鹿にしてたはずの東映が、なぜ敢えて「009」を3コマ打ちにしたんだろう?と

・・いや、厳密にいうと東映はTVアニメ「狼少年ケン」を既に3コマ打ちで制作してるわけだが、でもそれはスケジュールがタイトなTVアニメにおける話であり、劇場版である「009」はまた別の話だったと思うのね。
あるいは、低予算ラインを作りたかったということか?

そのへんの真相まではよく分からんにせよ、ただ、私は実際にその「009」を見て、「・・あ、これ3コマ打ちで正解だわ」と率直に感じたんですよ。

なんていうかな、フルアニメーションの動きって、擬音として「ぬるぬる」という表現がよく使われるでしょ?
それに対し、リミテッドアニメーション(3コマ打ち)を擬音で表すなら「ぴしっ、ぴしっ」という感じだと思うのよ。
でさ、やっぱヒーロー物に限っては、「ぬるぬる」より「ぴしっ、ぴしっ」の方がモーションとして映えるんだよね~。
しいていうなら、歌舞伎でいうところの「ミエを切る」という感じ?

こういうのって、意外とモーションがカクカクしてるんだよね。
歌舞伎役者の動きって、3コマ打ちかも(笑)。
それは、時代劇の「殺陣」でもそうだと思う。

やはり、日本のアクションのキモは「ぴしっ、ぴしっ」系というか、静と動のメリハリが重要なポイントとなってくる。
このメリハリをつけるには、「ぬるぬる」表現がかえって邪魔になるということかも。

「009」は、構図がいちいちカッコイイ

たとえば、「怪獣戦争」に出てきたこのお嬢さん↑↑は、攻撃する時に必ず上の画のような妙なポーズを決めて指輪から光線を出す。
極めて不自然なモーションだし、これを「ぬるぬる」のフルアニメでやってたら、かなり変だったと思うんだよね。
でもリミテッドアニメでは、これが面白いことに「ぴしっ」とハマるのよ。こんなフル/リミテッドの構造を理解した上で「009」を3コマ打ちにしてたのなら東映ってスゲーよなぁと思うけど、いや~、そのへんはどうだったのか正直よく分からん。

思えば、石ノ森先生は「仮面ライダー」の原作者でもあるし、ヒーロー物のスペシャリスト。
こういうヒーローが「ミエを切る」ようなポージングの先駆者ともいえるだろう。
このへん、「009」を同時代の「鉄腕アトム」や「鉄人28号」と比較をしてみても、やっぱ「009」の方がカッコよさでいうと頭ひとつ抜けてるんですわ。

「009RE:CYBORG」(2012年)

で、近年では神山健治さんが「009」のアニメを手掛けてるんだが、ひとつは2012年制作の「009RE:CYBORG」。
そして、2016年に「009CALL OF JUSTICE」という続編を作っている。

「009CALL OF JUSTICE」(2016年)

これ、どっちもフル3DCGアニメなんだが、実は神山さん、結構面白い試みをしてるんですよ。

「RE:CYBORG」⇒3DCG制作/サンジゲン(3コマ打ち)
「CALL OF JUSTICE」⇒3DCG制作/OLMデジタル(1コマ打ち)

わざわざ片方をリミテッドアニメーション、もう片方をフルアニメーションとして仕上げたわけさ。
どういう狙いだったのかは、よく分からないけど。
でも、3DCGで3コマ打ちをやる制作会社ってサンジゲンぐらいじゃないの?
私、個人的には「RE:CYBORG」のCGの方が好き。
皆さんも、よければこの2作品を見比べてみてください。
3DCGだと、コマ打ちの個性がより明確に見えてくるから。

さて、フル/リミテッドの話はこのぐらいにしといて、ここで「009」の内容の方に入っていきましょう。

ぶっちゃけ、この物語はちょっと重いですよねぇ。
いや、これに限らず、「仮面ライダー」にせよ「幻魔大戦」にせよ、石ノ森作品は大体が重くて暗い・・。
で、「子どもに受け入れやすくする為、ちょっとキャラデザをアレンジしてみよう」と無茶したのが実は60年代東映版で、私がビックリしたキャラデザ変更は、これである↓↓

<サイボーグ009 基本形>

<サイボーグ009 東映動画初期バージョン>

初期バージョンには色々ツッコミたいところがあるけど、何より大きいのは007だわな。

007基本形

007初期バージョン

そう、初期の007はチビ太みたいで、めっちゃかわいいんです!

ちなみに007、神山バージョンではこうなってました↓↓

ダンディー!

・・いや、007の能力は<変身>だから、多分どれが真の姿でもいいんだろうよ。
お好きなやつをお選びください。

1966年 劇場版「サイボーグ009」
1967年 劇場版「サイボーグ009怪獣戦争」
1968年 TVアニメ「サイボーグ009」
1979年 TVアニメ「サイボーグ009」
1980年 劇場版「サイボーグ009超銀河伝説」
2001年 TVアニメ「サイボーグ009THE CYBORG SOLDIER」
2012年 劇場版「サイボーグ009RE:CYBORG」
2016年 劇場版「サイボーグ009CALL OF JUSTICE」


で、これだけたくさんあって、どれを見りゃいいの?ということだが、私は続編があることも想定して、軸を2012年、2016年の神山版で考えるべきだと思うんですよ。
ただ、神山版は<本編の後日談>という設定なので、<本編>をどれか1つチョイスする必要がある。

私は、2001年の「THE CYBORG SOLDIER」でいいと思う。

<サイボーグ009THE CYBORG SOLDIER>

これ、OP曲/ED曲が小室哲哉なもんでシャカシャカした音が軽薄で耳障りではあるが、内容はかなり原作に忠実らしく、原作ファンも納得の出来という話を聞いたことがある。
ただ、全51話あって長いので、メンドくさければ

1話~2話<誕生編>
16話~17話<スカル決戦編>
22話~25話<ミュートス編>
39話~42話<ミュータント戦士編>
43話~48話<地下帝国ヨミ編>

このあたりを見とけば十分だろ。
で、このあたりを見とくと、いかに神山版がうまいこと本編のエッセンスを「RE:CYBORG」「CALL OF JUSTICE」に引き継いでいるかの理解ができると思う。

「RE:CYBORG」を見たことある人はきっと多いと思うが、「ワケが分からんかった」という感想を述べてる人が割と多い印象がある。
・・そう、「009」って元々ワケ分からんのよ(笑)。
敵がブラックゴースト(黒い幽霊団)という軍産複合体(?)っぽい組織ではあるんだが、これの末端戦闘員はともかく、上層部にいけばいくほど存在が曖昧で抽象的なものになり、なんか哲学/宗教的な領域になっちゃうから。

で、ブラックゴーストって何だったの?と聞かれても、「・・分かんない」としか答えようがない。
だって、ラスボスが「たとえ我々を倒したところで、そんなのは細胞を1つ潰したにすぎない、我々は不滅」とか言うんだから、これどうしようもないし、結局お前らって一体何なの?という感じですわ。

思うに、その曖昧なところにひとつのカタチをつけてくれたのが、「CALL OF JUSTICE」や「RE:CYBORG」であるような気がするんだけど・・。

あと、個人的にお薦めしときたいのは1966年の劇場版「サイボーグ009」だね。
つまり、シリーズ第1作目。

これはね、とにかくフランソワーズ(003)がもうサイコーなのよ!


だって、こんなにもかわいいフランソワーズが↓↓

敵に拉致されて洗脳された途端、

いきなり、こうなってますからね↓↓

容赦なく、めっちゃ009を撃ってくるし(笑)

もうね、あっさり捕まり、あっさり洗脳手術を施されてるフランソワーズのチョロさがたまらん!
いやホント、007のキャラデザのことといい、昔の東映はホント好き勝手にやっとるなぁ。

で、あとは完結編(?)として、やっぱり「CALL OF JUSTICE」は押さえておいてほしい。

本作は003のバイクが超カッコイイ!

視聴環境にない人は、Google等で「009CALL OF JUSTICE」と検索すれば無料動画がヒットすると思うので、お試しください。

とにかく「009」はさすが石ノ森先生の代表作だけあって、これがハマると結構<沼>ですよ?


心より、お薦めいたします。


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