「大奥」、何これ?めっちゃ面白いんですけど!
今回は、アニメ「大奥」を取り上げてみようと思う。
こういうの、興味ない人多いだろうね。
私もどっちかというとそうだったし、これのTVドラマ版も見てはいません。
だけど、これの原作がめちゃくちゃ評価高いと聞き、少し興味湧いたんだよね。
じゃ、それがどのぐらい評価が高いのかというと、
・文化庁メディア芸術祭マンガ部門優秀賞
・手塚治虫文化賞マンガ大賞
・小学館漫画賞
・日本SF大賞
・ananマンガ大賞etc
といった感じで、各方面から最高評価を受けてるといっていいだろう。
どうやら、少女漫画らしいんだよね。
なんか、表紙の雰囲気が少女漫画感ゼロですけど↓↓
で、ストーリーの説明をすると、まずはパンデミックから全てが始まる感じかな。
時代は徳川体制初期のこと、突如日本全国に謎の疫病が蔓延し、なぜか若い男子ばかりがどんどん死んでいく事態に・・。
不思議なことに女子はそれに感染せず、とにかく若い男子ばかりが感染し、仮に感染すれば致死率80%以上。
なるほど。
「日本SF大賞」ってことは、ようするにこれ、現代の敏腕医師がその時代にタイムリープして、そこでペニシリン開発したり、揚げ出し豆腐食べたりする系の物語だな?
・・と思ってたら、全然そういう展開にはならなかったわ。
というか、この病の治療法は何も見つけられないまま、結果的に日本の男子人口は女子の5分の1ほどにまで減少してしまう・・。
で、労働力だったオトコがいないから代わりにオンナが働くという男女逆転現象が起き、また稀少なオトコは「種馬」のような立場となり、赤ちゃんが欲しいオンナたちに有償で子種を授けるという、かなりイビツな社会構造に変容してくのよ。
さらに問題なのが家督のことで、それまで【当主=男子】を絶対としていた時代なのに、家督を継ぐべきオトコがいないお家が続出。
実は将軍家もその例外ではなく、そこで大奥責任者・春日局がとった手段は
「姫にオトコのフリをしてもらい、臨時で将軍になってもらう」
という裏技だったんだよね。
不幸にも3代将軍・家光が死んだので、その一人娘に男装をさせてNEW家光にするという臨時措置。
取り急ぎ彼女に男子を産ませ、その子を4代将軍にしようという意図だな。
つまり、彼女の責務は子を産むことであり、それもあって大奥はオンナの園からオトコの園にリニューアルされることになったのさ。
ただし、彼女がオンナだってことはトップシークレットとされ、公式な文書にもオンナである事実を一切残していない。
で、この作品のうまいところは、こうしてあまりにも設定が荒唐無稽だから史実とは全く異なるパラレルワールドと思わせといて、でもよく確認すればこの物語は幕府の公式文書とのブレがほとんどないのよ。
思えば、現代の我々は文書でしか江戸時代の情勢を知ることができないわけでしょ。
でもその文書は、ちゃんと事実の詳細を全て書き残していただろうか?
仮に家光は2人いて、しかも後半の家光がオンナだったとしても、その詳細を文書にさえ書かなければ、「家光は1人、そしてオトコ」だとして後世に伝わるものである。
ゆえにこの作品、普通にパラレルワールド系ファンタジーと捉えるのは少し違うと思う。
多分、作者もパラレルワールドとして描いたつもりはないだろうよ。
実は女性将軍って、ホントに実在したかもしれない。
実はアーサー王だって、オンナだったかもしれない(情報源Fate)。
しかし、この「大奥」のヒットは、どう考えても現在なお議論されてる皇室の後継者問題とリンクしてるよね。
男系は、どうしても死守しなきゃならんのか?
という問題。
難しい問題である。
「男系が古来からの伝統」といわれてしまえば、あまり返せる言葉はない。
でも現実問題、男系ONLYにこだわってたら、近い将来お家が途切れちゃう気がするよ?
確か、どこぞの教授が言ってたが、
「男系を絶対としたいなら一夫一婦制を見直すべき(側室制度を復活)。
それができないなら、もはや女系を認めるべき」
という意見、乱暴に聞こえるかもしれないけど、私にはこれが一番マトモな主張に思えたな・・。
別に、男系は日本古来からの掟というわけでもないさ。
むしろ古代は、母系の方が主流だったという。
そう、「妻問婚」の時代だね。
オトコがオンナに和歌を送り、オンナがOKしたらオトコが部屋に行ける、という女性上位のシステム。
この時代、生まれた子供は妻の家の方に引き取られ、そこで育てられた。
完全に母系社会である。
だからこそ、平安時代は藤原氏があんなに強かったわけよ。
だって、常にミカドの養育権を握ってたんだから。
実をいうと、平安時代のオトコは結構寂しいもんである。
「源氏物語」とか読んでると、常にモテモテの光源氏ですら、結局のところ「種馬」っぽくて、とても幸福そうには見えないし・・。
ちなみに、縄文時代もまた母系社会だったっぽい。
女性のシャーマンを中心とし、それを囲む形のコミュニティだったようだ。
きっと、オンナがオトコより強い社会だったと思う。
邪馬台国と縄文文化が関係するのかは知らんけど、「倭王」もまた卑弥呼というオンナだったわけだしね。
こういう国が、いつの間にか男尊女卑が根付いた社会になったというのも、よく考えたら不思議な話である。
おそらく、主に徳川体制で培われていったんだろうなぁ・・。
ところで、この「大奥」を描いたよしながふみ先生だが、この人は「きのう何食べた?」や「西洋骨董洋菓子店」の作者でもあるらしい。
つまり、オトコ×オトコ、そっち系の先生なんだね。
少女漫画って、どうしてもそっち系にいきたがるよなぁ。
こういう流れ、古くは竹宮恵子先生や萩尾望都先生からきてるんだろうが、いや、別に彼女らが悪いわけでもない。
それに、少女漫画そのものが悪いわけでもない。
突き詰めれば、これって土壌の問題である。
ようするに日本って、昔からオトコ×オトコの国なんだよ。
<日本のBLの開祖/弘法大師・空海>
はい、皆さんご存じ、空海聖人。
彼は中国で留学し、あちらから密教以外にもうひとつ、BLの文化も日本に持ち帰ってきた人だといわれている。
当時の中国で流行ってた最先端カルチャーだったらしいのよ。
で、仏教では姦淫を厳しく戒めているんだが、それはオトコ×オンナの姦淫を意味しており、オトコ×オトコは「特に記載がないからセーフじゃね?」という都合のいい解釈があるみたいで、空海は奨励したともいわれている。
で、偉いお坊さんがいうんだから間違いない、ということになって、9世紀から一気に日本国内でBLブームがきたらしいんだわ。
・・うむ、いわれてみれば上の画の空海は肌の質感がスベスベしてて、割とホモっぽいよな?
<やがて江戸時代には、BLが「衆道」という教義にまで発展>
なんかさ、「大奥」とは全く真逆の現象なんだけど、当時、江戸の町の人口男女構成比は<オトコ64% オンナ36%>(武士階級除く)だったらしく、もう完全にオトコ余りの社会だったらしいのよ。
じゃ、男色もやむなしか・・。
でもって、そういうニーズもあってか、当時から「オンナみたいなオトコ」は結構江戸に数多くいたらしい。
で、それを見てオンナノコたちがまたキャーキャーいってたらしく、つまり江戸時代から腐女子っぽいのは結構いたということね。
だから日本のBL文化って、昨日今日始まった話でもないのさ。
うむ、私もBL作品は苦手な方だが、これからの時代、そんな古臭いこともいってられないと思うので、今後頑張って克服していこうと思ってます。
ホモを嫌うのは、古きよき日本文化の否定だし。
・・あ、ちなみに「大奥」の表現は、とてもソフトでよかったよ。
オトコがオトコたちに集団でナニされるシーンもあったにせよ、露骨な描写は一切なく、キモさは全く感じなかった。
というか、BL表現はほとんど皆無だったといっていいだろう。
男女のカラミも「大奥」のくせに描写されることはほぼなくて、小学生でも十分視聴可能な内容だったと思う。
一家揃って見て下さい。
見どころは、やはり宮野真守のセクシーさかな?
宮野さん演じる主人公がとにかく可哀相で、不幸で、それにじ~っと耐えてる彼の姿を見て、その苦悶の表情に萌える系の作品だと思います。
とにかくオトコばっかり出てくるアニメなので、私もこの「大奥」でだいぶ耐性がついたよ。
この調子なら、次は「ギブン」あたりに挑戦しても何とかイケそうだわ。