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押井守「キマイラ」予習の意味で、夢枕獏をアニメで復習

今回は、作家・夢枕獏のアニメ作品を取り上げてみたいと思う。
というのも、最近は妙にアニメ関連で夢枕先生の名前を目にする機会が増えたんだよね。

<2018年>

「キマイラ」アニメ映画化プロジェクト発表、監督は押井守

<2021年>

「神々の山嶺」フランスにてアニメ映画化(監督・パトリックインバート)
Netflix制作
同作品、セザール賞アニメ作品賞およびリュミエール賞最優秀作品賞受賞

<2023年>

「陰陽師」Netflixにてアニメ化、世界配信

<2024年>

「餓狼伝」Netflixにてアニメ化、世界配信

見ての通り、夢枕先生はこのところ、アニメ界で結構キテるのよ。
でも今さら何で?と思うでしょ。
・・それはね、やっぱNetflixのお陰というべきだろう。
正直言うと、これまで夢枕作品というのは制作サイドがやや及び腰というか、決してアニメ化には積極的じゃなかったと思う。
なぜなら、基本エロ/グロだから・・。
もちろん一部に熱狂的信者がいることは誰しも分かってるんだけど、しかし地上波放送や劇場公開のアニメ化ということになると少しキツイ。
よって夢枕作品のアニメ化は、大体がOVA限定だったんだよね。

ところが、その流れが大きく変わったのはやはりサブスクが出てきたことで、特に資金が潤沢なNetflixの存在はとても大きかった。
あいつら、資金力あるから多少のリスクあっても貪欲に作品作っちゃうし、特に最近はネタ切れしたのか、80~90年代の古めのネタにまで手を出すようになってきやがった。
そういう流れの中での、夢枕作品の再燃である。

「陰陽師」とか、あまりに手垢がついてるから「何で今さら」感が凄かったんだけど、これが「初のアニメ化」と聞いて、「ウッソー?」と思ったよ。
陰陽道ジャンルの草分けともいえるこの作品が、まさか今までアニメ化されてなかったなんて・・。
みんな、この作品を真似て陰陽道系アニメを作ってきたというのに、本家が一度もアニメ化されてなかったとは、さすがに盲点だったわ。
実写化は何度もされてるけどさ。

「神々の山嶺」(2021年)フランス制作

で、Netflixも馬鹿じゃないから、まず最初は「神々の山嶺」という企画から入ったんです。
これ、夢枕先生にしては珍しい、エロもグロも一切出てこない作品なんだ。
この映画、各方面から最高評価を受けた作品であって、未見という方は是非見て下さい。

フランススタッフの作画クオリティの高さに、ビックリするよ!


正直、その山岳の作画見て「日本アニメ、負けてるかも・・」と思ったほどさ。
さすが、バンドデシネの国である。

作品のキャッチコピーには「ミステリー」と銘打たれてるけど、そっち系の謎解き要素はあまり期待しないで下さい。
本作で描かれてるのは、ただひたすら「山」と「登山家」だから。
夢枕作品にしては、妙に地味な作風である(柴田錬三郎賞受賞)。
だって先生がこれまで小説で書いてきたのは、常に「バトル」だったからね。
まぁ、これもある意味、

登山家vsエベレスト


というバトル作品ではあるんだが。
ある意味、エベレストという相手は世界最強のラスボスである。

それに立ち向かうのは、孤高の登山家・羽生、というか、大塚明夫。
まぁ大塚さんだから、バトーみたいな武骨で寡黙で屈強なオトコをイメージしてくれ。
ラスト、この人が一体どういう選択をするのか、ちょっと泣けますよ・・。

でね、皆さんにおススメしたいのは、この「神々の山嶺」を見終えた後に、今度は夢枕先生の本年アニメ化作品「餓狼伝」を見る、というコースさ。

「餓狼伝」(2024年)

この「餓狼伝」の主人公・藤巻十三は武骨で寡黙で屈強なキャラであって、それこそ「神々の山嶺」羽生とよく似た設定である。
そして羽生がエベレスト登頂に取り憑かれてるのと同様、藤巻もまた強敵というものに取り憑かれてる感じだね。
まさに、

「オトコの世界」


である。
ホントにね、終始オトコ臭い・・。

思うんだが、こういうの、絶対女子は興味ない世界でしょ?


いや、厳密にいうと、ごくごく稀に好きな人↓↓はいるみたいだけど。

「ダンダダン」の桃

大体、主人公が「マッチョでデカいオッサン」という設定だけで、視聴者層をかなり限定してしまってるといえないだろうか?
同じバトルを描くにしても、少年ジャンプなら絶対そういう選択はしないと思うのよ。
ある程度、キャラにも女性ファンの目を考慮した設定を考えるものさ。

このへんだよね。
少年ジャンプと夢枕獏の違いって。
あとは、女性キャラの描き方。
夢枕先生は女性キャラをあくまで「バトルの傍観者」として描くのに対し、少年ジャンプは「バトルの当事者」として描くんだ。

やっぱりね、こういうカッコイイ女子を描くところにこそ、少年ジャンプが常に大ヒットを飛ばす秘訣があると思うのよ。

言っちゃ悪いが、夢枕獏の世界観はオトコ受けイイだろうが、オンナノコ受けは無理じゃないか?

バトルの決着のつけ方も妙にマニアックというか、最後関節技で終わったりするわけです。
どんだけ地味やねん・・。
だけどオトコ的には、そういうリアルさで逆にグッときたりしてね。
私もグレイシー最強説、【打撃技<組み技】を信じてるクチであり、意外と「餓狼伝」は楽しめたわけさ。
でも、女子の感性では絶対楽しめないと思う。

・・あ、でもね、昔私が見てたドラマでこういうのがあったのよ↓↓

「グラップラー刃牙はBLではないかと考え続けた乙女の記録ッッ」(2021年/WOWOW)

主演・松本穂香

普通に考えて、「刃牙」なんて女の子が一番苦手そうなジャンルだよね。
オトコばっかりのオトコ臭い漫画だし、それもマッチョばっかりだし・・。
ところが、オンナノコも少し視点を変えるとめっちゃ楽しめるコンテンツになるらしい。
そう、

オトコ×オトコこそがサイコー♡


という女子もいるんだよ。

オトコ同士のぶつかり合いに興奮して「刃牙」を読むヒロイン

うむ、いまどきの女子は腐ってる人多いっぽいし、意外と夢枕獏の作品でもイケるかもしれんな・・?

ちなみに、「刃牙」の板垣先生は夢枕先生の小説をコミカライズしてるし、逆に夢枕先生は「刃牙」のノベライズをしてるわけで、この両先生は切っても切り離せない、強い絆で結ばれています。

じゃ一応、女子にも夢枕先生の作品の良さを理解できるという前提に立ち、さてここで、過去の夢枕獏アニメのラインナップをご紹介していきましょう。

といっても私の知る限り、アニメ化されたものは次の4作品のみですね。

OVA「アモンサーガ」(1986年)

全1話

これは「天使のたまご」で知られる天野喜孝さんが夢枕先生と共同で作ったファンタジー漫画のアニメ化で、最大の見どころは天才・天野の造形美学に尽きると思う。
それ以外は、特に見どころはない。
おススメ度:30/100点

OVA「夢枕獏とわいらいと劇場」(1991年)

全4話

これ、「アニメ好きは必見」とされてる幻の名作OVAである。

第1話「夢蜉蝣」
第2話「四畳半漂流記」
第3話「深山幻想譚」
第4話「骨董屋」

でさ、この作品は制作スタッフが凄いのよ。
板野一郎、梅津泰臣、橋本晋治、大平晋也といったビッグネームがずらりと勢ぞろいで、プロのアニメーターさんたちが「今まで衝撃を受けたアニメ」の話題で、この作品を挙げる例はとても多い。
「世にも奇妙な物語」系のオムニバスです。
おススメ度90/100点

OVA「サイコダイバー魔性菩薩」(1997年)

全1話

監督は「エルフェンリート」「約束のネバーランド」で知られる神戸守さんで、映像クオリティは結構高い。
内容は、めっちゃ夢枕獏っぽいエスパー系伝奇。
押井守監督作「キマイラ」と微妙に接点のあるシリーズらしく、予習の意味で見といた方がいいかも。
1話だけだし、見て損はないかと。
おススメ度70/100点

TVアニメ「黒塚-KUROZUKA-」(2008年)

全12話

これ、映像は完璧なんですよ。
さすが、監督が「進撃の巨人」「デスノート」「甲鉄城のカバネリ」で知られる荒木哲郎だけのことはある。
あと、EDアニメはいしづかあつこが作ってたりする。
この時代、荒木さんもいしづかさんも、まだマッドハウスの社員だったんだよね。
で、内容はかなり攻めてるし、夢枕ワールドをよく表現できてもいるんだが、ぶっちゃけ脚本が失敗してると思う。
よって、なんか妙に難解になってる・・。
個人的には結構好きだけど、万人受けはしなさそうなので採点は辛めに。
おススメ度:60/100点

なお、OVAはいずれもYouTubeで無料視聴できますので、もし興味があればどうぞ。

・・こうして見ると、妙にマニアックでクセのあるラインナップだね。
ちなみに、今回挙げた作品の中で、おススメのダントツは「神々の山嶺」かな。
これだけは、絶対に見といた方がイイですよ。

あとはいつ完成するかも分からんけど、押井守「キマイラ」を楽しみに待ちましょう。


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