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つのだじろう先生を再評価したい!

今回は、漫画家・つのだじろうについて少し書いてみたいと思う。

・・と言っても、世代によっては「つのだじろうって誰?」という人もいるかもしれない。
最近は特に目立った活動してないからねぇ・・。
昔はオカルト漫画で一世を風靡してた人なんですよ。
あと、「メリージェーン」で知られる歌手・つのだ☆ひろの実兄でもある。

つのだ☆ひろ

・・あれ?と皆さんも思ったに違いない。
このふたりは血の繋がった兄弟なのに、兄貴の姓が「つのだ」なのに対し、弟の姓が「つのだ☆」となっている。
いくら何でも、これではバランスが悪い。
よって今回は、兄貴の方もつのだ☆じろうと表記の統一をすることにします。

で、つのだ☆じろう先生は最近目立った活動をしてないと先ほど述べたが、でもこの人、なぜか新海誠作品のリリースでお馴染み、コミックスウェーブフィルムに所属してるんだよね。
これが謎である・・。
どう考えても、新海誠とつのだ☆先生とでは作風がそぐわないし。
・・いや、そうとも言い切れないかな?
新海監督の「すずめの戸締まり」は、そこそこホラー色があったかも。

「すずめの戸締まり」

で、コミックスウェーブフィルムは2013年、つのだ☆先生の「忍者あわて丸」(1965年作品)のアニメ化を手掛けてるんですよ。
タイトルは「花のずんだ丸」(ショートアニメ)。
じゃ、実際その第1話を見ていただきましょう。

ちなみに、コミックスウェーブフィルムは「ずんだ丸」と同年に「言の葉の庭」をリリースしてるわけで、だいぶ画風にギャップがあるよな?

というか、つのだ☆先生って、こういう画風だっけ?

「忍者あわて丸」(連載1965年~1968年)

・・そう、少なくとも1960年代のつのだ☆先生は、こういう画風だったのよ。
もともと彼は「トキワ荘」によく出入りしてたらしく、中でも藤子F不二雄先生とは大の親友だったみたい。
よって、画風もF先生の感じとよく似ちゃってるわけだな。
この時代は、「つのだFじろう先生」という名義で覚えておくように。

しかし、それが1970年代になると、こうなる↓↓

「恐怖新聞」(連載1973年~1976年)

おいおい、ギャップがエグすぎるやろ!


「ずんだ丸」と「恐怖新聞」の間に、果たして先生の身に一体何があったというのか?
・・はい、実は先生が大きく画風を変えたのが、この作品からだと言われています。

「空手バカ一代」(連載1971年~1973年)

どうやら詳しい話を聞くと、梶原一騎先生のリクエストで画風を変えざるを得なかったらしいのよ。
・・で、必死で短期間のうちに「劇画調」をマスターしたんだと思う。

「空手バカ一代」有名な牛殺しのシーン

その結果、「空手バカ一代」はそれまでの漫画家人生において最大のヒット作となった。
・・で、「この画風は売れる!」と手ごたえを掴んだんだろう。
以降、先生はこの画風の方を自分のスタイルと定めたようだ。

じゃ、「空手」の次にはまた何で幽霊系の恐怖路線に行っちゃったのか?というと、そのキッカケは先生が「自分の目でUFOを目撃したこと」だったという。

おいおい、UFO見たから幽霊の漫画描くって、ちょっと行動がおかしいやろ!

まぁ、別にいいんだけどさ。

で、それまでホラー漫画といえば水木しげる先生が第一人者だったわけだが、一方でつのだ☆先生は例の「劇画調」でそれを描いたもんだから、これがもうなんか異様にキモい感じになって、やっぱ売れちゃうわけです。

「うしろの百太郎」(連載1973年~1976年)

個人的には、この「うしろの百太郎」が結構好き。
なお、この作品はアニメ版も2本ほどOVAになってて、これがまた名作なんだわ。
実際、本編を見ていただきましょうか。
これはオカルトの古典であり、非常に勉強になる内容である。

なんか、妙に怖いでしょ?
水木先生の「ゲゲゲの鬼太郎」などはファンタジーとして見れるのに対し、つのだ☆先生の場合は画があれだから全然ファンタジーとして見れないのよ。
変にリアリティがある。

・・というか、これこそが先生ならではのテイスト。
おそらく、このへんは71年~73年に手掛けていた「空手バカ一代」に発端があり、まず「空手バカ一代」って極真空手の創始者・大山倍達の自伝的作品なんだが、でも漫画の内容はどこまでが真実でどこまでが虚構なのかが全然分からない感じになってるのよ。
その大半が梶原先生のデッチアゲだという説すらあって、でもそれをいかにノンフィクションっぽく見せるか、そこがつのだ☆先生の手腕に懸かってたわけさ。

<虚構を現実っぽく見せる>


「空手バカ一代」で培われた先生のそのスキルは、オカルト作品でも
幽霊ってホントにいるかも・・
と読者に信じ込ませるだけの圧倒的な説得力を発揮したんだね。

アニメ「ハイスクールミステリー学園七不思議」(1991年)

これは91年にテレビ放送されていたアニメである。
こういう系統なら、「地獄先生ぬ~べ~」や「学校の怪談」の方が圧倒的に知名度高いけど、やっぱ本格ホラーっぽい雰囲気あるのは「学園七不思議」なんですよ。
なかなか演出も凝っててね。

ちょっと、その抜粋を見てもらおうか↓↓

ほとんどOVAっぽく見えるが、ちゃんと平日夕方16:00にフジテレビ系列で放送されてたらしい。
というか、むしろ深夜にやるべきだろうに・・。

さて、話題を1970年代にまた戻します。
実をいうとね、つのだ☆先生ネタで一番面白いのは1978年のことなのよ。
これ、結構有名な話だと思うけど、

「つのだ☆じろう詫び状事件」


というのを皆さんは知ってますか?

「ゴッドハンド」(1978年)

コトの発端は、この新連載である。

77年に「空手バカ一代」は連載終了してたらしいんだが、その翌年に今度はつのだ☆先生が梶原先生ヌキで「ゴッドハンド」という大山倍達自伝っぽい新連載をまた始めちゃったのよ。
これは大山さん直々の依頼で始まったものらしいんだが、どうも梶原サイドには仁義を通してなかったらしくて、これを見て梶原先生、およびその弟の真樹日佐夫先生がブチ切れちゃったらしいんだわ。

梶原一騎先生(右)と真樹日佐夫先生(左)

いやいや、この兄弟を怒らせたらマズイやろ!


で、案の定、梶原サイドからはクレーム、ならびに嫌がらせ、脅迫等が連日つのだ☆事務所に届くようになって、さすがに先生もしまいには堪忍袋の緒が切れたのか、当時連載してた漫画にこんなコマを描いちゃったのよ↓↓

「魔子」(1978年)

このコマの謎の呪文、うむ、これはどう見ても「アナグラム」だよね?
・・じゃ、解読してみよう。

カラワジ/イキツ/キマトワヒオサ/ハノクキヨウ/ミツオ/レシオモイ
⇓⇓⇓
カジワラ/イッキ/トマキヒサオワ/キヨウハクノ/ツミオ/オモイシレ
⇓⇓⇓
「梶原一騎と真樹日佐夫は、脅迫の罪を思いしれ」

カチク/ツテバン/ダクリノノロイ/オウケミクニク/ルクシミ/クタルバ
⇓⇓⇓
チカク/テンバツ/ノクダリノロイ/オウケミニクク/クルシミ/クタバル
⇓⇓⇓
「近く天罰下り、呪いを受け、醜く苦しみ、くたばる」

つのだ☆先生、めっちゃ恨んでるのは分かるんだが、アナグラムが少し簡単すぎるよ(笑)。
で、案の定、梶原&真樹兄弟はこのアナグラムをあっさり解読したらしく、その結果、果たしてどうなったか?

はい、つのだ☆先生は某ホテルに監禁されて、真樹先生の鉄拳にビビりながら詫び状を書くという不甲斐ない決着になりました・・

実際、真樹さんは空手の達人で、めっちゃ強いらしい

・・怖いよなぁ(涙)。

で、この梶原&真樹兄弟、82年にもまた原作を手掛けた「タイガーマスク」の権利を巡って、今度は新日本プロレスを相手にモメている。
これが有名な

「アントニオ猪木監禁事件」

というやつである。

この時は梶原先生が銃を所持した暴力団員を多数準備してたらしく、さすがの猪木さんでも銃相手には勝てなかったみたいだね。
彼もまたホテルに監禁されたらしく、その詳細は猪木さんも多くを語らず、いまだ多くが謎とされている。

いやホント、絶対敵に回しちゃいけない人はいるんだよねぇ・・

でも、つのだ☆先生だって呪いの専門家だということを忘れてはならない。
1987年、梶原先生が50歳の若さで急逝したのって、いや、まさか・・。

なお、つのだ☆先生は

「私の守護霊は、秦の始皇帝」

とおっしゃっていたので、いざとなれば結構強い人だと思うよ?
あの時は本気出さなかっただけ・・。

じゃ最後は、やっぱり梶原+つのだ☆の奇跡の名作「空手バカ一代」で締めましょうか。
これ、原作とアニメでは若干テイストが異なるんだが、ある部分に限って、アニメが完全に原作を凌駕した箇所があるのよ。

じゃ、そのシーンを見ていただきましょうか↓↓

このシーン、マジで神すぎる!


これを超えるインパクトのバトルシーンって、私が知る限り、いまだ無いと思うなぁ・・。


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