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世界で80以上もの賞を獲得したBLアニメを知ってる?

皆さんは、この人物をご存じだろうか↓↓

そう、かつて石橋貴明が演じた人気キャラ、

保毛尾田保毛男(39歳、区役所勤務)


である。
これ、私は結構好きだったんだが、今はもうTV的にアウトとされてるみたいだね。
まぁ、それも分からんでもないか(笑)。
これは明らかに「ゲイを笑いものにしたキャラ」であり、差別表現と解釈をされても反論はできまい。
もともとは80年代末~90年代初頭に人気を博したキャラだったんだが、それを2017年(約30年ぶり)でTVで復刻させたところ、案の定で大炎上となり、フジテレビが謝罪を出したことは皆さんも記憶に新しいだろう。

この現象って、我が国はここ30年のうちに、ゲイの人権擁護が強まった、と見るべきなのかもしれない。
「ホモ」という言葉自体、もはやアウトだという。

思えば、ゲイの存在価値をまず最初に認めたのは、女子だったかもしれないよね。
考えてみりゃ、ずっと昔からそうである。

思えば、少女漫画の世界は昭和から既にゲイに寛容だった

まぁ、萩尾望都先生や竹宮恵子先生のキャラを保毛尾田保毛男と同じ土俵で語ってはまずい気もするけど(笑)。
いや、少女漫画は同時に百合も描いてきたと思うし、とにかくジェンダーのことに関しては男子よりも一歩も二歩も先にいってたと思う。
逆に少年漫画なんて、全くそっちに関心なかったもんね。
というか、男子の多くは、少女漫画がまさかそういう世界を描いてるモノだとは知りもしなかったはずだ。
・・あ、ちなみに私は結構昔から知ってました。
家に漫画好きの姉がいたもんで。

ただ、少女漫画を読まない男子であろうとも、少女漫画原作のアニメは見てしまうものである。
結局、世にBLを普及させたのはアニメということだろう。
古いところを挙げれば、昭和の時点で「パタリロ」というアニメがあった。

「パタリロ」

ただ、これは当時として「変態アニメ」と解釈されてたんじゃないかなぁ?
これはシュールなギャグだ、と。

ちゃんと「BL」としてアニメが形をなしたのは、やはり90年代、CLAMPの「カードキャプターさくら」からだと思う。

「カードキャプターさくら」

やはり、CLAMPは偉大だよね。
もはやCLAMPの画風は耽美系の<記号>にまでなってしまい、彼女らが直接ストーリーに関与してない「コードギアス」であろうとも、CLAMPがキャラデザしてるというだけで<ルルーシュ⇔スザク>の関係性はそういうものにしか見えなくなってしまうという魔力・・。

「コードギアス」

あと、「黒執事」の貢献も忘れてはいけない。
これはそっち系のみならず、「ショタ」という別の扉も開いてくれた偉大なアニメである。

「黒執事」

さらに2010年代にもなると「ユーリON ICE」や「バナナフィッシュ」や「ギブン」といった作品が出てきて、このあたりになるともう完全に市民権を得た、といってもいいんじゃないだろうか。

「ユーリON ICE」
「バナナフィッシュ」
「ギブン」

遂に耽美という枠組みを超え、カジュアルなテイストまで出てきてしまったBL。
しかし私が少し気にいらんのは、どれもこれも男子が皆美しすぎるのだ。
・・現実、んなわけねーだろ、と。

そう思ってた時、私はひとつの秀逸なBL作品に出会ったんだ↓↓

アヌシー国際アニメ映画祭グランプリ受賞「FLEE」(2021年)

製作/デンマーク、フランス、ノルウェー、スウェーデン

これ、思いっきり保毛尾田保毛男じゃねーか!

この感じ、逆になんかしっくりくるわ~。
やはり石橋貴明の同性愛描写は、特に間違ってなかったんだね。

これ、断じてフザけたアニメじゃないよ?

アヌシー国際アニメ映画祭 長編最優秀、他2賞受賞
サンダンス映画祭 ドキュメンタリーコンペティション受賞
ヨーロッパ映画祭 アニメ賞、ドキュメンタリー映画賞W受賞
ナショナルボードオブレビュー トップドキュメンタリー受賞
ニューヨーク批評家映画協会 ノンフィクション映画賞受賞
デトロイト映画批評家協会 ドキュメンタリー賞受賞
シカゴ映画批評家協会 アニメ映画賞受賞
ロサンゼルス映画批評家協会 アニメ映画賞受賞
セントルイス映画批評家協会 ドキュメンタリー賞受賞
全米映画批評家協会 ノンフィクション映画賞受賞etc


とにかく、世界から大絶賛されたアニメである。
80を超える受賞があったそうだ。

ちなみに、このアニメに石橋貴明は全く関与してません。
なお、これは日本語字幕版しかないので、あるいは日本語吹替版を出すならcv石橋貴明というのも一興だとは思うが、それをやると映画のニュアンスがだいぶ変わるから、やめといた方がいいだろう。

皆さんは、このアニメ見た?
ちょっと衝撃だったよね。
これ、アニメだけどドキュメンタリーなんだわ。
普通ドキュメンタリーは実写映像でやるもんだが、今回敢えてアニメにした意味は、取材対象者(この映画の主人公)の匿名性を守る為
顔バレすると、マズいんだわ。

・・あ、ゲイだから顔バレNGということじゃないよ?
そういうのじゃなく、実はこの人はアフガニスタンの生まれで、同国の内乱から逃れてきた「難民」なんだわ。
しかしそれを受け入れてくれる亡命先はなく、しようがないので身分を詐称し、つまり名前も出自も偽る形でデンマークに亡命したんだが、今でもそれがバレると強制送還の可能性があるらしい(そうなれば命が危ない)。

普通、こういうパターンの取材対象者は

こういう感じのやつになりがちだが、この映画の場合はそっちよりもアニメにすることで顔バレを避けたんだね。
ただ、音源はそのまま取材対象者の肉声を使っているらしい。
・・声でバレないか?と心配になるけど、ただ、この<取材音源そのまま>というところが本作最大のインパクトであって、これがなければこの映画はここまでの最高評価を得られなかっただろう。

インタビューシーン

とにかく、この主人公の肉声が生々しい。
多分、見た目は彼の匿名性を守る為、本人の容貌とはかけ離れた顔形にしているはずだ。

・・なら、なぜ敢えて保毛尾田の顔をチョイスした?

そこは謎なんですよね。
あるいは、デンマークでもこういう顔(ヒゲが妙に濃くて額が妙に狭い)がゲイの<記号>なのかもしれない。

でさ、どうもアフガニスタンではゲイは絶対的な禁忌だったらしいのよ。
おそらく宗教戒律的な意味もあるだろうから、これキツイよね~。
彼は子供の頃から「性的に男性が好き」という自覚があったらしく、その頃から家族にもいえない秘密をずっと抱えてきたわけだ。
自分と同じ境遇の人間に会ったことは一度もなく、自らを「病気」と思って苦しみ生きてきたという。
部屋に貼った、ジャンクロードヴァンダムのポスターに(;゚∀゚)=3ハァハァしてたらしい。

ジャンクロードヴァンダム

生々しい・・。

ただでさえ、こうして人にいえない大きな秘密を抱えてるというのに、今度は密入国によってさらなる秘密を抱えるという、二重の仮面生活である。
しかも密入国の手続き上、家族が皆揃ってひとつの国に入ることはできず、各自バラバラで欧州あちこちに散ってるという。
つまり、この主人公は二重、三重の意味で孤独なのよ。

どんだけ辛い人生やねん!

自分は同性愛者である⇒家族には言えません
自分はアフガン出身の密入国者である⇒恋人にさえ言ってません
本名⇒劇中アミンと名乗ってるけど、これは偽名
家族⇒欧州各地に散って、各々が偽名で生きている

これさ、フィクションじゃなくて、現実なんですよ。
何か誇張して喋ってるふうでもない。
彼が何を思ってこの取材を受ける決意をしたのかは分からんが(たまたま、この映画のインタビュアーと高校の同級生だったらしい)、ひとつは恋人との結婚を控えてのケジメだろう。
仮面を外し、本当の自分を知ってもらおう、と。
・・こんな俺だけど、受け入れてくれますか?という一世一代の「告白」である。
あまりにも重い、重いよ、アミン・・・。

なお、これに先駆け、家族に「自分はゲイです」という告白を彼は遂に実行したらしい。
そのシーンは、ちょっと感動して泣ける・・。

いや、だけどね、これはホントにいい映画である一方、ノンフィクションであるだけに色々ヤバいんですよ。
それはアフガニスタンの国情もさることながら、あと密入国を斡旋する業者の存在であるとか、その際、安価な業者を使ったことで危うく死にかけた姉たちであるとか、あるいは失敗し、強制送還となるところを経由地のロシアで警官に賄賂を渡したら自由になったとか、いちいちエピソードがヤバいんだよね。
これはアニメ映画としてだけじゃなく、世界の真実を晒すドキュメンタリーとして非常に価値の高いものだよ。
未見だという人は、ぜひ見てほしいと思う。

・・さて、最後は保毛尾田に少し話を戻します。

私思うんだが、石橋貴明の保毛尾田がダメだというのなら、国民的アニメ「ワンピース」のこれ↓↓も、どっちかといえばマズイってことになるよね?

イワンコフ

ところが、同じフジテレビでもイワンコフに対する謝罪は出したことがないし、おそらくクレームにはなってないんだろう。

「ホモ」はNGだけど、「オカマ」はセーフ?

私、このへんのニュアンスが分かるような、分からないような、結構難しいよね。

①オカマ・・女装する人たち「ニューハーフ」

②ホモ・・女装しないホモセクシャル

L・・レズビアン(女性同性愛)
G・・ゲイ(男性同性愛)
B・・バイセクシャル(両性愛)
T・・トランスジェンダー(生物的と認識の不一致)
Q・・クエスチョニング(迷っている状態)
I・・インターセックス(両性具有)
A・・アセクシャル(恋愛感情湧かない)

とにかく、いまや複雑なんだよ。

大体、「百合」と「レズ」からして意味が違うんでしょ?


ならば腐女子が今まさに夢中になってる「BL」とは、きっと①でも②でもないんだろう。
女子でいうところの「百合」、それの男性バージョンという意味?


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