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超頭イイ人が脚本書いたら、超頭悪いアニメになりました。

ゴジラS.P」を見て、円城塔先生の脚本ってイイな~と思ったんだけど、よく考えたら芥川賞作家がアニメの脚本書くのって凄くない?
円城先生の他に例はあるんだろうか?
というか、この芥川賞というやつ自体が、数ある文学賞の中でも特別な扱いである。
これ、いわゆる「純文学」に与えられる賞でしょ?
対して、直木賞は「大衆文学」に与えられるという。
また、ややこしいカテゴリー分けをするもんだな・・。
そもそも、純文学と大衆文学の境界線はどこに引かれてるんだ?

芥川龍之介

で、懸案の円城塔先生が歴代の芥川賞作家の中でも特殊な立ち位置にいると思うのは、彼がSF作家であることなんだ。
それも、博士号をもつほどのバリバリの理系の人。
そんな理系の人が文系の頂点ともいえる賞をとるなんて、よく考えたら凄くない?
大げさにいうと、アインシュタインがノーベル文学賞とるようなもんです。
普通、科学者が書くのは論文であって、文学じゃないよね。
いや、そこが円城先生の非凡なところなんだろう。
なかなかのイノベーターである。
そういうイノベーター気質があるからこそ、芥川賞作家でありながらアニメの脚本を書くという行動にも出られたんだと思う。
多分だけどさ、文壇ってやつはアニメを「下衆なカルチャー」としてかなり下に見てると思うんだよね。

多分、文豪と呼ばれる方々の見立てでは
バラモン=純文学
で、
クシャトリア=純文学以外の文学
といったところだろう。
さらにいうと
ヴァイシャ=映画(実写)
で、
シュードラ=テレビ(アニメ含む)
ということになる。
つまり、円城塔がアニメの脚本を書くというのは、いわばバラモン(司祭)がシュードラ(奴隷)とキャッキャうふふするような事態なんだ。
おそらく、文壇の長老クラスはいい顔しなかったと思うよ・・。

で、円城先生が一番最初にアニメの脚本を書いたのはコレなんだ↓↓

「スペース☆ダンディ」(2014年)

10年前の作品になるが、そこそこ有名だと思う。
歴史的名作「カウボーイビバップ」のスタッフが再集結し、BONESが総力をあげて作ったナンセンスコメディ「スペース☆ダンディ」。
円城先生は、これの第11話と第24話の脚本を手掛けている。
それにしても、何で先生にこのオファーがいったのかもよく分からないし、またこの仕事を受けた先生の心情もよく分からん。

だって、この作品放送の2年前に先生は芥川賞とってるんだよ?


もちろん、その頃に仕事のオファーは殺到してたはずだし、「是非、うちで次回作を書いてください!」と各出版社から依頼されまくってたと思うのよ。
そんな状況で、普通テレビアニメの脚本なんて書く?
・・でも、これがなぜか書いちゃったんだなぁ。

さて、ここで「スペース☆ダンディ」をよく知らん人の為に、これの概要を説明しておこう。
まず、主人公はこの男。

ダンディ(cv諏訪部順一)

名前はダンディ。
職業は「宇宙人ハンター」。
新種の宇宙人を捕獲し、登録したら賞金を貰えるシステムがあるらしくて、それ専門の賞金ハンターという設定らしい。
一応「カウボーイビバップ」でいうところのスパイク的立ち位置なんだろうなと思いきや、これがスパイクのようなカッコよさは微塵もない。
性格はかなりテキトーだし、それほど強くもないし、オッパイに異常なほど執着してるし、つかみどころのない男である。
次に、ダンディの相棒。

ミャウ(cv吉野裕行)

ベテルギウス星人のミャウ。
ネコっぽいがネコじゃなく、でも魚が大好き。
動物っぽいキャラのくせに、全然かわいくない。
最初はダンディに捕獲された立場だったんだけど、なし崩し的にハンターの仕事を手伝うようになっている。

QT(cv佐武宇綺)

これもダンディの相棒で、ロボットのQT。
AIっぽく主に情報担当をしてるが、実はただの掃除機ロボットである。
よく省エネモードに入って、あまり役に立たない。
でも、基本的には真面目でいい子。

以上の3人組が新種の宇宙人を探して色々な星を探索する物語になってて、基本的には1話完結。
各話に繋がりはほぼなく、たとえばダンディらが死んでも、次の回では何事もなかったように彼らは宇宙人探索を継続してるわけで・・。
「??」となるが、「まぁ、ナンセンスコメディだから、死んでも死なない感じで話を進めていくんだろうな・・」と、そのうち気にならなくなる。
とはいえ、シリーズが終盤にいくにつれ、だんだんと各話の繋がりのなさにも実は意味があることが見えてくるんだけどね。
・・まぁ、それはそれとして、一応「前話との繋がりを考えなくてもいい」という前提だし、企画そのものが「お話は各回の担当脚本家におまかせ」という制作スタイルだったんだと思う。
で、のべ10名ほどの脚本家がセッティングされてるんだわ。
その中のひとりが円城先生なんだが、他の顔ぶれも大河内一楼湯浅正明佐藤大うえのきみこ森ハヤシ等、凄い贅沢なメンツが揃えられている。そもそも、この作品は総監督・渡辺信一郎、監督・夏目真悟というだけでも贅沢だし、それに加えて谷口悟朗浜崎博嗣米たにヨシトモ高橋敦史といったところまでスタッフに加わっている。
どんだけ大物を揃えてんのよ?
・・あ、「ゴジラS.P」の円城塔/高橋敦史コンビというのも、実はこの作品で既に一緒に仕事してた仲、ということだね。

「スペース☆ダンディ」第24話

さて、それでは芥川賞作家・円城先生が脚本を手掛けた回のうちのひとつをご紹介したいと思う。
第24話「次元の違う話じゃんよ」である。
この回は、ダンディの昔の恋人が登場する回なんだ。
円城先生、まさかのラブストーリー?
女性の名前はカトリーヌ(cv沢城みゆき)。
どうやら当時、カトリーヌにはダンディ以外にもう1人恋人がいたらしく、
その男性の名はポール(cv井上和彦)。
三角関係の末、結局カトリーヌはダンディでなくポールを選んだということで、彼女に去られたダンディにしてみればあまり思い出したくない苦い記憶のようだ。
ところが、ある日ダンディのところにカトリーヌがやってきて、
「別れたポールから執拗に追いかけられている。あなたに助けてほしい」
と依頼される。
予想外のメロドラマ展開。
・・いや、それはそれでいいんだけど、問題はカトリーヌのビジュアルだよ。
カトリーヌは「4次元人」という特殊な宇宙人らしく、見た目はこういうのなんだ↓↓

カトリーヌ(cv沢城みゆき)

ただの箱やん!


彼女は4次元という高次元の存在だけに、どうしても3次元人には箱に見えてしまうんだね。
こうして外観はただの箱でありつつ、声は沢城みゆきだけあって、めっちゃ色っぽいのがかえってタチが悪い・・。
で、結局ダンディは昔のよしみということもあり、彼女の依頼を受けることにしたんだわ。

彼女いわく、「ポールは王位継承権を得てから、人が変わってしまった」ということらしい。
実はポールって、王子だったんだね。
で、問題はそのポールのビジュアルである。

ポール(cv井上和彦)

ただの棒やん!


どうやらポールは「2次元人」だったみたいで、外観はただの棒です。
井上和彦さんも声優界の重鎮なんだし、少しは仕事を選べよ・・。

というか、ダンディは箱をめぐって棒と争い、最終的には棒に負けたってどゆこと?


スゲーよな、さすがは日本SF大賞もとってる円城塔先生。
クオリティはともかく、「4次元人」と「2次元人」のビジュアル表現をすることには成功したんだから。
ちなみに、2次元人が繰り広げてる戦争はこんな感じです↓↓

2次元の戦争

昔のインベーダーゲームやん!

ちなみにだけど、この作品で描かれた「2次元宇宙」はこういう感じの形状になっていました↓↓

2次元宇宙

紙を丸めてるだけやん!

あと、この作品では最後に「1次元宇宙」や「零次元宇宙」も出てきます。

1次元宇宙
零次元宇宙

雑すぎ!

とはいえ、さすがは博士号を取得している円城先生である。
ここまで様々な次元を描いたアニメは初めてみたよ。
でもねぇ、この回は「スペース☆ダンディ」でも屈指のアホ回として有名なんだわ。
一応、終盤には「ワープ」のメカニズムとか結構知的な会話も挿入されてるんだけどね。

あと、気になったのは昔の回想シーンで、明らかにダンディとカトリーヌの「情事のあと」っぽい描写があったこと。

というか、4次元人と3次元人なのに、どういう構造のSEXしてたんだろう?

いや、それ以上に、2次元人(ポール)と4次元人(カトリーヌ)のSEXの方に興味あるわ。
ほぼ間違いなく、箱の中に棒が入るイメージだろうけど。

まぁとにかく、円城塔先生がタダ者じゃないことが非常によく分かるのが「スペース☆ダンディ」である。
まだ未見という方がいらしたら、是非どうぞご覧になってみてください。


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