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もう大人だし、トラウマ系童話アニメを見ても大丈夫
今回は、童話および児童文学というものについて考えてみたいと思う。
今でこそ漫画およびラノベといったところがアニメにおける原作のメインとなってるが、昔はもっと童話/児童文学系アニメが多かったことを、ある一定以上の年齢の方ならご存じだと思う。
それこそ「世界名作劇場」がそうだし、あと「まんが日本昔ばなし」もそうだよね。
しかし「名作劇場」は1996年をもって地上波から撤退、「日本昔ばなし」も1995年をもって放送終了。
奇しくも1995年といえば「エヴァンゲリオン」放送の年であり、いうなれば深夜アニメ、およびセカイ系の台頭をもってこれらは衰退していったと見るべきなんじゃないだろうか?
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こういう強烈な<毒>が、童話/児童文学には天敵だった?
・・かもしれないね。
さて、皆さんは<童話>をどのぐらい知ってますか?
大体の方がご存じなのは、次の3つだと思う。
①イソップ童話
②グリム童話
③アンデルセン童話
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じゃ、この3つが各々いつ頃の成立かをご存じですか?
①紀元前6世紀前後、作者アイソーポス(古代ギリシア)
②18~19世紀、作者グリム兄弟(ドイツ)
③19世紀、作者アンデルセン(デンマーク)
多分、みんな<童話>という一括りにしちゃうもんだから、この3つを混同してる部分もあるんじゃないかな、と。
これら3つの代表的なところを挙げてみると
①アリとキリギリス、北風と太陽、ウサギとカメ、狼と少年
②白雪姫、シンデレラ、赤ずきん、眠れる森の美女
③マッチ売りの少女、赤い靴、みにくいアヒルの子、人魚姫
といったところである。
①だけ極端に古いということ。
このイソップ童話は訓話的な内容が多く、小さい子に見せるには一番いいのかもしれん。
でも、ぶっちゃけ一番面白くないという意見も(笑)。
・・そう、面白いのはやっぱり②か③なんですよ。
特に②は、かなりの数がディズニー映画のモチーフとして使われている。
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よって、グリム童話=ロマンティックと解釈してる人も多いだろう。
いや、それはディズニーのエンタメ転換があまりにも巧かっただけのことで、グリム童話そのものはさしてロマンティックというわけでもないさ。
というか、これ自体はグリム兄弟の創作というわけではなく、もともとから欧州に伝承されてた民話を編纂したものにすぎないという。
いうなればグリム兄弟は、「古事記」を書いた太安万侶みたいな立ち位置だということ。
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ただこの兄弟、元ネタをめっちゃ改変してるのよ。
というか、最初は元ネタにあまり手を加えず出版したらしいんだが、すると「残酷すぎる!」とクレームが出たようで、その後は増刷するたびに改訂をしていったらしく、最終的にはかなりマイルドなものになったらしい。
我々が知るグリム童話とは、大体がその去勢されたマイルド版である。
・・でも、何で元ネタは残酷だったんだろうね?
民話というのは、元々そういうものかもしれんが・・。
そういや我が国の民話「桃太郎」にしても、一番最初のは全然違うという話をどこかで聞いたことがあるわ。
確か、その元ネタには大きな桃から桃太郎が生まれるというくだりはなく、なぜか謎の桃を食った爺さん婆さんが若返るという展開で、普通にセックスして婆さんが桃太郎を出産・・みたいなプロローグだったかと思う。
そうね、確かに絵本とかにする際には爺さん婆さんの濡れ場を挿入するのはややこしいし、「桃を食べて絶倫⇒妊娠」を「桃から生まれた」という意訳にした判断もあるいは正しいのかもしれん。
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で、グリム童話に話を戻すが、その元祖がやたら残酷だったというのは多分古い時代(中世?)の世相を反映してのことだと思うし、きっと残酷なのがごく当たり前の前提だったんだろうよ。
でも、現代ともなると「むしろ元ネタの方を見たい」という刺激を求める層が一定数いるみたいで、そこから作られたアニメが「世にも恐ろしいグリム童話」というOVAである↓↓
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百聞は一見にしかずということで、興味のある方はとりあえずYouTubeにてタイトルを検索してみてください。
56分の動画が見つかるはず。
ぶっちゃけ、めっちゃ怖いっすよ?
「ヘンゼルとグレーテル」「青ひげ」「シンデレラ」の3編オムニバス形式で、特に「ヘンゼルとグレーテル」は超エグいわ~。
なぜか、ここでは「性悪な継母」が「実母」という設定になってるんだけど、いや、初版はマジでこの設定だったらしい。
付け加えると、初版にはしっかりグレーテルの「実母への憎悪/殺意」の記述まであるという。
つまり本作は結構原典に忠実なのよ。
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あと3本目の「シンデレラ(灰かぶり)」も、シンデレラの姉がガラスの靴を履く為に足指の切断、踵の切断をするくだりがあるわけだが、これも初版にはしっかりあった描写らしい。
もちろん、ディズニーにはそんなのないけど。
イソップ童話の<教訓>に比べ、グリム童話の<教訓>は少し刺激強すぎないか・・?
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さて、次はアンデルセン童話の方を見ていこうか。
これは「マッチ売りの少女」や「人魚姫」など悲劇のテイストが強い印象があるんだが、これらはグリム童話のように民話ベースというわけじゃなく、アンデルセン自身の創作であるらしい。
つまり彼の作家性は、どっちかというと悲劇ベースということだろう。
ただ、アニメファン目線でアンデルセンの視聴する際、まず最初に選ぶべきなのは、この作品である↓↓
「雪の女王」(1957年)制作/ソ連
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これ、ジブリから出てるやつなんだよね。
なぜジブリが?と思うかもしれんが、このソ連版「雪の女王」は宮崎駿に「僕にとって運命の映画」と言わしめるほどに多大な影響を与えた作品とのことで、とにかく不朽の名作なのよ。
多分だけど、1950年代のソ連は異様なほどアメリカに対抗意識を燃やしてたっぽいし、「ディズニーに負けないアニメ作ったるわ!」として制作したのがこの作品なんだと思う。
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確かに、めちゃくちゃクオリティ高いね!
ストーリーとしては少女ゲルダが、雪の女王(悪役)にさらわれた幼馴染みカイを探す旅をするロードムービーで、とにかくカイを見つける為に危険も省みないゲルダの健気さが涙を誘うんですわ。
ちょっとだけ、名シーンを見てもらいましょうか。
私、これだけ見ても少し涙出てくるんですけど・・↓↓
これほどエモい作品を若い頃に見せられたら、そりゃ宮崎駿でなくともアニメにロマンを感じちゃうよね・・
なお、これの無料フル動画は、YouTubeで「雪の女王(1957)字幕付き」と検索すれば一応見れなくもないんだけど、ただこれは日本語字幕の翻訳機能がちょっとあれなので、そういうのをあまり気にしない人だけご覧になってみて下さい。
ホントは、ジブリの「新訳版」を見るのが望ましい。
さて、最後にご紹介したいのは、1970年代にテレビ放送されていた「まんが世界昔ばなし」という番組で、これは「日本昔ばなし」と混同されがちだけど、こっちは「世界」ですからね。
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これ、めちゃくちゃ優良物件なのよ。
「日本昔ばなし」みたく長寿シリーズにならなかったのが不思議なぐらい。
なぜって、イソップ/グリム/アンデルセンはおろか、世界のありとあらゆる児童文学を1話10分程度の超コンパクトにまとめてくれてるんだから。
忙しいお子様にはピッタリの逸品ですよ(笑)
じゃ、そのさわりを実際少し見てもらおうか。
・・あ、これにも「伝説のトラウマ回」というのがあるのね。
それが「炎の馬」という話で、これはナレーション兼cvの宮城まり子さんが「残酷!やりたくない」とゴネたらしい。
じゃ、百聞は一見にしかず、実際ご覧になってみて下さい。
・・結構、雰囲気あるでしょ?
他にも「ドラキュラ」「青ひげ」「赤い靴」などがある。
このシリーズは結構サブスクで配信されてるし、たとえ視聴環境にない人でもYouTubeに無料動画が豊富にあるので、ぜひご覧になっていただきたい。
超お薦め物件だから。
とにかく1話10分というコンパクトさがいいし、それに児童文学のみならず
「リア王」や「ファウスト」や「ドンキホーテ」など子供向けじゃないやつまで扱ってくれているし、他にも聖書、神話、史劇、偉人伝などジャンルはめっちゃバラエティに富んでいる。
また、これの制作にマッドハウスが絡んでるらしく、ちょいちょい杉野昭夫さんの作画が出てくるんだわ。
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・・あれ?杉野さんが描いてるってことは、この演出の「松戸完」という人はひょっとして・・と思って調べてみたら、はい、案の定、出崎統の別名義でしたわ(笑)。
で、興味深いのはこの出崎+杉野コンビで、「フランダースの犬」回を担当してるのよ。
ちょっと、それを見ていただこう。
・・凄くね?
あの「フランダースの犬」を僅か10分間にまとめ、しかもきっちり泣かせてきやがる。
やっぱ、出崎+杉野は最強だよな。
他にも、このふたりは「美女と野獣」や「トロイの木馬」等をやってて、「トロイの木馬」なんて完全にキャラデザが力石だからね(笑)。
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なお、このシリーズは後半に入ると、1話10分だけじゃなく連続シリーズもやるようになり、「十五少年漂流記」5話、「小公女セーラ」11話など結構見応えのある内容だった。
監督は出崎さん以外にも、りんたろう、川尻善昭、真崎守などの第一線級の方々が担ってて、アニメファンにとってはまさに垂涎のシリーズである。
というか、世のお父さんお母さんは、是非これをお子さんに見せるべきじゃないだろうか。
「世界名作劇場」の方は50話以上あってさすがにハードル高いけど、こっちは1話10分程度、連続物でもせいぜい10話程度だし、飽きっぽい子供だろうと結構イケますよ?
子供には、たとえアニメでも「文学」に触れてほしいものである。
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