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2023年読書評12 フロスト

「冬のフロスト」

これを買う時、一緒に「フロスト日和」と勘違いして、既に持っている「フロスト気質」を買ってしまいました。全くの失望感・・・。
気を取り直して、

本作はシリーズ5作目。
分厚い文庫が上下2冊。
上巻12章で500ページ、下巻10章で500弱。
のんびり読んで一か月くらいかかるでしょう。

私はシリーズを順不同で読み始めたのですが、先に読んだ本で登場する人たちが出ています。イモにいちゃんとか、おじょうちゃんとか。
読み始めは、他の作品に比べ、気のせいかスピード感がない感じ。

そしてこの本ではこれまで描写されていなかったイモにいちゃんモーガンの風体が描かれます。それまではずっと若い、細い男かと思っていたら40くらいでがっしりした体形らしい。
フロストも具体的年齢はなく、ベテランを想像しなければならない。

そこで思ったのですが、この作者、本は確かに面白いのですが小説としての書き方は素人なのではないかと。
小説というのは人物描写、風景描写などをそれとなく盛り込み、多少文学的描写もあった方が良い。
これは都筑道夫の受け売りですが、私も確かにその通りだと思いました。彼=都筑先生の本だとシリーズの場合、短編でも毎回キャラクターの説明が入ります。
しかし本フロストものは、登場人物の風体描写がない、地の文は三人称だけれど視点がコロコロ変わる(確かにそういう小説は無数にあるが)。

私が思うにこれは作者が小説家というよりむしろ脚本家であることを示しています。彼の出身はドラマ脚本家であり、簡潔に物語だけを伝えるものを書くことを習慣化しているからです。
そのため彼は小説を書く時にもその手法が抜けず、物語の追求に徹したものと思われるのです。

そしてこのような物語主体の小説というのは、読んでいる時は面白くても、再度読みたいと思わせないものとなるものなのです。
私は今、初めてフロストシリーズを読んでいますが、おそらくですが再読はしないでしょう。
宮部みゆきがそうです。初読は面白いのですが、読み返そうとは思わない。

今回、そんな感想を持ちました。

さて、本作はこのシリーズではあまり上位には来ないかなという感じ。
しかしやはりラストのスピード感は、一気に読ませるものでした。

物語は例によって
イギリスの架空の町デントンの警察署で起こる事件を平行して物語ります。
主人公はジャックフロスト警部。
下品だけれど、事件には実直。人使いは粗いが部下思いである。
少女行方誘拐殺人事件、娼婦連続殺人事件、畑で見つかった数十年前の骸骨。枕カバーに盗品を入れて盗む強盗などなど。

思ったのですが
イギリスの警察というのは銃を持たないのか? 凶悪犯に対峙する際も素手というのは時代遅れな気もしますが。
そして唯一気に入らないのは、フロストが容疑者をとにかく疑ってかかる所です。確かにそれが1つの捜査方法なのでしょうが、旧来の悪い警察のやり方という感じがします。

でも本シリーズはそんな目くじらを立てずに、ある意味、ユーモア小説として楽しむことも出来ます。
解説は養老孟司が書いていて、このシリーズが広く親しまれていると感じさせます。


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