記事一覧
川野里子『ウォーターリリー』短歌研究社*書評
第5回BR賞(ブックレビュー賞)応募作です。まだまだ筆力が至らず、予選通過かないませんでしたが、心を込めて書きました。
「あなたも、そこにゐる。睡蓮に生まれて」 淀美佑子
あなたは、自分の現在地をほんとうに知っていますか?どこに生きていますか?
ウォーターリリーここに生まれてウォーターリリーここがどこだかまだわからない
この歌集には、睡蓮をモチーフにした歌が様々な題材の歌の狭間に
短歌の朗読〈音と型〉声優・石野竜三さんに聞く
語り手:石野竜三さん 聞き手:淀美 佑子
年頭に宮中で行われる歌会始では、投稿短歌を独特の読み上げで聞くことが出来る。和歌などの詩歌を読み上げることを「披講(ひこう)」といい、それを読み上げる人を読師(どくじ)とか講師(こうじ)という。現代の感覚からすると、ずいぶんとゆっくり間のびしたような節をつけて読み上げられる。
なぜあのような読み方をするのか。それについて、考えたことがあるだろうか。
塚田千束『アスパラと潮騒』短歌研究社*歌集鑑賞
先生と呼ばれるたびに錆びついた胸に一枚白衣を羽織る
塚田千束の歌集は、どうしてもプロフィールと切り離しにくい。それはまず、医師という職業柄の側面が大きい。どうしても医師として命に寄り添う歌には注目してしまうし、多くの読者に新鮮な視点と発見をもたらす。
かつ、母として、妻として、娘として、女性としての役割を多角的な視点で歌われている歌集だ。
母乳でしょうと言われるたびにすり減って
永井陽子『なよたけ拾遺』*リズム研究会 読書会リポート
2024/07/07
七夕であり、東京都知事選であったこの日、リズム研究会初めての読書会がオンライン開催されました。
メンバーは、岡部杏里さん(幻桃)、岩舘澄江さん(コスモス)、江口美由紀さん(幻桃)、三好くに子さん(塔)、淀美佑子(中部短歌)の超結社で、ただただ一緒に話したら楽しい集まりです!
意外とちゃんと読んだことがない名著を、みんなで読もう!という趣旨で、岡部さんが手に入りにくい歌
小島なお「かどうた」最終回*ニコ動無料配信ありがとう(ゲスト:笹公人)
おいおいおいおいおいおいおいおいおい!!(岸部露伴風味)
ニコ動に参入したくなくて観ることを拒んでいた「かどうた」!最終回!!
障害の影響でログインエラーが発生していることから、無料配信されたじゃあないか!
小島なおさんの番組ですが、ゲストが笹先生含め、めちゃくちゃおもしろかったじゃあないか!!
(呑みながら視聴したので、ちょっと勢いがありすぎることに関してはお察しください。)
とても
短歌集団☆チカヨミ☆ってなに?
この度、文学フリマ東京38(2024/5/19)に、5年ぶり出展となるチカヨミ。「チカヨミ」というタイトルの本は作っていませんが、同人誌サークルです。
文学フリマにデビューしたのは2013年。月日の経つのが早くて恐ろしい。そのころから本を作っているなんて、ベテランだと思うでしょ?薄い本作りはベテランの、短歌初心者1年生でした(笑)
チカヨミは、中学生くらいからの同級生で、詩、小説、エッセ
短歌マガジン(次世代短歌) 第10回毎月短歌【現代語・テーマ性愛】人間選者:淀美佑子
さてさてみなさま、ごきげんよう。選評発表のお時間です。
求めあう人の性から生まれたる歌のテーマの性愛は、いつの時代も色褪せぬ。百五十一首のなかから捨てきれぬ愛をいくつも拾い上げ、咲き乱れるはこの十首。人間選者、淀美佑子がお送りします。どうぞ
【バーレスク賞】
脱衣所で裸の二羽の人間が鳥の部分を見せ合う真冬 /猫背の犬
人間の単位は、はて?羽があるかのように二羽と数えるふたりには、鳥の部分が
連作「帯すれば」30首 淀美 佑子 / あの頃のわたしへの挽歌として
※第25回NHK全国短歌大会(2024) 近藤芳美賞 入選作15首を含む
帯すれば
淀美 佑子
販売の仕事でならば商品を介して会話ができるコミュ障
売上に自分が肯定されているかんじがするのは一種の麻薬
贅沢を敵としているお客にも消費の正義を笑顔で語る
面倒だ着ない高いと穿たれて出発点に立つ呉服売り
羨望を抱くばかりの常套句「嫁入り道具」と「箪笥の肥やし」
帯すれば背筋に芯
短歌マガジン(次世代短歌 )第8回毎月短歌【現代語・2月の自選】人間選者:淀美佑子
さぁさぁ、寄ってらっしゃい見てらっしゃい!人間選者・淀美佑子の選評発表だよ!!
毎月の短歌選ぶも第8回、口語文語を分かつとし、すったもんだのその後で、さてさて話はこれからだ。
2月自選の現代語、ふたを開ければ集いしは、ありがたいこと183首。
どちらに投稿すべきかと、よもや失格?などという、ご心配には及びません。全てきちんと鑑賞し、選をいたしてございます!
どうぞ、今宵はお楽しみください!!
【
伊豆みつ『鍵盤のことば』書肆侃侃房*歌集鑑賞
花の名を呼ぶかのやうに歌ふから耳がすっかり咲いてしまった
口語、文語、旧かな、新かな、どれをどう選択するかでその人の文体はつくられる。わたしに、口語に旧かなを取り入れた文体の魅力を教えてくれた歌集を読み返して紹介したくなった。
伊豆みつの歌集には、花や音楽、サブカルなど様々な要素があり、引き出しの多い歌人だと思う。「花」と「歌」が入ったこの一首は、この歌集の世界観の入り口という気がする
人間選者をするにあたって〈次世代歌壇 毎月短歌第8回〉
短歌投稿サイト、次世代歌壇(コトバディア)には、「AI選者」がいるため「人間選者」という概念が生まれています。この度、その第8回毎月短歌の人間選者をお引き受けしました。その意気込みなどの表明のため記事を書きます。
まず、主催者の深水英一郎さんのXでの炎上について、わたしのスタンスを表明しておこうと思います。関心のない方は読み飛ばしてください。▶
炎上の概要としては〈今の短歌界には読者ファ
小坂井大輔『平和園に帰ろうよ』書肆侃侃房*歌集鑑賞
乗車位置ではないところに立っているわたしの後ろに出来た行列
行列を作るのは、もはや日本人の習性なのか、なぜ乗車位置ではないところにわたしが立っていたのかはわからないが、例えば立ち止まってスマホをいじっていただけかもしれない。だがふと気づけば後ろに列ができてしまっていて気まずいかんじが笑いを誘う。
この歌集の作者、小坂井大輔は1980年愛知県名古屋市生まれ。短歌の聖地と呼ばれている、名
橋爪志保『地上絵』書肆侃侃房*歌集鑑賞
たとえ仲の良い友達だとしても、すべてを理解できるわけではない。逆もしかりで、仲が良い人にも理解されたくない部分が自分の中にある。というのは言い訳の前振りになってしまうが、橋爪志保の歌には、よくわかるものとわからないものが混在している。そのわからなさは、作歌する上での意図的なものというよりは、作者の内面をそのまま顕在化した結果という気がする。その根拠は歌集から逸脱してしまうのだが、日頃SNSで垣間
もっとみる笹公人『終楽章』短歌研究社*歌集鑑賞
今話題の『シン・短歌入門』の著者、笹公人(以下、笹先生)の第五歌集を改めて味わう。
『シン・短歌入門』は、初心者にもそうでない人にも、よくある疑問をQ&A形式でわかりやすくまとめてあり、最後には既存の短歌を穴埋め問題にした短歌ドリルがあるなど、楽しく短歌が学べる素晴らしい入門書だった。丁寧で、親切で、おもしろい。入門書にも人柄があらわれている。
その笹先生の第五歌集が、2022年8月に発行さ
中村孝子『あね いもうと』*歌集鑑賞
結社、中部短歌会の先輩の歌集を拝読した。書店には流通していない歌集ながら素敵な歌がたくさんあり、最近読んだ歌集の中で最も付箋まみれになった。
反骨の精神むずと湧き出づる熊襲の裔のしたたかにあれ
作者中村孝子さんは、1936年(昭和11年)熊本県生まれ。つまり戦前生まれの大先輩だ。「熊襲」とは『日本書紀』における九州地方の地名で、熊本に生まれた作者のたくましい精神性がうかがえとても頼も
佐藤涼子『Midnight Sun』書肆侃侃房*歌集鑑賞
まもなく1か月が経過するが、能登半島地震による被災者の避難生活は続いており、行き届かぬ支援がくりかえし報道されている。個人的にはわずかばかりの支援金募金をするくらいしかできないものの、それらの報道を注視し明日は我が身と心を寄せる毎日だ。
そんな今、この歌集を改めて開いた。宮城県仙台市在住の歌人、佐藤涼子の『Midnight Sun』には、「記録」というタイトルの連作で東日本大震災の光景が描かれ