重要度x緊急度の2軸分析の使いこなし
2軸分析とは
2軸分析とは、業務課題を「重要度」「緊急度」のx-yの2軸で整理する分析方法です。
業務課題を「重要度」の高・低 と「緊急度」の高・低の4象限に振り分け、各課題の位置づけとプライオリティーを確認することができ、直感的に理解しやすいこともあり、具体的な実行計画に落とし込む前にとても重宝します。
しかしながら、前職で実際に活用し、また、当時のコンサルタントに教わってきたことはここまでで、正直なところ単なる便利な考え方で止まっており、課題を具体的に実行計画に移す上では、2軸分析には、その先の繋がりも展開も欠けている印象を持っていました。
そのモヤモヤがようやく晴れましたので共有したいと思います。
先に資料を提示します。資料を見ていただきながら先を読まれることをお薦めします。
最初のあるある
2軸分析を行うにあたり、社長やマネージャーの方に課題を書き出していただき、各課題がどの象限に位置付けられるかをお聞きすると、決まってこういう答えが返ってきます。
「どれも大事」
そしてほぼ全ての課題が「重要度:高」「緊急度:高」の第一象限に集中します。
これは、課題の捉え方・重要度の認識・取り組み方の3点が整理できていない場合の典型です。
課題意識の高い事業所や企業ほど、いい意味で、最初から4つの象限に振り分けることの方がむしろ困難かも知れません。
マッピングの仕方
(1)最初は全て重要度高に
最初は全て「重要度:高」の象限に振り分けます。
次に、「時間軸のみに着目」し、緊急度を設定します。
いろいろ考えすぎずに客観性を担保するために、機械的に進めるのがコツです。
例えば、下記のようなクライテリアです。
・「数ヶ月以内」に、結果の良否に関わらず終わらせたい課題は第一象限
・「1年ほど、あるいはそれ以上」かかりそうな課題は第二象限
(2)ルーチン化できそうな業務を抽出
ここがマッピングの肝になります。
2軸分析でうまく業務整理できない場合は、全てを自分たちの仕事としてやらなければならないと思い込んでしまっている思考も原因の一つにあります。
しかし、「マニュアル化」できるもの、業務支援ソフトなどの「ツール」でできそうなこと、さらに「自動化」までできそうなことを抽出し、思い切って「重要度:低」に下げます。
もしくは、マニュアル化・ツール化・自動化可能なタスクと本質的な課題の見極めができるまでテーマをブレークダウンします。
ルーチン化が可能な部分は、徹底的な合理化・効率化を図る業務で、本質的に重要度な課題ではありません。
各象限の取り組み方
(1)第一象限( 重要度 高 x 緊急度 高)
「できる人だけの少数精鋭」で取り組みます。
これに尽きます。
あるいは、プロジェクト化してメンバーの役割と責任を明示し、権限を集約します。
少数精鋭で取り組むには規模が大きいと感じたら、数人のできる人だけでチームを組めるレベルまで、課題をブレークダウンする必要があります。
言い換えると、本当に急ぎでやらなければらないことだけにリソースを集約します。
規模の大きいままで取り組むと、関わるメンバーや組織が多くなり、それだけコンセンサスと意思決定が遅れます。
できる人とは、自律的に業務を遂行するスキルと経験が備わっている方です。
また、この象限の課題に向かないのは、そもそも論が口癖の方(バックパスで前に進まない)、話を大きくしがちな方(ステークホルダーを増やして効率を下げる)、批判的なご意見番(停滞を招き指揮に関わる)です。
中には、若手を抜擢したがる経営者もいるのですが、この象限の業務は、育成には向きません。緊急度の切迫状況を鑑み判断する必要があります。
ベテラン社員には、根回し・交渉・リスク管理などの経験値と洞察力が必要な役割を担っていただき、想定外の事態を招かないようにします。
(2)第二象限( 重要度 高 x 緊急度 低)
ここは、会社や組織の中長期の先を見越して、大きな方向性や戦略などを議論する場で、「様々な視点から多様な意見を集約」していくことが、あるべき取り組み方になります。
様々な知見と経験を持ち合わせた方々だけでなく、素直なものの見方ができる第三者の参画もありです。
言わば、「知を集約する象限」と言えます。
検討のチームリーダーに、若手を抜擢するのもありです。
なぜなら、会社の次を担う若手の成長に直接繋がるからです。
従って、人材育成もこの象限になります。
また、マーケティングに関する課題は、本来、この第二象限に軸足を置いて取り組むものです。
例えば、マーケティングのセオリーである3C、コンペチターの調査(ベンチマーク)など、市場トレンドを把握するための必要な基礎的な分析業務は、必要に迫られて第一象限の課題として扱うのではなく、常にこの象限で継続的に扱うテーマです。
マーケティングデータを集めることだけで労力を使い切っている企業が多い印象がありますが、データ収集の先の洞察(insight)が最も肝になるところです。
データ活用(data driven)に積極的に取り組んでいる企業は、すでに定量化可能なデータはその収集を自動化し、定性的な情報や現場の肌感覚などを総合して、社員は洞察に極力集中できるような体制に進んでいます。
つまり、マーケティングに関わる各課題をこの2軸にマッピングすると、最も重要な洞察に関わる課題=第二象限、そのための定量データ収集=第四/第三象限、必要に応じ定性的検証=第一象限、という形になるようにマネジメントしていくのがあるべき姿です。
(3)第三象限( 重要度 低 x 緊急度 低)
私が2軸チャートをコンサルタントから学んだ時は、ここは何もないことが好ましく、ここに課題があった場合は、それだけ無駄が多いということを意味していました。実際、その通りです。
ルーチンジョブは、この象限になるということを上述しましたが、ルーチン化したら、業務委託やアシスタント/アルバイト/パートの活用などのリソースの合理化と業務の効率化を図り、社員をルーチンジョブから解放し、無くしていきます。
ちなみに、ルーチンジョブ以外にも、中小企業の場合ですと、電話番という仕事があります。これだけコミュニケーションインフラが増えてきた現代においては、合理的に見直す必要もあるのではと思います。
(4)第四象限( 重要度 低 x 緊急度 高)
この象限は、第三象限に繋ぐために、ルーチン化するためのマニュアル作りやツール導入作業や、業務委託の契約作業などが該当します。
マニュアルやツール化は、実務に精通している方、ドキュメント作成が得意(好き)な方が向いていますが、ここでも、社内調整が多く発生し、管理責任と管理効率の視点も必要ですので、根回しや社内承認なども含め、ベテラン社員の補佐があると進めやすくなるかと思います。コンプライアンスが絡む契約業務も然りです。
現場の細かな仕事を覚えてもらうという意味で、モチベーションに問題なければ、限定的に若手に遂行いただくのもありと思います。
以上、2軸分析に関する知見をまとめてみました。
お読みいただきありがとうございました。
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