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さよなら、から始めよう『サヨナラフラグ』

こんにちは、石川由弥子(ゆみこ)です。

人を好きになって、相手も自分を好きになって、恋人になる。

それってとてつもなくすごい確率なことですよね。

自分が好きになったからと言って、相手が自分のことを好きになってくれる保証はないし、逆に相手が自分のことを好きになってくれたとしても、自分が好きになるかは別問題です。

今日ご紹介する作品は、とてつもなくすごい確率で付き合ったカップルの別れを描いたオムニバス『サヨナラフラグ』。

作者は、『いつかティファニーで朝食を』や『吉祥寺だけが住みたい街ですか?』のマキヒロチ先生です。

▼『いつかティファニーで朝食を』はこちら

▼『吉祥寺だけが住みたい街ですか?』はこちら

『サヨナラフラグ』のあらすじ

話題の注目作家・マキヒロチ 初作品集! オンナゴコロは千変万化。彼氏に別れを切り出したい彼女の憂鬱、男にだらしないルームメイトへの苛立ち、ツイッターでつぶやくのを止められない依存症女の葛藤───ときどき無様で滑稽で、最高にいじらしく愛おしいオンナたちの人生を切り取った、7つの物語を収録! ●収録作品 あなたがかえるまえに/サヨナラフラグ/share/えだまめパテ/SUNDAY BAKE SHOP/忘れな傘/だまってスミちゃん

『サヨナラフラグ』のおすすめポイント

出会いがあれば、別れがある。

本作は7つの「別れ」のお話が収録されています。

文字通り「別れ」に立ち会う話もあれば、「別れ」を選択したものの再び付き合う話もあります。

女心と秋の空、ですね。

今回は、私がお気に入りの作品をご紹介します。

「あなたがかえるまえに」

【あらすじ】主人公のチカは、今日、彼と別れようとしています。彼とお茶をした後にそっと彼の家に行って、荷物を回収し、さよならの手紙を置いていこうと考えていました。しかし、そっと家に入ったチカが見つけたのは、彼が描いたたくさんの手書き付箋。「留守中にチカが退屈しないように」と貼られた付箋を辿っていくと……。

別れる前提で彼と会っているチカの表情や反応と、それ対する彼の表情や会話の違いが浮き彫りになり辛い気持ちになります。。

荷物を取りに行った彼の家には、たくさんの思い出がある。好きだったはずなのに、分かち合いたかった価値観のズレをチカはひどく感じていました。「別れ」を選択した彼女の気持ちを彼は汲み取っていたのか、果たして何も言わずこのまま去っていくことが誠実なのか。「別れの美学」を学んだ作品です。

「えだまめパテ」

【あらすじ】「女ってこういうビストロバル好きだろ」と男3人、それぞれ彼女の愚痴や悩みを語らいます。結婚のプレッシャーを感じつつ、今の彼女よりもいい女がいるんじゃないかと軽口を叩くたまちゃん。ブスな女と浮気をして、本命の彼女に振られたイケダ。夢を追って彼女と別れ、それからフリーのバンドマン・清一郎。時同じくして、彼らと関わりのある女性3人は、「やっぱり居酒屋がいいよね!」と彼氏との進捗を語らいます。

男女の話している内容がこんなにも違うのかと面白い!

男側が勝手に「こうだろう」と思っていることが、実は女側は全く思っていなかったり、「お前にはもっといい男がいるよ」といわれて別れた男が別れを選択した理由が「厚生年金を入っていない女とは結婚したくないから」だったり、「別れた」という事実は1つですが、その背景は勘違いや偏見などで溢れているのです。

その違いがすごいリアル〜!(笑)

その違いこそ、タイトルの「えだまめパテ」に表れています。

(本当は女は「えだまめ」が食べたいのに、「女はビストロでパテとか食べさせればいいだろう」と男が勝手に勘違いしている意)

別れがあるから出会いがある

さまざまなカップルの別れが描かれる本作は、決して悲しい話ではなく、「別れ」を通じて分かり合えたり、「別れ」を通じて前向きになれたり、ポジティブな意味での「別れ」なのです。

好き合って、分かち合った時間は決して無駄ではなく、お互いより良い人と出会うための選択なのだということを強く感じました。

大切だった人にフラれること、大切だった人をフルこと、どちらも深い悲しみではありますが、それもポジティブに捉えようと思える作品です。

興味があったらぜひ読んでみてください!

ではまた〜






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