「インスリンの働き」初級講座⑥ 語る前にセリフを覚えましょう
この初級講座(別名「インスリンとは……を語れる人になる講座」)にいつもお付き合いいただきまして、ありがとうございます!
基礎的な地味な解説で、淡々と回を重ねてまいりました。
そろそろ機も熟してきた頃合いでしょう。
今回から具体的な語り方について語りたいと思います。
どうしたら、インスリンについて分かりやすく、誰かの役にたつお話ができるのか?
まず、絶対やった方がいいのは……
カギになるフレーズを
頭に入れておくことです。
こんな質問をされたら、このフレーズを答えれば良いとか。
まずフレーズ1を話し、続けてフレーズ2、フレーズ3と展開すれば話の流れを理解してもらいやすいとか。
こうした準備が整っていた方が
話す時に楽ですよね?
ちなみに、小説家だった父が最初に書いた栄養関係の本(『システム料理学』)の第一章のタイトルは、「丸腰で立ち向かうな」でした。
何かを説明したい時も、丸腰でノコノコ出ていってはいけません。
「決めセリフ」的なフレーズが用意できているかどうかで、勝敗は決まってしまいます。
ということで今回からは、皆さんが誰かとお話ししている場面を想定して、インスリンの語り方について解説していきます。
インスリンは、食事をした時に分泌される
薄字の文章が、お相手の方が話したこと。
太字が、ぜひ皆さんの頭の中にストックしていただきたいフレーズです。
太字フレーズは、いつでも最初から最後まで丸ごと話す必要はありません。
状況に合わせて、マッチしたものを選んでください。
なぜ、こうしたフレーズを
使った方が良いのか?
1つ1つのことを、ハッキリさせたいからです。
ハッキリ分かっていることは
ハッキリと伝えて
ハッキリ理解してもらう。
それによって、「問題の原因がどこにあるか」も、「どんな対策をとれば良いか」もハッキリと見えてきます。
「シッカリ」を連呼するサッカー解説者の松木安太郎さんみたいになってしまいましたが……(笑)
要するに、1つ1つハッキリさせていくと、意味のあるお話ができるということです。
今回のフレーズの中で、話す時に思いっきり太文字にして、フォントの級数を上げてほしい決めゼリフは、コチラです。
インスリンは
食事をした時に
分泌されるんです
糖質を食べた時だけ、分泌されるわけではありません。
食事をすること自体が、インスリンの分泌を促します。
ここをハッキリさせておくことが、その先に「血糖値を安定させる食事の仕方」を説明する時の重要な布石になります。
ですから、初めにガツンとクサビを打ち込んでおいてください。
クサビがピンとこなければ、本丸を落とすために、あらかじめ外堀を埋めておいてください。
あるいは、ストレートを一発かませるように、まずジャブを当てておいてください。
分かりやすく言うと、そんな感じです(笑)。
本題に戻りましょう。
インスリンは、食事をした後に分泌されるホルモンです。
実際には、食事に関係なくいつでもわずかな量は分泌されています(基礎分泌)。
それに加えて、食事をした後にはドサッと大量に分泌される、ということです(これは追加分泌と呼ばれています)。
おおざっぱに言うと……
インスリンの分泌を一番促しやすい栄養素はやっぱり糖質。
その次がタンパク質、その次が脂質という順番です。
食事をした時、なぜインスリンが分泌されるのか?
その理屈も知っておいた方がいいですね。
インスリンの分泌を促すメカニズムは3種類あります。
メカニズム 1
血糖値の上昇
血糖値の動きはいつでもモニタリングされていて、脳(の視床下部)やすい臓が「血糖値が上がった!」と気づくと、インスリンの分泌が促されます。
血糖値の上昇に直接かかわっているのは糖質なので、このルートでのインスリン分泌では、糖質の影響が圧倒的に大きいです。
メカニズム 2
副交感神経による刺激
食事をしている時は、五感を通して「おいしい刺激」が、脳に続々と届けられます。
それによって脳は、「あっ!今、食事をしているんだな」と気づきます。
気づいた脳は何をするかというと……
副交感神経を通して、「食後にマッチしたアクションを起こしなさい」といろいろな臓器に指示を送ります。
その副交感神経の作用の一環として、インスリンの分泌も促されているのです。
このメカニズムでは、糖質もタンパク質も脂質も関係ありません。
食事をすること自体がインスリンの分泌を促すことになります。
メカニズム 3
インスリンの分泌を促すホルモン
食事をした時には、胃や腸からインクレチンというホルモンが分泌されます。このホルモンにも、インスリンの分泌を促す作用があります。
インクレチンの分泌を促す分子はたくさんあり、その中にはアミン酸や脂肪酸も含まれます。そのため、タンパク質や脂質も、インスリン分泌量を増やすことにつながるのです。
実際にお話ししている場面を
シミュレートしてみましょう。
基本的な流れは、こんな感じ。
実際には、メカニズムを詳しく説明する必要がないケースも多いでしょう。
決めゼリフを言い忘れると、グダグダになります。
自分ではうまく話せているつもりでも、メリハリがついていないと、上のケースと一緒になってしまいます。
ジャブがちゃんと当たっているか、様子を確認してくださいね。
効いてないようなら、仕切り直しをしましょう。
大事なことなので
もう一度確認しておきますが
インスリンは食事をした時に
分泌されるんですよ
今度こそ、念入に、大文字+太文字でお願いします。