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2021年2月の記事一覧
『さよなら未来』(若林恵著)
『さよなら未来』は、『WIRED』日本版前編集長の若林恵さんのコラム集だ。最初はサブカル本だと思って注文したものの、実際はすぐれた社会学・哲学の論考で、そして仕事論でもあった。
日本の社会では、財産であったはずのものが社会変革の邪魔者になりつつあるように感じる。例えばドローンを使った配送技術は、日本では「車」の代わりにしかならない。一方、道路が整備されていない国では、ドローンは「車」と「道路」の
「涙の行方」チャットモンチー
チャットモンチーは高校時代にめちゃくちゃ聴いていた。自分史における数少ない「青春」の一要素なのかもしれない。『告白』の不健康さに熱狂し、『YOU MORE』の明るさに胸を震わせ、ドラマーの脱退に驚愕し、二人体制の噂を聴いてもっと驚愕し、つまりは“バンドストーリー”のド真ん中にいた。
「涙の行方」は、三人体制最後のアルバムとなった『YOU MORE』に収録された一曲だ。サウンドはレゲエ調で、歌詞は
『カリスマ』(黒沢清監督)
「世界の法則を回復せよ」という、謎めいた言葉で物語は始まる。人質を抱えた犯人から、説得を試みる刑事役の役所広司に、言葉の書かれたメモが渡される。あっけなく、人質と犯人はともに死に、役所広司は謹慎のような形で休暇を命じられ、森にやってくる。そして、森に生える一本の木「カリスマ」を巡る騒動に巻き込まれていく。
今更「カリスマ」を見た。大学時代あんなに時間があったのだから、もっと映画を見ておけばよかっ
『きみの鳥はうたえる』(三宅唱監督)
最近、家でお酒を飲むことが増えた。缶ビールの苦味がくちびるに当たる瞬間、閉店時間前にシャッターを下ろしてしまったときのような罪悪感が芽生える。アルコールに酔うのは、その罪悪感から目を背けるためなのかもしれない。
楽しくお酒を飲むことの何がいけないのか、そんな映画だった。主人公たちは仕事もいい加減に酒を楽しみ、遊びまくる。酔うこととはつまり青春ということで、そこには楽しさと残酷さが同居している。人