見出し画像

『さよなら未来』(若林恵著)

『さよなら未来』は、『WIRED』日本版前編集長の若林恵さんのコラム集だ。最初はサブカル本だと思って注文したものの、実際はすぐれた社会学・哲学の論考で、そして仕事論でもあった。



日本の社会では、財産であったはずのものが社会変革の邪魔者になりつつあるように感じる。例えばドローンを使った配送技術は、日本では「車」の代わりにしかならない。一方、道路が整備されていない国では、ドローンは「車」と「道路」の代わりになる。ドローン技術が配送の効率化を実現すると仮定すれば、「道路」は効率化の阻害要因になる。日本は「道路」が、とても整備されているように思う。



例えば音楽業界ではインターネットとサブスクリプションが聴き方を大きく変革させたように、業界の構造というものは時代によって変化する。「変革」は「民主化」とも言えて、メガヒットが巨大な利益を生み出すことは難しくなるが、宅録の中学生でも世界に音楽を発信できるようになる。



業界の構造は時代によって変化し続けるが、大事なことは常に同じで、良い作品を作り続けるしかない。良い作品に必要な条件は人によってさまざまあるのだろうが、私は「歴史」を踏襲していて「新しい解釈」がされていることだと思う。そして『さよなら未来』で挙げられている条件、それは「勇気」だった。



AIの話題を目にするたびに気分が重くなる。大学卒業後は営業職とやらにしがみついているが、そう長く続くものでは無いように思う。「未来」とは、つまり「現在」であり「過去」であり、何かが大きく変わるのではなくて、ただただ精錬されていくだけなのではないだろうか。ゆっくりと、静かになっていけばいい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?