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「シビル・ウォー アメリカ最期の日」:アメリカに内戦が起こったらどうなったかを描くリアル戦争劇。ラストのバトル部分より、前半部の状況が分からないことが結構リアル。。

<あらすじ>
連邦政府から19もの州が離脱したアメリカ。テキサスとカリフォルニアの同盟からなる“西部勢力”と政府軍の間で内戦が勃発し、各地で激しい武力衝突が繰り広げられていた。“国民の皆さん、我々は歴史的勝利に近づいている……”。就任 “3期目”に突入した権威主義的な大統領は、テレビ演説で力強く訴えるが、首都ワシントンD.C.の陥落は目前に迫っていた。ニューヨークに滞在するジャーナリスト4人は、14ヵ月もの間、一度も取材を受けていない大統領への単独インタビューを行うため、ホワイトハウスへ向かう。だが彼らは、戦場と化した道を進むにつれて、内戦の恐怖と狂気に呑み込まれていく。

KINENOTEより

評価:★★★★
(五段階評価:★が星1つ、☆が星半分、★★★★★が最高、☆が最低)

日本の約三倍である人口3.3億人を抱えるアメリカ合衆国。アメリカが世界最大の移民大国であることは、その成り立ちを含めて、同盟国である日本は今も昔も内情をよく理解していると思いますが、18世紀後半のイギリスからの独立戦争以後は領地周辺での対外的な大きな戦争はなく、内戦に関してもアメリカを二分した南北戦争(1861年~1865年)以降、100年以上大きな戦火に巻き込まれることもなく、こうした地理的な状況が2度の世界大戦にも大きく巻き込まれなく、世界一級の大国として発展してきた要因でもあります。しかし、今年(2025年)に2度目の政権を担うことになったトランプが、前政権の末期でワシントンで起きた大規模なデモ抗争が起こったことが記憶に新しいように、様々な人種・イデオロギーの人間が集っていることは、本作のようにいつ戦火が起こるのかということも可能性してなきもあらずなところが、本作の妙なリアル感を浮き彫りにしている要因であるように思ったりもします。

本作で目が向くのは、どうしてもラストのホワイトハウスでのリアルな戦闘シーンだと思うのですが、過去の映像作品を振り返っても、例えば、「ホワイトハウス・ダウン」(2013年)や「エンド・オブ・ホワイトハウス」(2013年)のように、アクション映画の枠組みでたくさん戦火に巻き込まれている(笑)ので、新鮮味という意味ではちょっと薄いかなと思います。僕がそこよりリアルに感じたのは、映画前半の戦線がどのようになっているかどうかが一般国民には分からないところ。日本も太平洋戦争時に情報統制が行われていたり、今起こっているウクライナ戦争などにおいても、両国の兵士(今は北朝鮮兵士も含まれていると思いますが)や国民に死者・負傷者も含めてたくさんいるように思うのですが、イスラエルで起こっている悲劇と違い、映像としてなかなかこないので、僕が感じるような戦争の悲劇的な部分がリアルに感じられません。それと同じような文脈で、大枠は何が起こっていることは分かる(観客は予告編でだいたい知っている)けど、細かいところで何が起こっていることが分からないことが、逆に当事者にとっては不安に感じる。日本では地震などの災害で、報道で大きな被害が起こっていることは何となく分かるけど、当事者(被災者)にとっては、自分の周りでどのような状況になっているかが分からないこととよく似ていると思います。

この訳わからなさが、その細かい状況を伝える的立場にいるジャーナリストの視点(それに、学生上がりなような若いジャーナリストがいるのもいい)で描かれることも象徴的になっていると思います。ナチスドイツがユダヤ人たちに六芒星である「ダビデの星」をマーキングさせたように、人は傍目で観ただけでは、どんな思想信条で動いているのかが分からない。それが内戦のように国内で分断が起こっているときに、隣人が何を思って、どちらの側についているかが分からないことの恐怖が作品内の様々なシーンで象徴されています。これが中世なら、一人の力が弱いので集団化することがある程度傍目の判断ができるのですが、銃火器が発達した今の世界では、極端な話一人や少人数でも残虐的な行為ができたりするので、それが一層の恐怖を引き起こさせたりします。やっぱり、どんな妖怪よりも人のほうが怖いのです。。

<鑑賞劇場>TOHOシネマズくずはモールにて


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