見出し画像

夕暮れの線路に立って【想像していなかった未来】

想像していなかった未来。

私にとっては、そもそも今生きていることが想像していなかった未来かもしれない。

子どもの頃、私は小説家になりたくて、毎日小説を書いて暮らしていた。狂ったようにワープロを叩いて物語を紡ぎ、架空の人物に命を吹き込むことに無上の喜びを感じていた。

あの頃の私は、小説家以外の人生など考えられなかった。むしろ、小説家になれないような未来は望んでいなかった。無理ならいっそこの世界から消えてしまいたいとさえ思っていた。14歳という多感な時期に、私は自分の将来を成功か死か、その二択でしか捉えることができなかったのだ。

そんな私が、小説家とは全く違う道を歩んでいる。この年齢まで生きていること自体、非常に予想外だ。14歳の私が今の私を見たら、きっと目を丸くしてこう言うだろう。「何で生きてるの? 何やってるの?」と。

……ええ、一体私は何をしているのでしょうね。

あの頃の夢を叶えることはできなかったけれど、今の私の人生は決してつまらなくはない。むしろ、子どもの頃と比べて自由に楽しみ、毎日喜びを見つけて生きている。

それでも時々、子どもの頃に書いたプロットノートを引っ張り出してきては、当時の自分に問いかけることがある。「今なら、この物語を書けるだろうか?」と。

かつて、書いてはみたが、我ながら人生経験から来る深みに欠けると判断し、没にした作品がいくつかあるのだ。

大人になった今の私には、あの頃にはなかった経験や知識がある。複雑な人間関係や社会の矛盾、そして、喜びや悲しみ、怒りや絶望といった、様々な感情の機微を理解できるようになった。

しかし、同時にこうも思うのだ。「今、この物語を書く必要があるのだろうか?」「本当に、書きたいと思っているのだろうか?」と。

大人になるにつれて、私はいつの間にか「書くこと」から距離を置いてしまっていた。それは、自分を守るための、ある種の防衛本能だったのかもしれない。

小説を書くということは、自分の内面をさらけ出す行為だ。喜びも苦しみも、希望も絶望も、ありのままの自分を描き出すためには、とてつもないエネルギーが必要となる。

傷つくことを恐れ、自分の弱さを認めたくない一心で、私は無意識のうちに「書くこと」から逃げていたのかもしれない。

皮肉なことに、私は大人になってからも、一分一秒を……小説を書くための経験として考えている節がある。

私が考えること、感じることのすべては、いつか小説に活かすためにある。そう思って、私は常に周囲を観察し、自分自身と向き合っている。

意識的な行為ではない。
もう私の人格のベースに組み込まれてしまい、止められないのだ。誰かが変なことを言いだして私の目がキラキラし始めたら、もう観察・収集モードに入っている。結果は気にしていない。

そこに私自身の幸せがあるのかどうかは分からない。

かといって、小説家として華々しくデビューしたいという気持ちはもうない。

冷静に考えてみれば、もし私が小説家として成功を収めたとしても、それはそれで大変な苦労が待っているだろう。編集者の意向を汲み、読者の期待に応えようとすれば、自分の書きたいものが書けなくなるかもしれない。

印税は安い。
10割自分で書いた文章を売るのに、ほとんど1割も報酬を貰えない。

ブラックなエンジニア業界も真っ青である。だったらネットでCtoCをやっている方がずっと良い。

……そんなわけで、小説だけで生活なんて夢のまた夢だし、仮に人気作家になれたとしても、作品に対する心無い批判や、無情なコンテンツ展開、やっかみなどの苦しみから逃れることはできないだろう。

物事には、何事も良い面と悪い面があるのだ。

思えば、子どもの頃に抱いていた夢は、あまりにも無邪気で、現実を分かっていなかったのかもしれない。

今はただ、自分のペースで、書きたいときに、書きたいものを書けばいい。

嬉しいことに、私の拙い文章を楽しみにしてくれている人たちもいる。それだけで十分幸せなことだと思えるようになった。

さて、皆さんにも、そんな経験はありませんか?

子どもの頃の自分に驚かれるような、想像もしていなかった未来を生きていませんか?

たまには過去を振り返り、自分がどこまで歩いてきたのか、そしてこれからどこへ向かおうとしているのか、改めて考えてみるのも良いかもしれませんね。


最後までお読みいただきありがとうございます! 良かったらスキ/フォローお待ちしてます。あなたにいいことがありますように!

#YeKu #エッセイ #過去 #未来 #夢 #小説 #創作 #人生 #自分探し #成長 #ノスタルジー #心の声 #あの頃 #大人になるということ #幸せ #現実 #想像していなかった未来


いいなと思ったら応援しよう!

YeKu@エッセイとか書いてる
最後までお読みいただき、ありがとうございます! あなたのあたたかい応援が励みです😊