未来はどう変わるのか？「流れとかたち」から考える未来のデザイン

「VUCAの世の中なので、未来は予測できません…」

こんな話をよく耳にします。VUCA（ブーカ）とは、Volatility（変動性・不安定さ）、Uncertainty（不確実性・不確定さ）、Complexity（複雑性）、Ambiguity（曖昧性・不明確さ）という4つの頭文字から取った言葉。先行きが読めないことを表現するときによく見聞きします。

確かにその通りですが、それでも我々は生きていかなければなりません。そんな中、勇気をもらえる本に出会いました。「流れとかたち」という本。

自然科学のコーナーで見つけたのですが、ビジネスにも応用可能な気づきを与えてくれる、不確実な未来に勇気と指針を与えてくれる一冊です。

この本の魅力をご紹介します。

流れとかたち

著者エイドリアン・ベジャンは万物のデザインを支配する物理法則の存在を確信。「コンストラクタル法則」と名付けました。この法則は生物のみならず、無生物にも適応される。

この本の冒頭で、シベリアにある川の航空写真と、人間の肺の血流の写真が登場します。この二枚の写真、実はとても酷似しています。それはなぜか？一方は大地の形、もう一方は人間の体内。共通点がないようなこの二つがなぜ似ているのか？

興味をそそられる導入ですね。偶然の一致かと思われていたこうした事象に一つの法則を見出したのが本書です。ぐいぐい引き込んで来るストーリーテリングも良いです。

万物を説明するコンストラクタル法則とは

この本では、生物・無生物を問わず、すべてのかたちの進化は、「コンストラクタル法則」で説明できると説きます。初めて知る法則ですが、説明を聞くとなるほどと、スッと理解できます。

物事の全ては「流動系」であると考える。どのような形であれば最も効率よく中身を運ぶことが出来るのかと考える。その効率が最適化された形がデザインである。

実は川と肺の血管は同じ理屈で成り立っています。「より遠くに効率よく中身を運ぶ」。だから同じデザインになる。

「なるほどね」と軽い腹落ち感がありますが、この本はその先がスゴイです。一旦この法則が生まれると、地形だろうと生き物だろうと地球上にある、ありとあらゆる事柄に対して未来予測が可能と言いいます。

生命と非生命の比較も可能、歴史や社会制度、スポーツに都市計画、会社組織からデジタル化された情報の流れまで、あらゆる分野に適用可能と説きます。

例えば、なぜ短距離走の世界選手権で優勝するのは黒人ばかりで、逆に水泳では白人が優勝するのか？これもこの法則で説明可能。このくだりは読み物としてすごく面白いです。

なぜ鳥や魚は今のような形をしているのか、などなど。話の展開が幅広く、読みものとしても飽きない内容です。

進化の方向性

この書籍が一気通関する考え方は「物事はよりスムーズに流れる方向に進化する」という事です。

思えばクルマのカタチは年々より流線型になってます。空気抵抗を減らすと必然的にそうなる。開発途中のリニア新幹線のカタチはまさにそう。必然のデザインです。

より抵抗のないように物事は変化する。それを進化と呼ぶ。そして、「生きる」とは変化し続けること。進化し続けるということ。つまり、我々はより抵抗のない方向に進むのです。

「デザイン」とはその進化の過程で生まれた必然のカタチという事。よく「機能美」という言葉を聞きますが、自然の摂理を考えると、あって然るべき形状に行き着くのだと思います。

そして最終章では、同法則を用いた人間社会の未来予測が展開されます。物事が抵抗なくスムーズに流れる方向に進化する。こう考えると、さまざまなビジネスの未来のカタチを考えるヒントになるのではいでしょうか。

まとめ

未来予測が難しいと言われる今、物事を流動系と捉えると「より抵抗の少ないスムーズな方向に進化する」というコンストラクタル法則は、未来のカタチを考える指標になります。

この法則は工学の範疇に留まらず、生態系、社会学、経済、文化、教育まで広範囲に応用可能です。

この本の真意を理解すると、今の世の中に何が求められているのか、この先はどうなっていくのかが朧げながらに想像できます。

「次世代◯◯のカタチとは？」、「持続可能な社会の構築はどうあるべきか？」などの問いに対して、仮説を立てるヒントになるのではないでしょうか。

そして大切なのは「未来に目を向ける」という視点を持つこと。「流れとかたち」はそれを自然に促してくれるとても価値ある一冊だと言えます。

この書籍は「変わり続けなさい」と語りかけてきます。進化とは変わり続けること。淡々とした文章ながらも、変わる事を恐れずに進化していこうと思えます。熱い気持ちが芽生えてくる人生の応援本だと思います。

未来に視線を向けて、ワクワクしながら進化し続けられたらいいですね。

最後までお読み頂きありがとうございました。