本の棚 #52 『四季 春』
『四季 春』
森博嗣
天才なる者の魅力とは
いつだって人間を惹きつける。
努力の積み重ねのうえで天才と言われる
そういう類のものではなく
絶対的な知能スペックを持つ天才
真賀田四季(マガタシキ)
3歳のときには父親の書斎にある本を読み漁り
辞書をみつけた際には
「このような書物があることは予想してました」
つまり言葉の意味をまとめた書物があることは
前から予想していたということ。3歳で。
そして四季は文字を書かない、理由は
「今は、私の手は、とても文字が書けるような耐久性を持っていません…思考の記録をもっと迅速に行うようなシステムがあれば、嬉しいのですが」
はい、このとき5歳であります。
本は頭の中にスキャンできるだけでなく
それらの頭脳内データは常に検索可能という
チートな設定にすぐに魅了されてしまう。
けどこの能力をもつ人はいるだろうな、とも思う。
そんな四季が透明人間の栗本其志雄と出会う。
透明?うそだろ?
そんな疑いを持ちながら読み進めるなか…
不可解な殺人事件が発生するのだ。
天才と透明の事件への関わり方や如何に。
残像のような、影のような、実体からはるかに遅れたものを、僕たちは彼女だと勘違いしているような気がする。
ときどき彼女の呟きを聞いて、僕がそれに反応しても、言葉にしたときには、もう彼女はそこにいない。
天才がゆえのまわりとの時差
物質的には時間、空間を共にしているのに
精神、思考の世界で交わることは刹那的
天才じゃなくてよかったと、心底思える。
けど、この孤高な感じが、冷たい感じが
やっぱり魅力的にみえるんだ。
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