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夜兎烏 Night Rabbit Crow
2020年7月19日 22:58
手頃なキノコを傘がわりに、少女は食料を求めて歩きだす。 周囲には見るからに毒々しいキノコもあれば、一見地味な見た目のものもあった。 ふと丸いキノコが目に留まる。「じーっ」 それは慣れ親しんだキノコに似ていた。「これ、見たことあるわ! シャンピニオンね!」 少女は未知のキノコに手を伸ばした。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 140字小説です。 Tw
2020年7月20日 20:24
雨上がりの澄んだ空気の中、少女はキノコを食べながら歩く。「モグモグーー?」 卵の殻のようなものから生えたキノコの影に何か動くものが見えた。「動物かしら?」 ジッと目をこらすと、どうやらそれは二足歩行する小さな生物だった。「ーーお肉食べたいわね」 生物は少女に気付くと一目散に逃げ出した。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 140字小説です。 Twit
2020年7月22日 07:04
少女は重い鞄を抱えて走った。「ちょっとまって!」 逃げる背中を追うが、見失ってしまった。 息を吐く少女の耳に話し声のようなものが聞こえて来る。 少女は目が冴えるような青いキノコの影から声の方向をそっと様子を伺う。 そこには色違いの生物の集団がいた。 少女は思わず唾を飲み込む。「増えてる!」ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 140字小説です。 Tw
2020年7月23日 06:45
「巨人だー‼︎」 小さな生物は、少女に気付くとガクガクと震え出す。「ーーお肉が、喋った⁉︎」 少女は今更ながらその生物がこの世界の住人である可能性に思い至る。 なおも震える生物の警戒を解こうと少女は鞄からキノコを手渡す。「よかったら、食べる?」 生物は恐る恐る受けとる。「あなたが神か?」ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 140字小説です。 Tw
2020年7月24日 14:52
「このあたりにホテルはないかしら?」 渡したキノコに小躍りしていたお肉ーーもとい小人達は、少女の問いかけに応える。「うちくる?」 小人達は大きなキノコに少女を座らせる。「キノコでひとっとび!」 ひとっとび? 少女は嫌な予感がした。 小人の一人が小さなキノコを押す。 少女はキノコと空へ飛んだ。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー140字小説です。 T
2020年7月25日 19:00
「おそらあおい」 自由落下の最中にもかかわらず少女はそれまでの人生を振り返る余裕すらあった。ーー走馬灯だった。「これ着地どうするの⁉︎」 はたして声は届いたのか、小人の一人が感情の読めない笑顔を見せる。「神様なら大丈夫ーーたぶん?」 神様なら?ーーそれだめじゃない? 少女は意識を失った。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 140字小説です。 Twit
2020年7月27日 19:06
「ここがあなた達のお家なの?」 質問に小人はボソッと応える。「飛びすぎ?」 小人はキノコの生えた同胞を横目に移動する。 辿り着いた場所には、キノコをくりぬいたような住居があった。「憧れのマイホーム!」 キラキラした笑顔の小人だが、少女には小さすぎた。「素敵なお家ね!」 少女は空気を読んだ。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 140字小説です。
2020年7月28日 18:15
「そろそろ行くわ」 少女の言葉に小人は寂しげな表情を見せた。 小人は少女の手を引きとあるキノコの前へ連れていく。 そこでは蛹がちょうど羽化し、巨大な蝶が翅を広げていた。「綺麗ね」 思わずこぼれた少女の言葉に。「乗ってく?」 小人は蝶を示す。「やめておくわ」 蝶は少女を掴むと空へ舞い上がった。ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 140字小説です。