戦略のための外部環境分析は、宇宙の彼方まで
長沼 伸一郎『世界史の構造的理解 現代の「見えない皇帝」と日本の武器』に日本が世界で影響力を持つために進むべき方向性が示されている。
結論、「知的制海権」なるものが重要とのことだが、この概念については比較的に抽象的な説明なので、正直あまりわからない。
以下が、本書の中で一番ポイントをついている記述かもしれない。
人類の思想を動かす力をバックにしていなければ最終的には勝つことはできないのである。それはいわば知的制海権とでも呼ぶべきものであり、実際にそこを制するには結局は物理学の宇宙観までを含む学問の世界の覇権が必要で、政治家や企業などの「陸側」の勢力や文系の頭脳だけでは手に負えないものなのである。
「物理学の宇宙観までを含む学問の世界の覇権」というのが鍵になりそうだ。著者は本書の中で、「理系的学問」の重要性を繰り返している。
さて、ここからは、自分なりに国家レベルでの戦略について考えてみたい。
そもそも、何かしらに戦略を立てようとするなら、①目的・目標設定、②外部環境分析、把握、③内部環境分析、把握をして、目標の達成を目指す計画を立てる。そして、それを実行し、調整していくということの繰り返しになる。
そもそも、日本(に限らずだが)は、①の目的や目標設定はどうなっているのか?
これは、前に書いたことがあるが、「我々の範囲」と「時間軸」によって大きく変わる。「我々」は日本人だけなのか?アジアなのか?世界中の人間だけか?或いは、動植物なども含むのか?環境も含むのか?はたまた、一党独裁している10人だけなのか?
また、時間軸も、自分たちが生きているであろう50年以内なのか、或いは100年か、千年なのか?
その辺りは、大人数で正当性をもって決める方法によって、制限されるのだろう。
また、哲学的な原理として考えれば、自由の相互承認が最も大勢の共通了解を得やすい目標設定を提示している。
では、②の外部環境の分析はどうか?
今の国家レベルや企業レベルの戦略は、この<世界>がどうなっているかについて、一定の言語的な把握がなされているのだろうか?
国家レベル、世界的な大企業はしらないが、一般的な企業は、目の前の半径○○KMくらいの世界しかみていないのではないか。
我々が住んでいる土地や、地球、さらには宇宙の彼方がどうなっているのか?
物理的な世界の記述では、存在の謎を解くことができないことはカントが看破しているが、それでも極限までこの世界の構造を探求し、それがどういうものか言語化することは、この世界で戦略を立てる上で有益だろう。
たしかに、本当に強い戦略はそこから生まれるだろう。
グーグルという企業が強いのも西洋哲学の考え方があるからだと思う。
「知」とは何かということがギリシャ時代から徹底議論されている。
フッサールなど含めて、できるだけ厳密にこの世の概念を体系的に整理しようとする試みは多くされている。
だから、Googleはそういう知、情報の整理というと、表には出ていないどでかいビジョンがあるのではないだろうか。
教養のない人が「情報の整理」といえば、せいぜいパソコンにある情報とか、図書館の本をデジタル化するくらいの発想しかでてこないだろう。
<世界>を(人類がなんとか理解しているような)宇宙やミクロの限界まで把握している場合、知や情報の整理という意味合いが全く異なってくるだろう。
リクルートの人材サービスのビジョンが、「1秒で仕事に就ける世界がつくれるまで」というのが彼らの強みかもしれない。これだけ難題を設定しておけば、現状に満足せず次々と施策を打てるからだ。
逆にいうともっと大きなビジョンを掲げれば、もっと大きな企業が生まれるかもしれない。
国が戦略を立てるなら、理系的な視点で世界を隅々まで定義した上で、計画をすれば、超長期的な視点で、ブレない施策を次々と打てるようになるだろう。実際、強い国はそうしているように見える。
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