アバクロ復活のためのマーケティング戦略とは
2000年中ごろ、アメリカのビジネススクールのマーケティングの授業で「アバクロ」は性的なアピールを前面に押し出した強力なブランドの一つとしてケーススタディでも扱われていました。
当時は人種的な差別に対しての問題がニュースで取り上げられたりもしていましたが、それでもアジア人旅行者がシッピングバックにたくさん買い込んで歩いているのを空港でよく見かけたりしました。
しかし、その後、多くのスキャンダルが問題となり2016年にはアメリカで「もっとも嫌いな小売ブランド」に選ばれたりもしました。「時代遅れ」「高価格」「差別的」というイメージが定着してしまいました。
そんなアバクロですが、2023年以降復活を遂げているそうです。
23年にアバクロの株価は285%高騰し、23年10月末期の売上は40億3000万ドル(5843億5000万円)と前年比10%増となったそうです。
復活の要因は19年以降の徹底したマーケティング戦略の変更にあるそうです。
では、いくつかの記事を元に戦略変更のポイントを見てみます。
ターゲットの変更
これまでのターゲット顧客層は高校生から大学生の10代~20代でした。これを20代後半~というミレニアム世代の最後の年齢層に切り替えました。
この世代はアバクロを10代の頃に着た最後の世代といえます。
20代後半といえばアバクロに対して馴染みやなつかしさもありますが、10年前とはライフスタイルも経済面も変わっています。キャリアとしてはこれから本格的に成功への道を歩む世代ですが、成功の定義がこれまでの世代と異なります。仕事にプライベートに派手に着飾るのではなくワークライフバランスを重視した世代と言えるでしょう。
彼らをターゲットにした場合にマーケティングミックス(4P)も当然抜本的に替えなくてはなりません。
Product
これまでのアバクロのイメージのローライズのジーンズ、ロゴが目立つ、ムキムキ体型に合わせたサイズ展開でしたが、ここからより洗練されバランスのとれたライフスタイル、職場にも着れる服装やドレスを商品ラインに持ち、これまで限定的なサイズしかなかったものから多様なサイズへと展開しています。
Price
ファッションにお金をかけすぎないが安っぽくない中価格帯に価格を設定しました。リーマンショックを経て金銭的にもシビアな感覚も持ちつつプライベートのゆっくりとした時間も大切にする世代に合わせた価格設定です。
Place
以前のアバクロの店舗は近づいただけで強い香水匂いがし、ムキムキの裸のショーウィンドーが強い印象を残すものでした。現在は、そうのような店舗演出は控えて快適さを重視しています。また、コロナ禍ではオンライン販売が売上を支えたそうです。
Promotion
SNSマーケティングも積極的に行っています。
Tiktokでは「#AbercrombieIsBack」がトレンド入りするなど、人気商品の認知向上のための手法として活用するとしています。
以上のようにターゲットを変更し、それに合わせた一貫性のある4Pを構築しています。
創業130年の歴史あるブランドですが、起伏が激しくイメージを歴史の中でよく変更してきたようです。ブランドイメージを躊躇なく変化できるところが最も強みなのかもしれません。
アメリカ的な面白いブランドとして注目に値すると思います。
参考記事はこちらです。
最後までお読みいただきありがとうございます。