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「自分は何も分かってない」という情熱の世界がある。

社会人になって間もなく、日本酒好きの父親の影響もあり、ぼくは日本酒というお酒が好きになった。

日本酒が好きになった頃は、『真澄』『菊姫』『大七』など、とってもメジャーで、その頃住んでた近所のスーパーで簡単に手に入る「ザ・日本酒」と言える銘柄ばかり飲んでいた。

日本酒のことなんて、全然分かってなかった。

どんな酒屋さんに行けば素晴らしいお酒を求めることができて、どんなお店に行けば素晴らしい日本酒を楽しめるのか、全然分かってなかった。

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「生酛」「山廃」「無濾過」「原酒」。。日本酒のラベル表示には、パッと見て何のこっちゃ分からないワードが溢れている。

日本酒は、口に含むとこんなに美味しいのに自分は全然日本酒のことが分かってない。まずは手始めに、普段飲んでいる上記銘柄の「生酛」や「山廃」の意味くらい押さえてみよう。

そんな軽い気持ちで本屋さんで日本酒の教科書を買って勉強した。

そこには驚愕の事実が沢山あって、素晴らしき旨みを表現してくれる日本酒は、なんとお米と水と微生物(麹菌、酵母など)だけで出来てるって。。

ワインの品質がその年に取れたブドウの品質に大きく左右される一方、日本酒の品質は造り手の技に左右されるって。。

その土地の気候と水で「お米」をどれだけ表現できるかだって。。

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何だ、自分はこんなに素晴らしい日本文化のこと何も分かってない。

自分の足元のこと、全然分かってない。

そこからは、誰に頼まれるでもなく、誰の目を気にすることもなく、日本酒を勉強した。

立ち飲み屋に足を運んで日本酒のこと教えてもらい、酒蔵に行って日本酒造りの設備を見せてもらった。試飲できる機会があれば一通り飲ませてもらった。

その度に、自分がどれだけ日本酒のことを分かってないかを理解させてもらった。

そのことがたまらなく嬉しかった。

まだまだ飲んだことのない銘柄が沢山あるんだって。日本酒という、こんな素敵な世界にまだまだ知らないことが沢山あるんだって。

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そこからまた日本酒を勉強した。

誰に頼まれるでもなく、誰に話すでもなく。

純粋に自分の興味を追求したくて、自分の探究心を満たしたくて勉強した。

勉強したことを客観的な形にしたい。ある日ふとそう思って、「利酒師」という資格の勉強を始めた。

今の仕事とは何の関係もない資格。単に自分の好奇心を満たしたかった。その資格勉強の過程でまた知らないことに沢山出会った。

少しは分かった気になってたのに、まだまだ知らないことが沢山ある。。

これはすごい。

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自分が奥行きを感じ取れる世界において欠乏感があること、それを情熱と呼ぶんだと思う。

もっと知りたいと、訴える心に喜びを見いだせること。その状態を情熱と呼ぶんだと思う。

その源泉は、「自分は何も分かってない」という厳然たる事実。情熱は、いつもそこから生まれる。

「自分は何も分かってない」は、最高の幸せだ。

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