猛暑に耐えられない東京の食品流通【八百屋から見た“食”no.33】
もう7・8・9月の東京は生活する場じゃないなと。
夜間28-30℃・日中35-40℃・直射50℃・車両輸送50-60℃
この環境下で丸々3カ月過ごす世界観。
農産物&食品全般の流通や販売は来年以降大幅に減ると推測します。農家&製造元もそこまで(廃棄や赤伝前提で供給)しなくてもいいし、作っても収入にならない状況は経営上難しいです。
◇輸送・小売◇
ほぼすべての野菜/くだもの/農産物が「クール輸送」でないと成立しなくなりました。季節柄コメも冷蔵輸送&保管したいくらい。食品流通&農産物流通にとって大幅なハードル上昇です。水風船のように急激に膨れ育ち、温まりきって余熱残ったまま出荷&流通し、灼熱の屋外売場に陳列される状況。野菜くだものにとって猛暑下の“常温”とは、ずーーっと40℃で低温調理して(トロ火で煮詰めて)いるようなもの・ずーーっと低温のドライヤーを当てているようなものです。生育不良&選別で農家出荷時の歩留まりが悪くなるだけでなく、輸送/小売/家庭内保管ができないくらい、例年以上に食材の劣化スピードが早まり廃棄が増えます。例年1週間持つ野菜も、今夏に限っては3日持ちません。また、昨今のコスト高に加え、クール輸送費の大幅な上昇をどこまで価格転嫁できるかも悩みの種です。
誰かが作って届けて並べて初めて成立する東京の食生活。その各段階のコストが今後(これまで以上に)さらに上がることは自明です。
◇消費◇
文字にするまでもなく、調理場が暑すぎて家庭内調理の意欲が大幅に減退します。3カ月間、昼夜通してずーーっと冷房を入れ続けないと快適な生活を送れなくなりました。その生活環境下ではナマモノを扱いたくないし、買って冷蔵庫に入れても傷みます。調理後も冷蔵冷凍が必須な東京の食生活。八百屋のアドバイスとしては【(すぐ使わないモノは)買うな】としか言いようがありません。
◇働き手◇
私自身、7月の早い段階で熱中症の症状が出ました。以降、出力を落とし営業日を減らして2023年猛暑真夏期を過ごしています。「涼しい部屋で体を冷やして過ごす(寝る)」が症状軽減の唯一策。投薬も対処療法でしかありません。
めちゃくちゃ心苦しいことが起きました。8月に入り取引先や知り合いの生産者で複数名、熱中症(&体力低下に伴う合併症)で亡くなっています。日の出前に作業をする大半の農業者もクラクラになりながら作業を続ける日々。
農家だけではなく、スーパー/コンビニ/チェーン/大手/個人問わず、ヒトモノの輸送や売場や飲食店の人員も超カツカツ少人数で回しています。働き手の身の安全(危険)を優先し、営業日や時間について合理的な運営が増えました。
まとめ
猛暑期の農産物&食品流通は今後大幅に縮小しますし、すでに縮小しています。物流も出力(配送力)が落ちるでしょう。今夏の生鮮売場やコンビニの食品棚がガラガラになっているのは、廃棄ロスを少しでも回避したい思惑が見て取れますし経営上(&フードロス等の観点からも)合理的な判断です。販売価格も相当上げないと運営が難しくなる中、各事業者が工夫してどうにかして切り盛りしている2023年の猛暑。
猛暑の環境下で出来た届いた売っているだけありがたい。
猛暑の環境下で毎日/長時間/休日なく営業していると思わない。
猛暑の環境下で希望品目いつもすべて満足に揃う/定時に届くとは限らない。
昭和的な(規模拡大・人口増大・出店攻勢をベースとした)生産や物流や小売は「今後有り得ない」と普段からお伝えしています。
消費の老衰・労働の老衰が今後も続く中で、無理無茶を通した営業や働き方は、採算上&社会通念上難しいことは皆さんわかっているはずです。特に真夏はいろんな意味で“特殊”なマネジメントが早急に求められるでしょう。周囲への告知/理解もセットで。毎年の猛暑(今後も続く)は、従来の生産/流通/小売の運営経営を「ヒトの健康中心」に変えていく必要があります。今のまま(常時定時輸送の物流・常時常在の売場・常時開店する経営)は有り得ません。
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↓ 過去投稿:2023年現時点の食資源環境
↓ 過去投稿:値上げ=継続する意志表示。
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