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カルマの行方

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サラリーマン丸井和彦は平和な街"高槻市"に億劫としていた。 その丸井の前に現れた日雇い労働者宇賀はある仕事を持ちかける。                          ➖「あ…
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#大阪

第十六話 サイレンと2発の弾丸

第十六話 サイレンと2発の弾丸

「丸ちゃん、来てくれてありがとうね」
優華は手元の水割りで口を濡らして言った。
「かまへんで。俺はただこの昭和町というイカれた街を体感したかっただけや。決してお前に会いたいなどという思いは1ミクロンもないで。あっ、こりゃすまん、あんた文系か。早口やけど精神は希ガスくらい安定しとるで。あ、こりゃすまん、あんた文系か。まぁ俺のエネルギーは丸井というでかい質量と早口のスピードからきてるからなぁ。つまりE

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第十五話 茶道と水割りは紙一重

第十五話 茶道と水割りは紙一重

 「ペルセウスビル」の3階に目的の店があった。
 安っぽい扉の上には「赤い狐火」の表札がある。
 丸井は大きく2回深呼吸してから重たい扉を開けた。
 向かって左手側にカウンター、右手側にボックス席が2つ。客は誰もおらず、カウンターの中にポツンと1人女性がいた。
 女性は携帯電話を触る手を止め、こちらを見た。
 大きく見開いた目のクマは遠目でもすぐに確認できる。背負った悲しみが形となって現れたように

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第十四話 それでもコスモスは凛と咲く

第十四話 それでもコスモスは凛と咲く

 その日の夜、丸井は御堂筋線昭和町駅に居た。
 地上に上がり、松虫通りとあびこ筋が丁度交わる交差点に立った。
 ガードレールの端に小さなコスモスの花壇があった。
 「昭和町抗争」で治安悪化が進み、白昼堂々と衝突することもしばしばあった事から地元住民の1人がコスモスの花壇を設置した。
 コスモスの花言葉は「調和」。その花はたとえ散ったとしてもまた新しい苗が植えられ、数年間に渡りこの交差点で"願い"と

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第十二話 大阪のスイスは怪物に食べられました

第十二話 大阪のスイスは怪物に食べられました

 机の上のストロングゼロの空き缶はハイライトの吸い殻でいっぱいになっていた。
 丸井はしかめっ面で火をつけた。ハイライトの煙が目に入りポロリと涙が出た。
 昨晩の酒が少し残っているのか軽い頭痛がした。

午前6時に起床した丸井はオロナミンCより黄色い尿を終わらした後、会社に電話をかけ長期休暇の申請をした。
「あん?長期休暇?仕事どうすんの?え?クライアントは?あん?まぁええわ。はい。ほな。」
ガチ

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第十一話 布施駅のアスファルトは冷たい

第十一話 布施駅のアスファルトは冷たい

 会計の時、優華は丸井の前に手をかざし、万札を2枚机に出した。丸井は何も言わず、頭をペコリと下げ、先に店を出た。
 外気は酒で壊れた身体をアイシングするかのようにひんやりとした。
「丸ちゃん、今日はおおきにね。」
優華は酔いが回ったのか、おぼつかない足取りで店から出てきた。
「何をいうてんねや。こちらこそご馳走さんやで」
 丸井は酔っ払ったフリをして、優華の肩を叩いた。
 ささやかながらのボディー

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第五話 心の仮性包茎

第五話 心の仮性包茎

 彼女は丸井のすぐ横についた。カウンターに置かれた手が小さく震えている。典型的なアルコール依存症の症状だ。
 チラッと彼女と目があった。1秒にも満たない短い時間だった。
 恐らく20代後半だと思うが、綺麗な瞳の下には大きな"クマ"があり、それはファンデーションでも隠せず、瞳の大きさをより際立たせていた。何か大きな業を背負い、丸井を悲しみの奥底まで引きずり込みそうな瞳だった。
 彼女はエイヒレと瓶ビ

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第三話 シケモクは"わびさび"の骨頂

第三話 シケモクは"わびさび"の骨頂

 数分歩いてドヤ街の前の自販機に宇賀を下ろした。
 丸井は縁石に腰掛け、残り少なくなったハイライトに火をつけた。
煙はモクモクと立ち昇り、夜空に消えていった。

 「丸井、送ってくれておおきにやで」
丸井はビクッとして後ろを見た。知らぬ間に宇賀は目を覚ましていた。彼は地面に落ちているタバコの吸殻を当たり前のように拾うとフッフッとゴミを吹き落とし火をつけた。
流れるような仕草が千利休の追い求めた"

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第二話 タバコはフィルターまできっちりと

第二話 タバコはフィルターまできっちりと

タクシーが止まった。やっと目的地に着いた。精神と時の部屋かと思うほど、この1時間は長かった。
 宇賀が吐き出す吐息は2歳未満の子供ならショック死するほど臭い。
 タクシーの運転手はダッシュボードから取り出した有機溶剤作業者用の防毒マスクを装着している。
 「ここがワイの街や。震えるなぁ。ただいま、西成」
 大阪市西成区。度重なる暴動と薬物が蔓延する日本最大のスラム。酒、暴力、性が全てを支配する街。

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序章

序章

何かが焼けた臭いがする。ほんのり漂うアンモニアはラーメンの黒胡椒のように存在感がある。
寂しそうな近鉄電車から降りた乗客はパスポートを手に改札に向かう。
雑居ビルのエレベーターにはバンクシーの作品がひっそりと佇んでいる。
東大阪市をぐるんと囲んだ"壁"は人々の心より冷たいコンクリート。
壁の上の高圧電線は触れるだけでピカチュウもビックリするほどの電圧で感電させる。
壁の前に落ちた吸い殻の数は東大阪

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