今月の短歌 24年4月1日~4月15日
20年前の夜更けもそうだね 早く打つ脈、でも焦らないで
「ありがとう」言われた日々も愛の死も虫歯も全部、全部嘘だよ
一里ある淡い隙間を潜る途中少し止まってにぎわいを聞く
この風を疎く思える人もいる 甘く優しくなる蜃気楼
カーディガン羽織るくらいがちょうど良い 涙目に見る春夏秋冬
冷たさに慣れて忘れて髪の毛に色を加える 会いたいよ、世界
どこまでも幼く生きて花の雨 滲むマフラーと擦れた踵
楽しみと絶望が入り混じりまたひとつ君らしくなる夜
手の甲を見る。忘れない忘れたい忘れられないものを背負って
すっかりと刻み込まれた眉間、ああこんなに踏ん張っていたなんて
はじまりはCiaoではじまり(食事して)別れもCiaoで浅瀬は青い
スクラップアンドビルドで結果出す人間選び 果ての倒産
寝てたのか虚ろになって起きてたか 薬に支配されない夜明け
古典を知ろうと考えてはじめて奥深さ触れる「時」という、美
情報がヒトを攻撃する時代 カメルーンから謎のお便り
黄色より黄緑よりの暖かさ眠れる僕に恵みが降れば
俺は俺、「自己」を愛する俺様が照れては選ぶ黒縁眼鏡
新学期 アンプルの中空になり 待ち伏せたよに彼が現る
法事にて魂の行方教わる 死により変わる価値の変わりを
黒い夢 二度と戻らぬ柿の木へ 二人乗り時の強い包容
グライダーが乱高下 風に煽られ呼ぶ月明かり 晴れの日と舞う
きれいに飾る風景はこれからも持ち合わせずに本質を生きる
ワイパーのせいにして曇る視界を言い訳にして地獄に住まう
「いいねの嘘」と誰かが言った 本当だ、歌など誰も読んでない
ソメイヨシノは苦手です この時期はいろんな人が死にましたから
技術者を辞めて再び取るシザー動かぬ祖父を清めたように
シトラスがオゾンと混ざり雨ふわりこんな日は髪を切りたくなる
22時の安息、5時の虚無感、心拍をコントロールしてく
きれいなものを集めきれいとよぶものは花弁かヒトの心か
かつお節を削る日々の中にある目の前の感謝を噛み締める
白い日で止まっていてもまた今度とG-SHOCKの電池交換
地平線なんて見えないこの街の陽のきらめきはだらりとしてる
一過性の趣味をやめてみた卯月 開けてもいない箱がずらりと
「がんばってとは言わないで」と吹聴 そんなことない、もっと言ってよ
また今回も駄目だったよ ひとりごと ひとつふたつ 星に還してく
あなたは優しすぎるから いつもより鋭敏に走る歯髄の痛み