人の心を動かす「伝わる」チカラを子どもたちに〜鎌倉市立手広中学校の実践から①
こんにちは。F.ラボアンバサダーの高村ミチカです。小学校教員を11年経験後、現在はフリーランスライター/編集として活動をしています。元教員だからこそ、学校と学校の外側をつなぐ学びの結び目のような存在でありたい。「本物の学び」を引き出すお手伝いをしたい。そんな思いで、F.ラボアンバサダーを務めています。
F.ラボは現在、小中高大や特別支援学級の他、フリースクールや塾など20以上の教育機関と連携して、50以上のワークショップや授業プログラムを実施しています。
今回は、鎌倉市立手広中学校にお邪魔しました。プログラムは、F.ラボの中で一番人気の「非言語だけで映像表現をしよう!」です。
いつもと大きく違うのが、全校生徒約300人を対象にしていること。過去最大規模の人数でどうなるかと思ったのですが、先生方のサポートもあり、子どもたちのノリの良さもあり、事後アンケートの満足度は、なんと98.6%!
本記事では、そんな手広中学校での実践をレポートしていきます。
伝えるチカラを伝わるチカラに〜非言語表現を使いこなそう〜
比べて体感!非言語表現の特徴をインプット
まずは、体育館に集まってのインプットです。言語表現と非言語表現の違いを体感するところからスタート。
世界的にも話題となった「ウミガメの鼻からストローが出てくる」というニュースを題材に、言語表現と非言語表現を比較し、文字と言葉(言語表現)のみのアウトプットと、動画と静止画(非言語表現)のアウトプット、それぞれで伝わるメッセージにどんな違いがあるか考えていきます。
「言葉だけよりも動画の方が、記憶に残りやすい感じがする」
「非言語表現だと、言葉だけでは伝えきないことを伝えられる」
子どもたちから、そんな声が上がりました。
次に、非言語表現による表現方法の特性への理解を深めていきます。使うのは、雨を表現した4パターンの映像です。
・雨が降っていることが分かる動画
・雨が上がったことが分かる動画
・動画+効果音
・動画+効果音+音楽
同じ雨を題材にしているのに、全く印象が異なる伝わり方に!
どうしてこんな風に伝わる内容が変わるのかを考えることで、非言語表現の特性に気づくきっかけになります。
ここまでが非言語表現の特徴に関するインプット。
カントクの軽快なトークに引き込まれ、あっという間の15分間。時間としては短いですが、表現を分解してみることで、非言語表現の特徴を実感することができた濃い時間となったようです。
非言語表現だけを使った映像制作に挑戦。言語表現に頼らず、伝えたいことが「伝わる」経験を
次は、いよいよワークの時間です。
ワークは、次の「時候の挨拶」のリストから一つ選び、非言語表現だけを使って映像制作をするというもの。
よし、いざ撮影へ!
ではなく、まずはそのまま体育館で、「撮影前の構成」をグループで話し合います。これが意外と大切。
選んだ時候の挨拶から、①どこをクライマックスにするのか②どう伝えるのか③何が伝わるのかを出し合います。最初は、言葉や文字(言語表現)でも構いませんが、そのイメージを非言語表現で表すならどんな素材(動画、効果音、音楽)が必要かを考えることがポイントです。
「夏の足音ってどうやって表現しよう?」
「木陰だったら、校庭にあるあの木で撮影しようよ!」
「地面からの熱気をうまく撮れないかな」
などなど、子どもたちは自由にイメージを膨らませていきます。
漫然と撮影することがないよう、撮影前に制作する映像の大まかな流れを決めておくことが大切。また、そうすることで「こんな映像を撮りたい!」という子どもたちのワクワクも高まっていきます!
さぁ、今度こそ、いよいよ撮影です。
教室で廊下で校庭で……。
一斉に撮影へと繰り出す子どもたち。
下から上から横から。子どもたちは、色んな構図を試しながら、伝えたいことが「伝わる」表現の素材を探していきます。職員室からコップを借りたり、友だちと協力して水が滴る瞬間を狙ったり……。自然とグループで協力し合いながら試行錯誤をする姿がたくさん見られました。
撮影後は、各教室に戻って、カントクのオンライン講義です。
「編集前の構成」のポイントについて確認。
全体の流れを考えないまま編集の作業に入ってしまうと、効果(トランジションやサウンド)をつけて加工するなど、見た目の面白さに目がいきがちです。そうならないためにも、編集前に構成を話し合うことが大切なのです。
構成が決まったら、最後に編集作業に進みます。まずは、素材を選んで並べてカット。次にトランジションやサウンドなどの効果を入れていきます。編集ができたら、プレビューして修正。グループで映像を見ながら、より「伝わる」表現になるように改善をしていきます。
そうやって2コマで子どもたちが作り上げた作品がこちら。
▼映像作品紹介
A:「冷たいもの」が面白い視点で撮られています!
B: 湿気が「じんわり」としている表現に注目です!
C: 「恋しい冷たさ」を効果音にこだわって表現しています!
一方的に情報を「伝える」だけのチカラを、人の心を動かす「伝わる」チカラにアップデート
なぜ、あえて今「非言語だけを使った映像制作」を子どもたちに体験してもらうのか。
子どもたちが身近に触れるYouTubeやTikTokなどのSNS動画コンテンツの多くは、過剰なぐらいのテロップ(言語表現)が入っています。そんな表現を見慣れているせいか、子どもたちは、言語表現だけに頼って情報を詰め込んでしまいがちです。すると、受け手が考えたり想像したりする余白のない表現になってしまいます。
もちろん、目的によっては言語表現も必要です。大事なのは、それぞれの違いを理解しながら、言語表現と非言語表現を掛け合わせ相手に「伝わる」表現にしていくことです。
最後に、子どもたちの感想を幾つかご紹介します。
人の心を動かす「伝わる」チカラを子どもたちに。
それこそが、Film Educationで目指すことです。
次回の記事では、美術とFilm Educationの関係について紐解いていきます。
お楽しみに。
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