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猫たちによる、猫たちのための猫本専門店「Cat’s Meow Books」をナビゲート!
東京都世田谷区・三軒茶屋にある猫が出てくる本だけを扱う、無類の猫好きによる猫好きのための猫本専門店、「Cat’s Meow Books」。ここで働きながらのびのびと暮らす三匹の猫店員とともに、書店の運営を通じて保護猫活動の支援を行う店主の安村さんにお話をききました。
Cat’s Meow Booksではたらく猫店員さんたち
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猫本専門店「Cat’s Meow Books」の成り立ち
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猫が必ずどこかに出てくる本だけを置く猫本専門店として7年前にオープンした「Cat’s Meow Books」。まずは店主の安村さんに、猫との出会いから猫本専門店を立ち上げるきっかけについて伺いました。
「猫と一緒に暮らした最初の思い出は、小学校2年生ごろに近所で生まれた野良の子猫を引き取ったことから。エバという名前で、私が大学に進学して上京するまで兄妹のようにいつも一緒にいる存在でした。上京してからは一人暮らしでなかなか猫が飼える環境ではなかったのですが、25年くらい前に当時住んでいたマンションの中庭で毎年子猫が生まれていて、その成長の様子をいつも陰ながら見守っていました。
そんなあるとき、母猫が育児放棄をしてしまい、生まれたばかりの子猫が一匹、二匹と亡くなってしまったんです。ペット禁止のマンションだったのですが、かろうじて生きながらえていた三匹目の子猫を見過ごすことができず、その子に三郎という名前をつけて飼うことにしました。当時はインターネット黎明期で保護猫活動について知ることもなく、調べ方も分からない状況だったこともあり、死んでしまった二匹の子猫たちをどうしたら助けることができたのか、余裕ができたらそういった猫たちを助けるお手伝いがしたいと漠然と考えるようになりました」
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「いつか本屋をやりたいとは思っていたんです。だけど、ただの本屋をやっても今の時代は厳しいので、何か掛け算をしようと思って。好きなものを掛け合わせるなら猫で、どうせやるなら何か猫の役に立てる方法がないかなと色々調べるようになって、出会ったのがうちの店にも置いているコーヒーを作っている『LOVE & Co.』さんという保護猫団体さんでした。そこでは、保護猫たちをラベルにしたコーヒーを売り、その売り上げで猫たちのご飯代を稼ぐというコンセプトを打ち出していて、すぐさま『これだ!』と思いました。
うちも保護猫を看板猫にして、商品の売り上げを保護猫活動に寄付することで本屋と保護猫が助け合うという仕組みにしようと。そのアイデアを本屋業界の先輩に相談したら、選書も猫の本だけにしたほうが、お客さんとか世の中にコンセプトが伝わりやすいよとアドバイスをいただき、猫本専門店を始めることしました」
店員たちの姿から保護猫について知ってもらいたい
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保護猫たちのために保護猫と働く、そのためにも大切なのは“猫材採用”です。できるだけ引き取り手の少ない猫たちの家族になりたいとシェルターを訪れるなかで出会ったのが、りんご猫(エイズを持つ猫)でした。
「店員として猫を迎え入れるというのはそう簡単ではありませんでした。『ネコリパブリック』さんという団体に相談したところ、持病でエイズを持っている四匹の猫たちを紹介してくれました。うちとしては、子猫ではなく引き取り手の少ない老齢の猫などを探していたということ、そして店員として複数頭を引き取りたいと思っていたのでこれは願ってもいないことでした
猫エイズと聞くとどうしても偏見を持ってしまう方も多いと思うのですが、よほどのストレスをかけなければ普通に暮らしていけます。猫たちが心を許してすやすやと気持ちよさそうに居眠りしている姿をみて、『幸せそうですね』と声をかけてもらえると嬉しいです。里親を探している保護猫はまだたくさんいるのが現状なので、猫を飼ってみたいと思っている方たちに対して、保護猫との暮らしの魅力が伝わってくれたらと思っています」
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Cat’s Meow Books」では、売り上げの10%を保護猫活動を行う各団体への寄付に当て、定期的に寄付先と寄付額をSNSで公表して透明性を保っています。その仕組みやお客さまの反応について伺いました。
「利益じゃなくて売上額なんですねとはよく言われますが、本の利益なんてせいぜい2割、そこから10%といっても微々たる額になるので、1,000円の本だったら100円という感じで分かりやすさを優先しています。どんぶり勘定みたいなところもありますが、こういう形で運営しているからこそうちを選んでいただけていて、猫本以外の取り寄せも行っているので、欲しい本があるときにわざわざ利用してくださる方もいます。寄付先はあえて固定せず、そのときどきで共感できる活動をされている団体を選んで寄付しています。例えば、被災地の動物を救うために活動している日本赤十字社であったり、ガザで動物を保護する活動をされている団体など。うちを通じて保護猫の存在やそういった活動についての宣伝につながればと願っています」
ネコもニンゲンもはたらきやすい環境つくり
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オープンに際して、一念発起してマイホームを購入したという安村さん。一階を書店、二階を住居としてリノベーションし、猫たちとともに暮らしやすく、働きやすい環境作りにこだわったそうです。
「一階も二階も共通して、部屋の上部にぐるっと一周キャットウォークをつけました。猫は人間の目線よりも高いところから空間を見下ろすのが好きなので、気づくといつも登っています。ほかにも本棚の仕切りに穴を開けて自由自在に通り抜けができるようにしたり、脱走防止に店舗空間を2つに分けて、その間は格子戸にしています。あとは、店舗と自宅をつなぐ猫たち専用通路を天井に穴を開けて作ってもらいました」
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奥が深いネコ本の世界
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店内には、猫と暮らすためのガイドブックや猫が主役の絵本、写真集などいわゆる猫本はもちろんのこと、一見猫とは関係がなさそうな小説なども多く並んでいます。一文字でも“猫”が出てくれば猫本だという安村さんに、選書のこだわりについて教えてもらいました。
「作家さんのエッセイなどに猫が度々出てくると、次の新刊にも出てくるんじゃないかと期待してチェックしています。例えば、西加奈子さんの場合、猫本を書いていらっしゃる印象はあまりないですが、表紙に猫が描かれていることが多くて。普通の書店だと素通りしてしまうものも、うちに置いてあると猫好きの方の目に止まりやすかったりするんですよね。『鬼平犯科帳』シリーズで知られる池波正太郎さんも、生前猫を飼っていらっしゃって、エッセイのなかに度々猫が登場しているんです。猫というフィルターを通して、普段馴染みのない作家さんに出会うきっかけになってくれたら、本屋としてはすごく嬉しいです」
安村さんならではの目線で選ばれた、大なり小なり猫に紐づく本たち。そのバラエティに富んだ選書は猫本専門店に対する想像を超えて、多くのお客さまの心を掴んでいます。
「先日付き添いで来店された男性のお客さまは、最初猫本には興味がなさそうだったのに、猫にまつわる怪談や社会学本をまとめたコーナーを見つけるや、『こんな本屋があるんですね』と急に笑顔になられて。仏頂面で来店されたのに、帰りにはここでしか本は買いませんと言いながらご機嫌で大量に購入してくださるということがありました。趣味の合う、合わないはあると思いますが、意外な発見ができるのも猫本専門店としてやっているからなのかなと感じています」
猫本専門店として目指すネクストステップ
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オープンして7年が経ち、本屋としても保護猫活動としてもより踏み込んでアクションを起こしていきたいという安村さん。最後に今の目標について聞きました。
「一つは、同じ世田谷区で活動されている保護猫団体とコラボして、さらに一歩踏み込んだ活動のサポートを行うこと。もう一つは、うちを通じて出会った二人の作家さんによる猫の絵本を出そうと思っています。実は、猫本自体はすでに一冊出しているんです。猫歌人の仁尾智さんが愛猫を看取る前後に書かれた挽歌集なんですけど、本当に素晴らしい作品なのでこれは出版社に持ち込んで出していただきました。
挽歌ということもあって、最後まで読めないという方が多い。だからこそいつか覚悟を持って読めるときまで本棚にそっと置いておいてくださいというコンセプトにしていて、一般流通版ではできなかったのですが、うちで売っているものは特装版として帯封を意識したスリーブをつけてお渡ししています。別れの悲しみが詰まった作品なので、どうしても感情移入してしまうと思いますが、タイトルにもあるように悲しみを乗り越えた先でまた一緒に猫と暮らしたいと思えるような本として楽しんでいただけたら嬉しいです。次の絵本を皮切りに自費出版を続けていきたいと思っているので、どうぞお楽しみに」
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Cat’s Meow Books
〒154-0023 東京都世田谷区若林1-6-15
☎️03-6326-3633
Web Shop: https://catsmeowbooks.stores.jp/
Instagram: https://www.instagram.com/catsmeowbooksjp/
X: https://x.com/catsmeowbooks
スタッフクレジット:
photo:Kai Naito edit&text:Mikiko Ichitani
Produced by MCS(Magazine House Creative Studio)