温泉チャンス!その2【永石温泉】(2023.11.02)
以前「温泉チャンス!」というタイトルで、時間の隙間を使って温泉に浸かったという記事を書いた。
今日も私はわずかな時間を利用して温泉に浸かってきた。
昨夜から私の咳はますますひどくなり、咳のしすぎで頭痛や息苦しさまで感じるようになったので、今日の午前中有休を使い、病院を受診する事にした。
連休前ということもあり、病院は激混み。広い駐車場がほぼ満車になっている。外来の受付に行くと咳の症状のある人はまだ一応院内で対応していないとのことで、外のプレハブに案内される。
そのプレハブで待つこと1時間。中には椅子が3脚とテーブルがひとつあるだけでテレビもなければ音楽もかかっておらず、殺風景な事この上ない。スマホをいじるのにも飽きてきて座ったまま眠ろうとしていたところにスタッフさんが来て、インフルとコロナの検査をした。
ちょっと細めの綿棒を鼻のけっこう奥に突っ込まれ、私はくしゃみを我慢するのに必死だった。しかも鼻の奥での綿棒の滞在時間が長い長い。そんなずっと居なくてもいいんじゃないかと思ったが、私は黙ってされるがままにしていた。
検査のあと、またずいぶん待たされて、今度はお医者さんが来てくれた。そしてものすごく簡単な診察を受けた。1分程しかなかった。それで7種類もの薬を処方された。ちなみにインフルやコロナではなかった。
それから車に戻り、また長いこと待たされた。車の中で検査料や診察料、薬代などを清算し、結局病院での滞在時間は3時間程もかかった。
本当は病院が早く終われば行きたい店がいくつかあったのだが、時刻はすでに11時40分。しかし病院のすぐ近くにずっと前から行きたかった「永石温泉」というやつがあったので、わずかな時間を利用してそこへ行くことにした。
普通に車が行き交い、信号が忙しなく点滅を繰り返す五差路の角に、こんなにレトロな建物がある。そしてそれが温泉であるという事実が素晴らしい。生活のすぐ隣に、地続きに温泉が在る。
番台というのか、そこで200円だけ払って男湯の暖簾をくぐる。おじいさんが一人、高いところから斜めに差し込む光の中で体を洗っている。
おじいさんは90歳くらいだろうか、非常に動作がゆっくりで、私が入ってきた事に気づいている感じもなく、黙々と丁寧に体を洗っている。私はその傍で、かけ湯をしてから浴槽に入った。
私が湯舟に浸かっていると、私の目線と同じ高さでおじいさんの股の間にユラユラしているものがある。「あんなに長くベランベランになるのか」と私が感心しているその時に、外を大きな車が通って、風呂場の、天井の高い空間に轟音が響き渡った。
お湯の温度はちょうど良かった。足を投げ出して湯に浸かり、天井の年季の入った梁などを見ていると、とても良い気持ちになった。今がいつで、ここがどこなのかがぼんやりとよく分からなくなりそうだった。
おじいさんが体を洗い終わって、これまたゆっくり体を拭いてようやく服を着て、風呂場から出て行ったのを見計らって、私は風呂場の中を撮影した。スマホを慎重に握りしめて、素早く。誰かが入っているとさすがに撮影は憚られるのだ。
撮影を1分程で完了し、シャワーで冷水を浴びてから再びお湯に浸かった。最高だった。こんな贅沢はなかった。「今頃妻は新しい職場でたいへんかもしれない。同僚たちは今も何かしらの仕事に向かっているだろう」なんて事は微塵も考えなかった。だから良かった。
滞在したのはほんの20分程度だったが、私は心底リフレッシュできた。素晴らしい温泉体験だった。「私が求めているものはこれだろう」と、額から滲み出る汗をタオルで拭いながらしみじみと思った。