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山根公『加賀の千代女五百句』を読んで
『加賀の千代女五百句』山根公 2006. 10.1 発行 桂書房
内容
石川県白山市民が敬慕し、誇りとするふるさとの先達である、近世日本を代表する女流俳人「加賀の千代女」。彼女が詠んだ俳句作品のなかから、『北陸中日新聞』に「千代女のうた」と題して連載された句を中心に500句を紹介。
加賀千代女は、日本の俳人であり、自然や季節の美しさを詠んだ俳句で知られています。
彼女は加賀国松任(現在の白山市)で生まれ、幼い頃から俳諧を嗜んでいました。俳人として頭角を現し、その名は全国に広まりました。
一番有名な句としては「朝顔に釣瓶とられてもらひ水」があります。
千代女の作品が海を渡ったのは、1764年、徳川十代将軍家治の就任祝いのため、第十一次朝鮮通信使が日本を訪れたときです。
その際、朝鮮国王への土産物として、千代女が染筆した二十一句の俳句が献上されました。日本文学史上、このような形で俳句が海外に紹介された例は稀有であり、千代女の作品が国際的に多大な貢献をしたことは疑いありません。
千代女は嫁いで、1年半しかたたないうちに、突如として信頼する夫と死別しました。心に痛手を受けた千代女はもはや再婚する気持ちにはなれません。それよりも、ただひたむきに俳諧の道に精進したい気持ちでした。慈愛溢れる親もまた理解を持って、千代女の一途なその願いを見守りました。
もはや、千代女にとって俳諧は趣味などではなく、自分の生命を打ち込むものとなりました。
千代女は52歳の冬、髪をおろして尼となりました。「千代尼」と表記されていることがあるのはそのためです。
その時、尼の心境をこのように詠みました。
髪を結ふ手の隙あけて炬燵かな
本書では、この句は、「世の中がいやになったからというほど、私はえらい人間ではない。ただ月日の経つのが水のように早いのが、なんとなく心細くてならないため髪をおろしたのだ。千代は髪をなでつけたり結ったりするわずらわしさがなくなり、老いの身をこたつにあたって句作に専念できる」という風に解説されています。
印象に残った俳句
春風やいろいろの香をそそのかし
散れば咲けちればさきして百日紅
明日もあるに百日紅の暮れをしみ
道すがら月もまじりて月見哉
月も見て我はこの世をかしく哉
ころぶ人を笑ふてころぶ雪見哉
加賀千代女の俳句が気になった方は、以下のサイトをチェックしてみてください。
ここまでお読みいただきありがとうございました。また次の記事でお会いできたらと思います。