
藤津亮太『アニメの輪郭: 主題・作家・手法をめぐって』を読んで
『アニメの輪郭: 主題・作家・手法をめぐって』藤津亮太 2021.10.12 発行 青土社
内容
フレームに浮かび上がるアニメのかたち。『白雪姫』『サザエさん』『うる星やつら』『鋼の錬金術師』『輪るピングドラム』『パプリカ』『精霊の守り人』『シン・エヴァンゲリオン』……。アニメの描いてきたもの、描かなかったものを縦横無尽に描き出し、「アニメ」に映し出されるアニメ性を明らかにする、画期的評論。芸術総合誌「ユリイカ」に発表されたものを中心にアニメという表現の特性を考える評論を収録。
この本は、アニメの表現に興味を持つ人におすすめです。アニメの世界に新たな視点をもたらしてくれる一冊でした。
本書では、アニメ評論家である著者が「アニメの輪郭」を考察し、アニメの本質的な特性を明らかにしています。
例えば、日本のアニメはマンガを原作とすることが多いですが、その意味は時代によって異なります。
原作マンガを自由に企画素材としてアニメ化する時代から、原作をひとつの完結した世界として尊重し、原作の印象をできるだけ逸脱しないようにアニメ化する時代へとシフトしています。その背景には、テレビ業界とマンガ業界の力関係の変化があると言われています。
しかし、「原作通り」というのも少々語弊があります。基本的なストーリーは同じでも、原作のエッセンスをまとめた "シナリオ "でアニメを作るのと、マンガの特徴であるポーズやギャグ、印象的なコマ割りを積極的にアニメに取り入れるのとでは、意味が違います。
印象に残ったところ:「今敏の明晰な自意識」
故・今敏監督が、なぜイメージボードと絵コンテを分けずに一体で制作することを選んだのか。作業効率の観点から逆算した実践的な側面とともに、本章を論じています。
今敏の作品は、精微かつ想像力にあふれたビジュアルから虚実を行き来する映像のインパクトを中心に語られることも多いです。
しかし、その語り口はオーソドックスでシンプル。私自身、今敏の作品は好きなので、この章は特に印象に残り興味深かったです。
今敏は、アメリカ映画の文法を参考にしていました。映画とは物語を語ることで、アメリカ映画の文法を参考にしたということは、三幕構成を意識した作劇方法を採用したということも含まれます。
今敏の章で特に印象に残っている話
「絵に振り回されて、物語を壊されたくない。語るべきストーリーがまずあり、それを語るために絵を用いるという発想が大前提である。」(今敏)
登場人物に命を吹き込むための背骨としての設定の重要性と、全体に浸透している「構造」、そしてそれがアニメーションと実写でどのように受け止め方が違うのかが、読めば読むほど明らかになってきます。
ここまでお読みいただきありがとうございました。また次の記事でお会いできたらと思います。