スイーツ好きの里子の話
◇◇ショートショートストーリー
純喫茶「モンレーヴ(フランス語で私の夢)」の人気メニューはホットケーキです。分厚くってフワフワで、フォトジェニック、今どきのばえるスイーツなので休日には行列が出来ています。
ホットケーキの厚さはなんと5センチ。このサイズを焼き上げるにはかなりの時間がかかります。
ホットケーキを注文するとお店の人に必ず言われるのが「焼き上がりまでにお時間20分程いただきますが、よろしいでしょうか」です。もちろんほとんどの人が「ハイ」とか「大丈夫です」と答えます。
スイーツ好きの里子はそのフワフワのホットケーキを目あてによくそのカフェを訪れました。ネットで検索してその店にたどり着いた時は「幸せ」な気分になっていました。
彼女がカフェでお気に入りの席は店に入ってすぐ左手にあるアーチ形のカウンターです。そこからは商店街を行き交う人たちが見えるので彼女はマンウォッチングを楽しみながホットケーキが焼き上がるのを待つのです。
里子にはモンレーヴでのもう一つの楽しみがありました。
白いシャツに黒のエプロン姿が似合うイケメン君のウォッチングです。シンプルなコスチュームがスレンダーなボディーによく似合っていてに笑顔がとてもキュートなのです。彼は常連の女性客の人気を独占していました。
里子はモンレーヴを訪れてお気に入りの席が空いていて、イケメン君が接客してくれる日は”はなまるラッキーデー”と言っていました。
「フワフワのホットケーキ」と「眺めがいいアーチ形のカウンター席」と「イケメン君の接客」この3つが揃ったら里子の心の鐘が心地いい音を奏でるのです。
そのためならば少々行列で待たされようと何の不満もありませんでした。「これが日常の小さな幸せなんだよな、私は今日も生きてて良かったて思えるんだもん」
里子にとって「モンレーヴ」に行くことは日常の小さなご褒美でした。
ところが里子が落胆する出来事がありました。暫く忙しい日が続いていて一ヵ月ぶりにお店を訪れた時のことです。
閉ざされた入り口で彼女が目にしたのは「長年ご愛顧いただきありがとうございました、この度モンレーヴは閉店させていただくことになりました、30年間本当にありがとうございました」と言う閉店の張り紙でした。
何も知らなかった里子は、夢をもぎ取られたような気持ちになっていました。「私の日常のご褒美があっけなくなくなっちゃった、私はこれから何を楽しみにすればいいんだろう・・・」予期せぬことだったので里子は店の前で暫く立ち尽くしていました。
彼女にとってはモンレーヴが生活の張りだったのです。
里子はトボトボと商店街を歩いていました。「私のフワフワホットケーキ、私の癒しスポット、私の癒しのイケメン君、もうどれも私には無くなったのね、本当に寂しい」そう思っていた彼女の目の前に、あのイケメン君が現れました。
「こんにちは、久しぶりですね、最近来られてなかったですね、モンレーヴ店は閉めたんですよ、オーナーが念願だった海外に移住されたんです、突然だったのでびっくりされたでしょう」と優しく声を掛けてくれました。
里子は彼を見つめて頷いていました。
「僕、裏通りのコーヒー屋で働いてるんです、店の人気はふわふわのフレンチトーストです、モンレーヴのホットケーキに負けない美味しさですよ、焼き上がるまでに25分~30分お持ちいただくんですけど・・・」
里子はすかさず答えました。「あっ、何分でも大丈夫です、ところであなたはお店に毎日いらっしゃるんですか・・・」どうやらスイーツ好きの里子はの心をとらえていたのはイケメン君だったようです。
【毎日がバトル:山田家の女たち】
《あんた食べたんかね、何をかけて・・・》
イラスト制作に忙しいばあばと。
「5センチのホットケーキは見たことないね、私もホットケーキあっさりしとって好きなんよ、良かったねーイケメン君と会って、また楽しい事があらい」
「お母さん、5センチのホットケーキあるんよ」
「あんた食べたんかね、何をかけて食べるんぞねー、あんただけ食べて」
「メイプルシロップをたっぷりかけて、バターを伸ばしてシンプルに食べるんが最高なんよ」
母は何となく私を恨めしそうに見ていました。今日は手作りホットケーキを焼いてあげようと思います。
【ばあばの俳句】
手作りのホットケーキや冬めきぬ
母の好きなホットケーキを焼きました。出来立てを食べて欲しいので焼きあがったら即食卓に。母は私がいいころ合いでひっくり返すのをワクワクしながら待っています。
私たち家族の冬のスイーツタイムを詠みました。ホットケーキを焼いていると何故か心が和みます。この日は上手に焼けました。
最後までお読みいただいてありがとうございました。
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私のアルバムの中の写真から
また明日お会いしましょう。💗