屋根の上の王子さま
◇◇ショートショート
麻子は毎朝、カーテンを開けてお隣の屋根の上に向かって話しています。
「おはようございます、今日もいいお天気ですね、いつも笑顔をありがとうございます」
そこには誰もいないのですが、麻子には見えているようです。
手足が長いスレンダーな素敵な人が、にこやかに微笑んでくれているのが。
麻子は彼の事を「屋根の上の王子さま」と呼んでいます。
その王子さまは、麻子の悩みを何でも聞いてくれるのです。
「麻子さん、今日は浮かない顔をしてるけど、何か悩みでもあるんですか、麻子さんが笑顔でいないと僕は寂しいです」
そう言って屋根の上の王子さまは優しい笑顔で、麻子を励ましてくれるのです。
麻子にとって屋根の上の王子さまとお話しする時間は、とても愛おしいのです。
何となく話してるだけで、麻子の心は癒されるのです。
「今日は暖かいですね」
「麻子さん、きっといい日になりますよ」
「今日は、残業しないといけないんです」
「なら、朝日をいっぱい浴びておくと、きっとパワーが充電できますよ」
「麻子さん、僕はいつもあなたの味方ですからね」
「ありがとうございます、何だか私元気が出てきました」
さりげない会話を交わして、麻子は出掛けて行くのです。
遠い山の稜線に雪が被っている時には
「今日は寒くなりそうですよ麻子さん、暖かくして出掛けてくださいね」
「ハイ、カイロを持って出かけます」
「帰りは足元が滑るかも知れないから、気を付けてくださいね」
「ハイ、大丈夫です」
そんな会話で、麻子は不思議に癒されて出勤するのです。
麻子は学生時代から友達が少ない女の子でした。
だから人と話すのが苦手だったのです。
「あんまり楽しい事はないし、友達もいないし、つまらない毎日だなー」
と思いながら過ごしていた頃、大学に行くのが憂鬱になる時がありました。
そんな時です、麻子の家の前で子どもたちにいたずらをされている猫を見つけました。可哀そうに、いたずらっ子に石を投げられていたのです。
「ダメよ、いじめちゃ、可哀そうでしょ」麻子はそう言ってその猫をかばってあげたのです。
銀色に白が混ざった毛並みのいい猫は、青くまん丸の瞳で麻子を見つめて、彼女にすり寄ってきました。
麻子は「もう大丈夫、心配ないからね、さーお家にお帰り」そう言うと
美しい猫は、再び麻子を見つめて、お隣の庭に入って行きました。
それからしばらくしてからです。麻子が屋根の上の王子さまに出会うようになったのは。
ある朝、麻子がカーテンを開けると、屋根の上には毛並みのいい青い瞳の美しい猫が日向ぼっこをしていました。
麻子はその猫に向かって話しています。
「おはようございます、今日もいいお天気ですね」
すると、こんな声が聞こえました。
「麻子さん、今日もいい笑顔ですね、いい事がありますよきっと」
それは、屋根の上の王子さまのいつもの優しい声でした。
【毎日がバトル:山田家の女たち】
《猫も大事にしたら素敵な事があるんじゃねー》
※92歳のばあばと娘の会話です。
「私は猫好きじゃないんじゃけど、猫も大事にしたら素敵のことがあるんじゃねー」
「お母さんはどちらかと言うと犬好きよね」
「そう、私は犬好きなんよ、人は好き好きじゃけんねー」
「最近は猫好きが多いけんねー」
私は犬も猫もどちらもスキです。
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