母が思いっきり元気になった日
ある朝、母が私に言った。
「明日はお花見に行こや、お天気も暦の日にちも良さそうなけん」
前々から絶対に花見に行きたいと言っていた母の心が、いよいよ動き出したなと思った。
「あんた、明日が絶対にええよ、生きとるんじゃけん、お花見には行かないかん」母の言葉には気合が入っていた。
コロナ禍以降、ほとんど外出しなくなった母は、出かけることが少なくなって、最近は2ヶ月に一度の目の検診日くらいしか外出しなくなっていた。
そんな母が、心待ちにしていたのが花見だった。
私は母に言った。
「どこに行きたいか、何を食べたいんか決めてよ、お母さんの脚力で行ける場所で、お母さんが行きたいところ、考えてやね」
すると母は私に言った。
「あんたが連れていこうと思うところに連れて行ってや、どこでもええけん」
私は母がそう言ってもきっと不満が出るなと思い「お母さんが決めてね」と冷たく突き放した。
すると母は「ほしたら道後に行こや」と即座に目的地を提案してきた。
「お母さんが好きなホテルのイタリアンレストランで食事するんじゃね」と言うと「あそこの料理美味しいけんね、ピッツァ食べよや」と、物凄く元気な声で答えてきた。
そしてすかさず母は「後はあんたが全部決めてや」と言ってきた。
私は母の体力が心配だったので出来るだけ歩かなくていいルートを考えた。目的のイタリアンレストランまでの道中、タクシーの車窓から様々な場所の花が見られるように運転手にお願いをして、遠回りになっても桜のきれいな場所を巡ってもらった。
移動の道中、母はニコニコしながら私に言った。
「あんた、ええこと考えてくれたねー、車の中から桜が見れて本当に嬉しいわい」と大喜びだった。
車窓からの花見をした後、母はお気に入りのレストランの新メニューのハンバーグを頼んで「美味しい、美味しい」とその味を絶賛していた。
それから以前よく行っていた道後温泉の観光案内所に設置している俳句ポストに投句して大満足のようだった。
いつもはシルバーカーを持参するのだがその日は杖を2本で移動することが出来て、本当に嬉しかったようだ。
自宅に帰ってからもばあばは思いっきり元気だった。
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