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母ときつねうどん
ふと幼い頃の記憶が蘇った。熱が出て食欲がない時に、母が私の顔を覗き込みながら「何が食べたい、食べんと元気が出んけんね」と言って冷たいタオルをおでこの上に置いてくれたのを。
小学校の頃よく高熱を出していた私は、随分親を心配させたと思う。母は食欲がない私に、リンゴを擦って飲ませてくれていた。
中学生になってからは思いっきり健康になり、リンゴジュースのお世話になる事はなかった。
94歳になった母が、数日間体調がすぐれず、私はやきもきしていた。食欲が無い母にどうにか何か口に入れてもらいたいと「食べたいものはある」と聞くと「別に・・・」と言う返事が返ってきた。私は幼い頃の母に習って「お母さん、リンゴを絞ってあげようか」と言うと、母は「ほんなら、リンゴジュース飲もうかな・・」と答えて、ゴクゴクと飲んだので私はほっとした。
「お母さん、今日のお昼は何が食べたい」と聞くと、珍しく母から要望があった。
「きつねが食べたい、甘く煮たやつ」
「きつねうどんのお揚げの事、甘く煮たんがええんかね」
母は「ほうよ、甘いんがええ」
私は母に食べてもらわなくてはと生まれて初めて油揚げを甘辛く煮た。
手作りしたきつねうどんを母が口に運びながら言った。
「あんた、ちょっと固いけど初めてにしては上手に煮とる」そう言って完食した。
私は母の食欲を見て安堵した。
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