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おしゃべりジョアンと和さん
◇◇ショートショートストーリー
ジョアンは和さんの一番の仲良しです。どこに行くのもいつも一緒、和さんはジョアンをとても信頼しています。
「ねえジョアン、今日はお散歩しようと思うのよ、小学校の傍まで行って、帰りにいつもの喫茶店に寄って帰ろうと思うんだけど」
「いいねー、私も喫茶店でのんびり出来るし、和さんはココアを飲むんでしょう、一緒に頑張ってお散歩しましょうよ」とジョアンは笑顔で答えます。
和さんは、ジョアンがいなければ不安でたまりません。二人はそんな間柄です。
カラフルな洋服をお洒落に着こなしている和さんは80歳、若々しくてとてもその年齢には見えませんが、最近は脚が弱ってきていているので一人で行動するのはちょっと不安なのです。
この日も和さんはジョアンと連れだってお散歩に出掛けました。
「和さん、子どもたちが下校する時間だから、あの子達に変な目で見られないように注意してね」とジョアンから忠告されていたのに和さんは大きな声でジョアンに話しかけます。
「ねえ、ジョアン、今時の子どもたちはみんなあんまり日焼けしてないね、外で遊ぶ機会が少ないのかしらねー」と言っていると子どもたちが物珍しそうに、和さんを見てこんなことを言っています。
「いつものおばあさん、杖をつきながらまたぶつぶつ言ってるよ」
「誰もいないのに誰と話しよるんじゃろ、キモイなー」
「あのおばあさん、いっつもニコニコしながら一人でぶつぶつ言いよる、おかしいわい」
横断歩道を渡ろうとしていた和さんにジョアンが声をかけます。
「和さん、信号が変わりそう、渡るのは待った方がいいよ」
自転車が後ろから近づいてきていると「和さん、後ろから自転車だよ、気を付けて」とジョアンが注意を促します。和さんはいつもジョアンにを優しく見守られているのです。
ジョアンが和さんの所にやって来たのは一年前です。何の前触れもなく、アメリカに住む孫から届けられました。
「ジョアン」は、アメリカでAIの研究をしている孫の一也が和さんのために特別に作ってくれた杖でした。
おばあさんの趣味や生活サイクルなどをすべてインプットしているので話し相手になる杖です。
「ねえジョアン、みんな私を年寄りって思ってるみたいだけど、気分はまだ20代なのよ、何でもチャレンジしたいの、パワーはあるからね」と言う和さんにジョアンがある提案をしました。
「和さん、もう一度足のリハビリに通ってみない、和さんまだまだ大丈夫だと思うよ」
そう言われて、和さんは2年前に諦めてしまっていたリハビリに再挑戦する事にしました。
半年たったある日、和さんはジョアンの手を頼らなくても歩けるようになりました。
「和さん、良かった、一也さんが喜ぶよー、私の役目は終わったわ、また必要になったら声をかけてね」
「ジョアンありがとう、じゃあ暫くお別れして、私一人で頑張ってみるわ」
和さんはいつものお散歩に一人で出かけるようになりました。
子どもたちがこそこそ話しています。
「あのあばあさん、最近杖ついてないなー、さっさと歩いとる、笑顔だけど、ぶつぶつ言ってないわい」
「元気になったんかー、びっくりじゃー」
そんな声を尻目に和さんは自宅に帰っきました。
「ただいま」と言うと
玄関の隅で、「和さん、お帰りなさい、今日も頑張ったね」と言うジョアンの声が迎えてくれました。
ジョアンと和さんは今も仲良しです。
【毎日がバトル:山田家の女たち】
《杖は友達みたいなもんよ》
リビングでイラストを制作しているばあばと。
「和さん歩けるようになって良かったわい、私もおしゃべりな杖があったら欲しいわい」
「お母さんも頑張り寄るよね」
「私も杖なしで歩くように頑張りよるけど、中々よー」
「お母さんにとっての杖の存在は」
「今は友達みたいなもんよ」
「初めは絶対杖なんか使わん言よったよね」
「何回かこけたけんね、お世話になろう思たんよ」
母にとって杖は今、和さんとジョアンのような関係です。おしゃべりな杖があったらきっと楽しいですよね。
【ばあばぼ俳句】
秋天を降り立つ鷺や園の昼
母は青く澄み渡った秋の空から、白い鷺が降り立つ姿がまるで絵画のように美しかったので句に残しました。母にとって鷺は神の化身のような思いがあるようです。
いつもの庭園の風景が独特な空間になりました。母は目に焼き付いた情景をイラストに描き大満足のようでした。
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私のアルバムの中の写真から
また明日お会いしましょう。💗