順子◇学ばない恋
◇◇ショートショート
順子は久しぶりにときめいていました。
大学時代に別れた恋人に偶然出会ったのです。
友人たちから猛反対されていた相手でした。
誰にでも愛想がいい、好感度が高い人。
「順子、あいつはダメだよ、順子のことを好きなはずがない、順子がいて欲しい時にいつもいないじゃない」
友人の言う通りでした。彼氏だった裕二は、順子以外にも付き合っている女性がいました。
そんなことは薄々分かっているのに、順子は裕二が好きだったのです。
優柔不断な彼の性格を知っていながら「裕二が一番好きなのは私だから」と恋の魔法にかかっていた彼女は彼に夢中だったのです。
友人が順子に言います。
「裕二くんは、自分の好きな事しかしてないよ、もし順子のことを大切に思っているなら少しは合わせてくれるんじゃない」
「でも、裕二は自分の時間がないとダメなタイプだから、私が我慢すればいいんだよ」と順子はいつも恋する乙女発言でした。
ある日、友人からこんな話を聞きました。
「裕二くんこの間合コンに行ってたらしいよ、何だかいい雰囲気になってる子もいたみたいよ」
すると順子は「裕二はさー、友達に誘われると嫌って言えないんだよね、彼は優しいから」
周りからは順子は裕二に上手く操られているとしか見えていませんでした。裕二にとっての順子は都合がいい女だったのです。
結局、裕二は学生時代に付き合っていた別の女性と結婚をすることになりました。自由に遊んでいた裕二は妊娠を告げられた彼女との結婚を決めたのです。
社長令嬢だった彼女との結婚は、裕二にとっては悪くない選択だと思っていました。
順子は何も告げられないまま、二人の恋は終わりを迎えたのです。
それから15年、順子は昔の恋を引きずりながら歳を重ねていました。そして偶然に出会ったのです。大学の同窓会での出来事でした。
順子は、まさか裕二が来ているとは思ってもいませんでした。
裕二が順子を見つけて声を掛けます。
「順子・・・」
順子はその声に、驚きました。
「あっ裕二の声だ、懐かしい」
そう思って振り返ると、そこに裕二が居ました。
「苦労したのかな裕二、昔の面影が無いわ、優柔不断で私を夢中にさせていた彼じゃない、何があったんだろう」
久し振りに言葉を交わして順子は納得しました。
「僕、結婚した後、7年して別れたんだ、子どもは彼女が引き取ったんだ、結婚してから彼女のお父さんの会社で働いていたんだけど、今は別の仕事をしてるんだ」
そう話す彼には昔のようなオーラは少しもありませんでした。
「順子は元気そうだね、良かった、結婚したの・・・」
順子は首を横に振って「ううん、独身、結婚なんて考えてない」と答えました。
順子はふと思いました。あの頃の私だったらきっと照れながら「あなたを忘れられなくてね・・・」なんて言っていたんだろうなと思いながら。
すると裕二が言いました。
「今夜、空いてたら、この後一緒に飲みに行こうよ」
ためらいながら順子はこう答えました。
「裕二、私はあなたとの思い出を、大切に取っておく、だから今日はこのまま帰ろうと思う」
順子はそう言った自分自身を褒めてあげたいと思いました。
「私も成長したものだ、こんなことが言えるようになったなんて」
そう思っていた時、裕二が彼女の手をぐっと掴んだのです。
「そんなこと言わないで、これからまた始めればいいじゃない」
そう言われて、順子はその夜、裕二と共に過ごしたのです。
順子の満たされない恋がまた始まりました。順子は学んでいなかったのです。
【毎日がバトル:山田家の女たち】
《私はドラマ見て、恋愛を楽しんどる》
「あんたよく恋愛のショートショート書くけど、私は分からんのよ、あんたが思う通りにお書きや」
「お母さん、思たことを言うてや」
「私らは偶然会うたんがきっかけよ、お父さんとはねー、やっぱり人間は定め言うんがあるけんね、相手の気持ちが分っとっても難しいんよ、そのぐらいでええかな、私はドラマ見て恋愛を楽しんどるんよ」
残念ながら、母はいつものように私が書く恋愛ストーリーは面白くないと思っているようです。でも私は諦めません。
キャンパスや初恋の色若葉風
今日のショートショートに合わせて母が初恋のコラボ作品を創作しました。
キャンパスでの恋は入学してしばらくした頃、若葉風が心地い頃に初々しく始まる、そんな光景を詠んでいます。
イラストの男女の後姿が何となく可愛いなーと思います。
そんな恋の思い出は遠い昔になりました。
最後までお読みいただいてありがとうございました。
たくさんある記事の中から、私たち親子の「やまだのよもだブログ」にたどり着いてご覧いただき心よりお礼申し上げます。
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また明日お会いしましょう。💗