ばあばを笑顔に💛個展までの道のり
私は93歳の母を笑顔にしたいと思って、自分の壁を打ち破って思いっきり頑張りました。
母のイラスト展を開催したのです。
一年ががかりで、色々な事をクリアーしながらやっと漕ぎつけました。
母はイラスト展が開催された日に、これまでに見たことが無いような笑顔を見せました。
その時、私はやっと親孝行が出来たと思いました。
母の最高の笑顔を見るまでの様々な出来事を振り返って、記しておきたいと思います。
初めての個展を開催する方の参考になるかも知れません。
【全てはnoteの投稿から始まった】
noteにブログを投稿するようになってから母がイラストに目覚めました。
それは約3年前の事です。
母に勧めて親子二人三脚のブログを始めたのです。
母は、俳句とイラストのコラボ作品を中心に、ブログのイラストを担当することになりました。
初めはイラストを描くことに全く乗り気でなかった母でしたが、長年親しんでいた俳句とのコラボレーションならやってもいいと、イラストを描き始めました。
そしてあっという間にイラストにのめり込み、短期間でイラスト熱がヒートアップしたのです。
母はわずか一ヵ月でイラストの虜になりました。どんなこともとことん追求する母は、日々のイラストのクオリティーをどんどん上げて進化していきました。
娘から見て、それは恐るべきスピードでした。
私は尋常ではない速度で上手くなる母のイラストを多くの方に見ていただくことで、母のモチベーションも上がり、見た人にも希望を与えることが出来るのではないかと思いました。
そして個展を開催することがきっと母への親孝行にもなると思ったのです。
私は母が3年間に描いた4500枚のイラストを厳選して「母の個展」を開くことを決めました。
私にとってこれまでの人生の中で思い切った決断でした。
母のためにやらなければと言う思いが湧いてきたのです。
母の個展の開催にはあるきっかけがありました。
私が大学のOB会で卓話をする機会があり、お年寄りの生きがいづくりの大切さを母とイラストとの出会いを例にお話させていただいたのです。
その時に会場に持ち込んだ数点のイラストを見て驚く方たちが何人もいらっしゃいました。
「90代のおばあちゃんが独学で描いたとは少しも思えない」
「とっても素晴らしいですね」
「迷いのない線の強さに驚きです」など
皆さんからの反応を聞いて私は母のイラスト展開催決めました。
「難しいかも知れないけれど、とにかくやってみよう、母の作品に触れたらきっとお年寄りの果てしない可能性を知ってもらえるはず」
そんな思いが私を突き動かしました。
個展の開催を決めてからは、どんなことも恥ずかしがらず人から学ぶことにしました。
【個展開催までの道のり】
いつ、どこで、どの作品をどのように展示するのか、皆目見当もつかない私は、とりあえずギャラリー探しから始めました。
最初に訪れたのは商店街近くのギャラリーです。これまで取材したことがある展示スペースで、担当者が詳しく丁寧にお話をしてくださいました。
広さや金額をチェックし、担当者から展示のスタイルなども教えてもらいました。
これまで数々の作品展を経験している担当の方はとても親切に展示の方法などもアドバイスしてくれましたが、個展初心者の私には十分理解できていませんでした。
自宅近くにあるショッピングモールの中の展示スペースも見学しました。
そのギャラリーは、モール内の絵画や手作り教室の人たちがよく利用していて、会場のスケジュールは一年後まで埋まっていました。
公共施設にある無料のオープンスペースも候補にあげましたが、期間が合わなかったり、展示スペースが小さいなど、場所探しには本当に苦戦しました。
そこで私は、母が昔からよく訪れていたデパートの催事コーナーがいいのではと思いたちます。おそらく無理だろうなと思っていたのですが、当たって砕けろでお願いしてみました。するとラッキーな事に快諾していただけたのです。
それが今回のイラスト展に繋がります。
母は個展がお気に入りのデパートの催事コーナーで開催出来ると聞いて「本当、いいねー最高じゃねー」と大喜びでした。
無理かもしれないと思っても、頑張って立ち向かえば、成し遂げることが出来るんだと再認識した出来事でした。
【展示方法を決める】
母のイラストをどんな風に展示するかは、大きな問題でした。
初めは一般的な展示方法として、額に飾るスタイルを考えました。
しかし何十点も飾るのだから、額の数が半端ありません。イラスト展が終わった段階で我が家に保管することを考えるとぞっとしました。
困ったら「取りあえず誰かに聞いてみよう」
そう思った私は、私たちのブログにメッセージをくれる大学の後輩に聞いてみようと思いました。
美術館の経営もしている印刷会社の営業の方なので、いいアドバイスを貰えるかもしれないと思ったのです。日頃からとても親切な方なので、甘えてみようと考えました。
親切なその人は
「しばらく時間を下さい、幾つか展示方法を考えてみますから」
そう言って下さり、暫くして額を使って飾る方法と、貼るパネルを使う方法を教えて下さいました。
それも自分でサンプルまで作ってくれていたのです。
優しい人はとことん優しいのです。
母の個展の展示方法は、作品のコピーを貼るパネルに貼って展示する方法に決めました。
母が描いたイラストをスキャニングして、特別な厚みのある紙にコピーし、貼るパネルに貼って展示することで個展が終わっても保管が楽で原画も傷つくことがありません。親切な方のおかげで、いい展示方法にたどり着くことが出来ました。
その上彼はとても親切なコピー会社の営業マンまで教えてくれました。
感謝です。
【いよいよ選別作業】
一番時間をかけたのは、母が3年間で描き貯めた4500枚の中から会場に展示する93点を厳選する作業です。
93と言うのは、母の年齢です。
選び抜いた93の作品をどのように類別して紹介するのがいいのかもじっくり考えました。
会場を訪れた人がワクワクしながら鑑賞できるように
「ハートのモチーフ」「愛媛の風景」「イラストと俳句のコラボレーション」「オマージュ作品」「ばあばのエトセトラ」「桜と紅葉」「ばあばのお気に入り」「親子の顔」と8つのコーナーに分けて作品を選んだのです。
母がどうしても見て欲しい作品や、鑑賞する人たちの好みなどを考えながら、二人で何度も作品を選び直しました。
母は描くのに苦労した作品を残そうとします。
でも私は、多くの人の心を動かすものを飾りたいと思います。
それが二人のバトルになりましたが、最終的には作者である母の思いに寄り添いました。
展示作品を選んだ後は、自宅の壁にイラストを仮に貼って、作品の展示の順番を決めました。
それぞれの作品がお互いの作品を引き立て合う並べ方を考え抜いたのです。
何度も何度も並べ替え、ベストな場所を決めました。
「あんた、これはここじゃ無かろう、あんまりようないわい」と母が言います。
「ほーじゃねー、こっちの色がきついけん、下に飾った方がええかも知れんね」
そんな小さな創作バトルを繰り返しながら、展示場所を決めていきました。
【展示のスペースを想定】
作品を展示する際にどのくらいの間隔を空けて、何枚飾るのか、そんなことも事前に考えておく必要がありました。
デパートの催事コーナーのレイアウトを事前に決める必要があったからです。
我が家の白い壁にマスキングテープで作品を仮りに貼ってみて、何センチ空けるのがベストなのかを決めていきました。
5センチにするか6センチにするかで作品の見え方が変わってくるのです。
ここをしっかり確認しておかなければ、デパートが用意するボードに作品が上手く納まらないケースもあり、かなり細かくチェックしました。
6センチ空ける予定にしていても、7センチの方がいいと思えば、展示に必要な長さがどんどん変わっていきます。展示スペースの設定はかなり繊細な作業でした。この作業も経験を積んでいけばきっとスムーズに進むのでしょう。
【後援依頼を提出】
展示のスタイルが決まったら後援依頼を出します。
県や市、テレビ局や新聞社などの後援を貰うためには、ウェブサイトで依頼の用紙をプリントアウトします。
後援を受けるにはそれなりのコンセプトが必要で、個人の個展には中々後援がおりません。
今回分かった事ですが、個人で開催する場合でも名目上実行委員会を作って主催にする方が、後援が受けやすいようです。
郵送よりも対面の方が開催の想いが分かってもらえるのではと考えた私は、それぞれの窓口に出向いて説明をするように心がけました。
最終的には9か所に申請を出して、7ヶ所から後援を受けることが出来ました。初めての事だったのでかなり手こずりました。
【ポスター・チラシの制作】
個展のスタイルが決まったら、ポスターやチラシの制作です。この作業はかなり入念に進めました。
ポスターやチラシは会場に足を運んでもらうための貴重な告知の材料になります。
どんなイメージの作品展なのか、どんな目的でどんな作品が展示されるのかパッと見てすぐに分かり印象に残るもので無いと意味がありません。
デザイナーの方と色々相談して掲載する内容を吟味しました。
素案を考えた時は友人にも見てもらって、どんな風に感じるのかなどのアドバイスももらいました。
今回担当していただいたデザイナーの方は、これまでホテルの催事などの経験もある方で、とても素敵なデザインにしてくださいました。私は温かいイメージの出来上がりに大満足です。
【メディアの取材依頼】
メディアでの取材経験が長い私は、どんな時期にどんな依頼をすれば取材をされやすいかが何となく分かっています。
なので93歳のイラスト展を開催するのであれば、やはり敬老の日の前が最適だと思い、イベントの期日を9月12日から9月18日に設定しました。
この時期であればきっと取材者の目に留まるだろうと考えたのです。
早速、新聞や雑誌、フリーペーパーに取材依頼を出しました。
個展のコンセプトを分かりやすく書いて、取材者の心に響けとばかりに郵送とファックスで依頼書を出しました。
この時に大切なのがイベントのコンセプトです。
私は「超高齢化社会の中で、SNSがきっかけで90歳からイラストを始めたおばあちゃんが、3年間で描き貯めた4500点の作品の中から年の数だけ93点を選んで展示する初めてのイラスト展」と言う事をポイントにしました。
明解な展示意図が大切だと思います。
しかし一向に取材の依頼はありませんでした。私はメディアの力が集客に大きく影響することは分かっていました。なので取材していただける方法を模索して、アプローチをかけましたが、ぎりぎりまで反応はほとんどありませんでした。
しかし、イベント開催直前に地元のフリーペーパーにイラスト展が開催されることが紹介されました。
この紹介を皮切りに新聞2社、NHKや地元テレビ愛媛などから取材を受け、NHKは全国ネットでも放送されて、多くの皆さんに「ばあばのイラスト展」を知っていただくことが出来て、会場にたくさんの皆さまにお越しいただけたのだと思います。
【プロの手を借りる】
イラスト展を考え始めたばかりの頃は、無謀にも私は自分の力ですべての展示作品の準備をするつもりでした。自分で作品を貼るパネルに貼って、展示しようと思っていたのです。
しかし母の介助をしながらその作業が出来るわけがありませんでした。
最終的には作品のコピーを依頼した会社に、パネルの準備をすべてお願いすることにしました。
本当に助かりました。私の頭の中にあるものを、具体的に形にしてもらって、作品を展示すればいい状況まで進めてもらったので、短期間でも作品展示の準備が出来たのです。
本当にいいスタッフに出会いました。
担当者との打ち合わせから始まって、5ヶ月が過ぎました。
【ボランティアの力】
会場でのセッティングは展示のプロが一人いらっしゃったので安心でした。準備作業は妹と私そして友人たちに加えて大学生のボランティアにお願いしました。
「いまどきの若者は・・・」なんて思っている方も多いかも知れませんが、今回のイラスト展では、セッティングと撤収に若者たちの力が大きな助けになりました。
母校のボランティアの存在を知って、彼らに手助けをお願いしたのです。本当に助かりました。
若者たちにはありがとうの一言です。
【ばあばの作品のパワー】
全てが整い、私たちの幸せな一週間が始まりました。
そこで改めて知る事になったのは「ばあばのイラストの力」です。
これまで静かに開花していた母の才能が、多くの人の心を動かすことになりました。
母も喜び、幸せに満ち、イラストに触れた人もまた幸せを感じてほっこりする。それは訪れた人たちのメッセージノートを見れば一目瞭然です。
会場に訪れた人たちとお話をさせていただいた私たち姉妹も、皆さんの熱い想いを感じる1週間でした。その空間に幸せな時間が流れていたのです。
ばあばは皆さんからパワーを貰い、またまた描くことに意欲を燃やしています。
「私は幸せよ、ええもんに出会ったわい、イラスト描きよったら一日があっと言う間で本当に楽しいわい、明日もまた描くよ、命ある限り」
イラスト展を終えて母がそんなコメントを語ってくれました。
【母が笑顔になった日♡】
会場にいる母の顔は、これまで以上に輝く笑顔なのです。
私たち姉妹は「イラスト展をやって良かったね」と顔を見合わせました。
もちろん二人とも母に負けない笑顔でした。
最後までお読みいただいてありがとうございました。
たくさんある記事の中から、私たち親子の「やまだのよもだブログ」にたどり着いてご覧いただき心よりお礼申し上げます。
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また明日お会いしましょう。💗