突然届いたプレゼント
◇◇ショートショート
玄関のチャイムが鳴ります。
「宅配です、厳重注意って書いてありますよ」
心当たりが全くないおばあちゃんは、怪訝な顔をして、段ボールの箱を眺めていました。
「何じゃろか、大きいし、重そうじゃ、その上厳重注意かね」
そう思いながら、おばあちゃんは、箱に見覚えがあるマークを見つけました。
孫の正也が、自分が作ったものに書いていた、正の字をまるで囲んだ「まる正」マークです。
「マー君のまる正じゃ、これマー君が送ってきたんかな」
正也は小さい頃から面白い子どもでした。
おばあちゃんが料理をしているとすぐ隣に来て、じーと眺めていたかと思うと、真似をして作るのです。
巻きずしを作っていた時は、いろんな具材をぐちゃぐちゃにしながら、直径15センチもの大きな巻き寿司を作って「ジャンボ巻き寿司、完成」なんて言いながら、かぶりついていました。
誕生日にロゴブロックをプレゼントすると、ああでもないこうでもないと、何度もつなぎ直して、最後にはロゴブロックを玄関からリビングまでぐるぐる巡らして「長ーい、ヘビ完成」と言って大喜びしていました。
正也にはちょっと変わったこだわりがあって、白いご飯が大好きで、好みの塩を選んで、炊き立てのご飯に振りかけ、口に運び「炊き立てのご飯に藻塩が最高なんよ、おばあちゃん」と言って、塩ふりかけご飯を毎日のように食べていました。
「どんな子になるんかな・・・」おばあちゃんは家族の誰よりも正也に期待をかけていました。
都会の大学に進学した正也はロボット工学に目覚め、大学院でロボットの研究をしています。
最近、テレビ電話をかけてきて
「お祖母ちゃんの好きな食べ物は何・・・」
「おばあちゃんの好きな言葉は・・・」
「好きなタレントは」
「好きな歌手は」
「趣味は」と厚かましいぐらい聞いてきました。
「この子どしたんじゃろか、何かおかしいなあ」と思っていた矢先にこの届けものです。
「何を考えとんじゃろか、危ないもんは送ってこんわいな・・・」と大きな箱を前におばあちゃんは色々なことを考ています。
「あの子は一人遊びが好きじゃった、私とよう遊びよったなー、大人とばかり遊びよったんがいかんかったんかな・・・」
「正也はええ子じゃった、おばあちゃん僕がおったら寂しない、寂しかったら僕がおばあちゃんの友達になってあげるけんね、僕とお話しょうや」そんな優しい言葉をかける子どもでした。
「僕、大きくなったらロボットを作りたいんよ、いつか絶対おばあちゃんにプレゼントするけんね、そんなことを言うてくれとったなー」
おばあちゃんは、小さい頃の正也と交わした言葉を思い出しました。
「これ、ロボットかも知れん」そう考えて、おばあちゃんは思い切って箱を開けてみることにしました。
中には取り扱いの説明書と正也からのメッセージが添えられていました。
「おばあちゃん、90歳のお誕生日おめでとう。おばあちゃん、僕との約束覚えとる、いつか僕がおばあちゃんにロボットをプレゼントするって、やっと実現しました、きっと気に入ると思うよ、ロボットはAIが分析したおばあちゃんがスキな人の姿だからね、とりあえずスイッチをオンにしてください」
おばあちゃんは、ロボットの顔をみて仰天しました。
そこには5歳の頃の正也がいたのです。
AIが導き出したお祖母ちゃん好みのロボットは5歳の頃の正也でした。
「正也、スイッチを入れるよー」とおばあちゃんはロボットのスイッチを入れました。
すると突然ロボットが話し始めます。
「おばあちゃんやっと会えたね、僕はおばあちゃんが大好き、おばあちゃんがいてくれたから毎日寂しくなかったんだよ、これからはおばあちゃんが寂しくないように、僕が毎日お話しするからね、おばあちゃんお誕生日おめでとう」
おばあちゃんは正也からの意外なプレゼントに驚きです。
ロボットが再び話し始めました。
「おばあちゃん泣いたらいかんよ、おばあちゃんに会えてうれしいのは僕の方だから、僕は涙が流せないのが残念なんだけど、その代わりにおばあちゃんもっともっと泣いていいよ」
おばあちゃんはロボットを抱きしめました。おばあちゃんには、正也の温もりが伝わった気がしました。
【毎日がバトル:山田家の女たち】
《私は小学生頃の孫のロボットがええ》
「そんなんがあったら寂しないわいねー、私も話しかけたいわい、私の孫のロボットがあったら、どんなに答えるんじゃろか」
「お母さん、何歳くらいの孫がええ」
「私は、小学生くらいの孫のロボットがええ、可愛い頃よ」
母は今日のショートショートで孫の小さい頃を思い出したようです。写真を眺めていても本当に大きくなったなーと思います。
孫の声しばらく聞かぬ五月かな
母が何より明るい声になるのは、東京にいる孫の声を聞いた時です。思春期の孫が優しい言葉を掛けてくれるとこの上なく嬉しくなるようです。
そんな気持ちを詠みました。
最近声を聞いていないなーと思っていたら、突然、孫から電話がかかって来て、何とも嬉しそうな声で対応していました。
孫の声が元気の素になっています。
最後までお読みいただいてありがとうございました。
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