真夏の嵐山日帰り旅「源氏物語と斎宮と縁を結ぶ野宮神社」後篇
近現代日本文学を代表する小説家の一人、坂口安吾さんの短編小説『桜の森の満開の下』読みました。
あなたの知らない京都旅~1200年の物語~「平安時代に出逢える京都三山 西山」で勝持寺の西行桜を眺めていた中村雅俊さんが上記作品を引き合いに出されたのがキッカケになります。
まずはじめに、この作品は青空文庫に収録されていて無料で読めます。ただ他の方にオススメすることはできません。いわゆる放送禁止用語が並んでいて後半にグロテスク描写があるからです。生々しさはないので我孫子武丸著『殺戮にいたる病』ほどの衝撃はありませんでしたが耐性のない人はやはり読まないほうがいいです。
さて皆様がイメージする桜は美しさや儚さがほとんどだと思います。しかしこの作品はまったくの逆。満開の桜を恐怖の象徴として描いているので多くの読者を困惑させます。昔の人は桜に恐怖していたのではと誤解させるようなストーリーになっていますが、もし本当に恐怖していたなら西行は桜を愛でなかったでしょうし内裏にある左近桜も存在しえません。
なぜ坂口安吾は恐怖のイメージを桜に抱いていたのでしょうか。
四月といえば「出発・フレッシュ・入学式」と爽やかな印象を持ちます。もちろん春を憂鬱だと考える人もいます。少し前の私がまさにそうでした。四月は気候や環境の変動が激しい時期です。ストレスは心を憂鬱にさせます。坂口安吾はそのことを満開の桜を使って表現したかったのではないでしょうか。
これは想像になりますが西行が桜を愛するようになったのはきっと出家してからだったのでしょうね。彼の生きた時代は大河ドラマ『鎌倉殿の13人』と同じ時期になります。戦乱の世でしたから武士として生き続けていたら桜を美しく感じることは一生なかったのではと。いや死と隣合わせの世界で生きてきたからこそ桜に感情移入できたとも考えられます。
とまぁ、このような内容を桜の咲く頃に掲載するのはあまりにも野暮なので夏真っ盛りのこの時期に投稿しました。例えるなら大谷翔平を応援している人に向かって興味ねえよと叫ぶようなものです。四月は嫌だと公の場で発信すれば桜を心待ちにしている人たちの興を削ぐことになります。捻くれ者の私ですがさすがにそこまで意地の悪い人間ではありません。多様性という言葉が流行っていますが、桜を否定的に見るヒトもいるのだなあとなかなか面白い作品でありました。
では旅の続きに参りましょう。前回は野宮神社の前篇でした。今回は後篇になります。
ここ野宮神社は天皇の代理として伊勢神宮に仕える斎王が伊勢に赴く前に身を清める場所で、黒木鳥居と小柴垣に囲まれた清浄の地に建てられました。
斎宮とは何ぞや?
斎宮について知りたい方は斎宮歴史博物館公式HPがオススメです。大変分かりやすい解説でQ&Aコーナーではあらゆる疑問と回答が網羅されていました。気になった方はぜひご覧になってみてください。小中学生の自由研究に利用&研究するのもいいかもしれませんね。
初めての伊勢神宮参拝では私ここを素通りしてしまいました。次の機会があればぜひ見学したいです。
源氏物語「賢木の巻」に野宮神社の様子が描かれているということで、積んであった与謝野晶子翻訳版を再び机の上に置いて読んでみました。
それにしてもとてつもない文章量ですね。一巻読むだけで一時間強かかりましたよ。当時は娯楽の少ない時代でしたからこれくらいがちょうど良かったのでしょうね。ちなみに晶子版は賢木ではなく「榊」と表記されています。
うーん、晶子訳はやっぱ分かりにくいかも。
母が生前に本を購入していたことをふと思い出し書棚から引っ張り出しました。瀬戸内寂聴版源氏物語です。さすが350万部の大ベストセラー。一番最近に出版された翻訳本なのでめっちゃ読みやすい。ただ花散里までの二巻までしか購入してなかったみたいでどうやら私と同じ飽き性だったみたいです。まぁ今ならリーズナブルな文庫本もありますしなんなら図書館にいけばいつでも読めます。何はともあれまずは手元にあるものを熟読してからですね。
いい感じの昭和レトロな看板。
ここ野宮神社は起点になっています。このときは正直なんとも思わなかったのですが川端康成『古都』を読み直して、奥嵯峨を旅された方のnoteを拝見し嵯峨野めぐりをすごくやってみたくなりました。
賢木の巻の舞台って秋の夜長の季節なんですよね。怖がりの私はさすがに夜中に出歩くのは無理ですが、冬の静かな時期に物思いに耽りながら歩きたいなって思っています。
嵐山といえばオーバーツーリズムの代表格。
しかし奥嵯峨と呼ばれるエリアは外国人観光客の恩恵をあまり受けていないそうなのです。地元の大学や観光業界の人たちが分散化を叫んでいる状況で、例えるなら大阪ドームは盛り上がっているけれど近くの商店街まで足を運ぶ人は少ないという感じでしょうか。
私はてっきり嵯峨野エリアもわんさか人で溢れているものだと誤解していまた。再び嵐山の地に降り立ちたいので時が巡ってきたら愛宕念仏寺まで歩いて検証してみますね。
校外学習でいろんな伝統文化の場所へ連れてってもらったのですが謡曲は一度も触れたことがありません。
京都検定を受験するうえで謡曲は必ず通らなければならない道ではあるのですが、NHK教育はおろか公式動画視聴でさえ気が乗らなくていまだピンと来ていません。私にとっての大きな鬼門ですね。
あらすじを見て自分は何に興味があるのか調べてみてから能や謡曲に触れるのが一番いいかもしれません。歴史好きの方はぜひ謡曲や能の世界を覗いてみてください。
こちらが黒木の鳥居になります。
木島坐天照御魂神社「三柱鳥居」を拝見したときにも思ったことですがやっぱ自分の目でみるとすごく感動しますね。
ついつい触りたくなりますがとても貴重なものだということは知っていたので近寄るのでさえ恐れ多くて撮影するのに若干躊躇いました。
驚きました。以前は三年おきに建替をしていたのですね。
ちなみに伊勢神宮の鳥居は20年おきとなっていて、いわゆるお下がりという形で「関の追分」「七里の渡」へ受け継がれていきます。野宮神社の黒木鳥居はまさに日本一と言えます。
12月に京都検定があるので過去問対策に励んでいたところ世阿弥に関する問題がありました。『秘すれば花』は風姿花伝に書かれている言葉の一つです。
ということで、野宮神社の見どころはたくさんありますがあえてここまでに致します。電車が意外と近くで走っているんだなとか、想像していたよりこじんまりとした境内なんだなとか、お亀石をさすり損ねたとかいろんな体験ができますので皆様もぜひ訪れてみてください。ご精読ありがとうございました。
次回は体温が上昇してきたので近くの喫茶店で休憩します。ではまたね。
今回の旅スポット
追記
『読書感想文』『日本史がすき』二部門で、スキの週間一位を獲得しました。皆様ありがとうございます。感謝!!
『日本史がすき』応募作品で、スキの二週連続一位を獲得しました。皆様ありがとうございます。感謝!!
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※冒頭の話は会員限定記事『熟成下書きⅡ』に収録されたものを再編集しました。
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