欠落のありよう[読書日記]

アンソーシャルディスタンス 金原ひとみ(新潮文庫)

アルコール依存であれ、整形依存であれ、関係性依存であれ、セックス依存であれ。
なにかしらの欠落があって、それを埋めるために人はなにかに依存する。
そうやって依存したところで、欠落は消えない。しかもそれは言語で端的にあらわすことはできない。
そのようにある欠落をぼくもおそらく抱えていて、ふとしたときにその穴を見つけてしまうが、やはりそれに名前を与えることはできない。

著者は本作品のそれぞれの物語で、それを表現していると思う。名前をつけることのできない欠落を、物語をとおしてあらわしていると思う。

だけど、そうだからなんだというのだろう。
この物語たちを自分のなかに入れて、ぼくはどう生きていける?

物語の効用は、どこにある?
いや、そんなものいるのか?

欠落は本質的には埋められない。
埋められたくないのかもしれない。
だとすると、欠落と共にどう生きていける?


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