Drop
一篇の詩が
だいじなものを連れ去ってしまう
世界の在り方を 変えてしまう
いつもと同じ帰り道が
突然 いつもとちがう
変異する
風景が がらりと様相を変える
不意に飲み込んだ大きなドロップ
異物がのどを通るとき
ぐえっ とえずく
身体が 反射で拒絶する
涙を拭いたとき
きみは同じに見えるけれど
じつは再構築されている
決して詩を安酒のように
飲んではいけないよ
倒れてしんでしまうから
戦場で命を預ける水筒のように
常に腰に携えておくがいい
のどがどうしても渇いたら
ひとくちだけ飲んで
きみの中心が何処に在ったのか、在るべきなのか
確かめてみたらいい
詩をつくることは
世界を再び愛すること
理解などしなくていい
飲み込んだドロップといっしょに
きみも歩めばいい