【読書感想文】ベンヤミン
「絵がついてるし読みやすいかと思うも、読んでもやっぱり分からん。
ちくま学芸文庫「ベンヤミン」(文:ハワード・ケイギル他/絵:アンジェイ・クリモウスキー/訳:久保哲司)
大学のとき、「複製技術時代の芸術作品」「パサージュ論」の手ほどきをゼミで受けたこともありました。
私が画家のパウル・クレーという画家を知ったのは、ベンヤミンがきっかけ。
しかし、さっぱり。
むしろ、簡単にわかられてたまるか、という人なんだと思う。
簡単にわかられてたまるか、わかったふりをされてたまるか。
ひとというものを、「〜論」「〜主義」「〜系」といったカテゴリーにうまくおさめることで、うまく消化したつもりになって喜ばれてたまるか。
そんな反骨精神のかたまりが、ベンヤミンの著作となって残っているのかもしれない。
ベンヤミンは、物がたくさん遺された、古くて大きな家みたいだ。
彼の思索は、家中のあちこちの場所に積まれた家具や本といった物たちのようでもある。
あるいは、家中の隙間のあちこちに入り込む、ネズミや猫の隠れ家のようでもある。
どこに何が隠れているか分からない。
急に飛び出してくるかもしれない。
つかまえた!と思ったら、片付けた!と思ったら、気づけば違う場所にいる。
でも、さっぱりつかみどころのないベンヤミンという家の中の、どこに何があって、なんのためにそこにあるかには、きっと彼なりの秩序がある。
ただ、この彼なりの秩序に、名前を付けられるひとはいない。
かつての指導教員が、ベンヤミンのことを面白い思想家だと言っていた意味は、なんとなく頷ける気がした。
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