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歴史と日常と先端アートが絶妙に薫り分ける山口巡検|Memo
2024年1月14日、山口市街地を巡ってきました。The New York Times が 52 Places to Go in 2024 に山口を選んだことを知ったのは後日のこと。そして、まさか2ヶ月後の3月に取材でふたたび山口を訪れる機会を得るとも思いも寄りませんでした。
きっかけは、東洋大学PPPスクールの視察です。1/16に山陽小野田市へ行く機会を得たのですが、せっかく山口方面へ行くなら、これまで気になっていたYCAM(山口情報芸術センター)にも行けるかな、だったら市街地にも足を運んでおこうかな。そんなノリで行くことを決めたのでした。
いつものような弾丸行程。1/14の限りある時間で周った箇所のメモを残しておこうと思います。
あ、旅行の参考にはならないと思います念のため。
山口市街地・湯田温泉街
これまで縁のなかった山口。
山口県としては一度、北九州市にいる先輩に、下関・唐戸市場へ朝食に連れて行ってもらったことがあった。ただ北九州・下関都市圏ということや、市場ピンポイントで行って帰ったということもあり、山口県へ行ったという印象は薄かった。
これまであまり長距離移動を要する仕事をして来なかったものの、そこそこ回数も重ね、多少慣れてきたのかもしれない。少なくとも「え、山口って片道5時間強でしょ?ナイナイ」という抵抗感は薄れてきた。移動時間を上手に使えるようには、まだまだなっていないけれども。
結局1/14は、山口宇部空港から新山口までバス、そこから山口線で山口駅へ向かった。市街地をぐるっと歩いて周り、再び山口駅から山口線で湯田温泉駅へ。温泉街も軽く巡りつつホテルに荷物を置き、YCAMまではバスで行き来。公共交通機関でワリと上手にやれたのでは。
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主にこんな場所を巡った。
・米山町商店街
・一の坂川
・県立図書館
・県立美術館(改装中)
・ザビエル記念聖堂
・道場門前商店街
・COFFEEBOY
・中原中也記念館
総じて、積み重ねられた歴史の薫り、穏やかな空気感とサイズ感が印象的。政治や経済の激しい変動にさらされなかったことによるのかな、と想像。
米山町商店街
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日曜の昼過ぎ。山口駅を降りて歩いてきた印象は、なかなかシンドそうな地方都市。それが商店街まで来て雰囲気が変わった。店先に注文を待つ列ができていたり、比較的新しめのカフェがあったり。教会ステンドグラス風のアーケードデザインが印象的。
一の坂川
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時間の流れが変わり、歴史の薫りが漂う。朝から移動を続けてきて、やっとここで一息つけた心地になる。
趣のありそうな香山公園や龍福寺まで小路を楽しみながら周りたいところ、今回そこまでの時間は取れなかった。ここで方向転換して、公共施設が集積するエリアに向けて折り返した。
県立図書館
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市立図書館ができるまでは、この県立図書館が市内唯一の公共図書館だったという。後日聞いた話では、学生たちが図書館で勉強をするとき、私立図書館では「チャラ勉」、県立図書館では「ガチ勉」と呼ぶらしい。
県立美術館(改装中)
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調べずに来たため改装中であることを知らず、しかも開館は4日後の1/18から。惜しい。歴代展覧会ポスターの展示を見るとなかなかの数とバリエーション。
ザビエル記念聖堂
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事前にピンを打っていなかったが、歩いている途中で山の上の建物に気づき、立ち寄ることにした。多くの拝観者が車で来る中、汗を滲ませながら坂道を登る。息を整えながら礼拝堂のステンドグラスを拝観。
道場門前商店街・COFFEEBOY
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道場門前商店街・どうもん広場。ここだけ急に雰囲気の異なる空間。ここに面した「COFFEEBOY」でコーヒーを飲みながらゆっくり過ごしたくなるものの、時間なく離脱。これは誤算だった。
ただこの2ヶ月後にまさかの山口再訪の機会を得て、COFFEEBOYに入ることができた。山口県で60年焙煎を続けるコーヒー専門店。
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中原中也記念館
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この日の急ぎ足の行程は、中原中也記念館の開館時間(月曜定休・9-17時開館)という制約から来ていた。高校生の頃その繊細な感性に共感したことがあり、久しぶりに中也の世界観に浸った。
湯田温泉街
宿泊先は湯田温泉街。地元の方に聞いた話では、温泉観光というよりは、地元で夜飲みに行く街の機能を兼ねていて、宇部で働く人たちも懇親会などで利用してそのまま泊まったりするらしい。また萩方面へのツーリング拠点であるという。
また後日、この温泉街の学生さんたちにの労働力より支えられていると教えて頂いた。
YCAM 山口情報芸術センター
1/14 YCAMの中
1/14夕方、YCAM(山口情報芸術センター)へ。
館内館外にて開館20周年記念事業実施中。ホワイエでは「あそべる図書館」の展示。昼に通り過ぎた山口井筒屋で「コロガルあそびのひゃっかてん」最終日だったことを知り悔しがる。こうしたクリエイティブ施設が周辺エリア・まちに与える影響について、何らかの形で測りたい。
この2ヶ月後にYCAM再訪の機会を得た。取材に同行し、YCAMの渡邉朋也さん、菅沼聖さんにお話をお聞きするとともに、西翼さんに「サテライトA」「tog」などの案内を頂いた。
YCAMにかけられた呪いの反転、市場で供給されない公共財を担うYCAM、YCAMが進める社会応用の視座や射程、制度化されていない余白に生まれる創造的自由、広がるコラボレーター/コミュニケーター、等々。
終盤には、YCAMがさらに山口在野のインディペンデンツにより強度を増して磨かれていくイメージが浮かんできた。
また別途記事にまとめたいと思う。
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1/14 YCAMの外
YCAM前にある芝生の公園では、散歩したりジョギングしたり、ボールを蹴ったり本を読んだり、幅広い年齢層の日常的な光景。隣接するスターバックスは、20〜30代で席が埋まっている。暗くなってから外に出ると、久しぶりに体感する夜の暗さに驚く。
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山口巡検ふりかえり
今回訪れた山口をふりかえります。
まちの雰囲気としては総じて、積み重ねられた歴史の薫り、穏やかな空気感とサイズ感が印象的でした。確かなことは分かりませんが、政治や経済の激しい変動にさらされなかったことによるのかなと想像します。
あるまちだけに一極集中したり、あるいは似たような構成のまちが点在するのではなく、なんとなしにそれぞれが特徴のあるまちになり相互関係が生まれているように見えて、不思議な感覚がありました。それは県全体でも感じる気もします。
この体感は、埼玉育ちにはわりと新鮮でした。
後日のYCAMインタビューで、「マーケットで供給されない公共財の提供」「山口は在野のインディペンデントに面白い人たちがいる」等の話を聞き、山口を捉える上ではこの辺りの背景も無視できないと感じています。
歴史と、日常と、先端アートとが、それぞれ深い薫りを放ちつつ、混ざりすぎずに絶妙に薫り分ける。
山口面白い。
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