従業員を中心に据えた持続可能な経営とは|ウェルビーイング(Well-being)という考え方
日本で働き方改革が進む今「ウェルビーイング」という言葉をご存じでしょうか。「ウェルビーイング」は、従業員の健康やワークライフバランスを整えるために重要な概念であると注目されています。海外では企業がより良い組織運営を行うために、ウェルビーイングが必要不可欠と認知されているようです。世界的なコロナ禍の今、注目されている企業施策の一つです。
現状認識
2020年。新型コロナウイルスの影響で、社会全体で働き方改革が加速した一年でした。特に日本企業ではテレワーク(リモートワーク)がオンラインの言葉と共に推進され、さまざまなデジタルツールの導入が進み、勤務形態も大きく変わりました。
そして2021年5月、この環境を一年間経験してきた経営者は、どのようにして企業や組織を鍛え勝ち抜いていかなければならないのか、そろそろ具体的な施策を講じる時期を迎えていると思います。
はじめに、新型コロナウイルス感染症の流行以前、働き方改革のために推進されていたテレワークは「時間を有効活用することが、通勤時間や移動から解放されメリットが大きい」と説明されてきました。しかしメリットがある一方で、家庭の状況により集中できず、仕事と休みの境が不明瞭になることで精神的なストレスになることも分かってきました。更に組織的には、コミュニケーション不足から従業員エンゲージメント(組織に対する思い入れ)が低下し、ばらばらな場所で働いているため一体感が薄れ、さまざまな課題が明らかになっています。
企業の経営ソースは「人・モノ・金・情報」といわれています。人に関しては、人材の流動化による離職率の上昇と少子高齢化による人材不足から、より深刻の度合いが増し、企業にとって人材の確保は重要な課題です。追い打ちをかけるように外国人労働者もあてにできない状況になりました。人材の確保が難しいならば、離職を抑え今いる従業員で何とかしなければならないことになります。採用した人材を育成し、帰属意識を高め、離職率を低下させなければなりません。
このような現状の中、ウェルビーイング(Well-being)に関心が寄せられています。従業員の健康を中心に据えたウェルビーイング経営と謳う企業も増えてきました。
ウェルビーイングとは
ウェルビーイング(Well-being)という言葉を直訳すると、「幸福」「健康」という意味になります。
健康については、1946年に署名された世界保健機関(WHO)憲章 の前文で「健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいう。」と定義されています。
ウェルビーイングも、同様の意味合いで用いることが多い言葉ですが、単に「病気がない」「自分が健康になっていく」という状態を指すのではなく、身体、精神、感情などさまざまな要素において健康な状態にあり、幸福感や達成感、仲間同士の交流、目的意識などを持ち、人生をポジティブに捉えられる状態を意味しています。高いレベルのウェルビーイング状態にある従業員は、心身とも健康であるだけでなく、高い集中力と生産性を持つ傾向にあるといいます。
働き方改革が社会全体で進む現在、企業内の就業環境や組織の在り方について議論する際に「ウェルビーイング」という概念を意識することも多くなっています。
なぜ職場でウェルビーイングが必要なのか
ウェルビーイングがビジネスの場で重要視され始めたのは、社会における価値観の変化や慢性的な人材不足が原因と考えられます。
日本はもちろん、世界全体で働き方だけでなく、生き方そのものについての価値観が多様化する中、旧来の自己犠牲的な働き方が見直され、自分らしく働ける環境づくりが必要とされているのです。
また一方では、求人数は増加傾向にあります。このような「人材減・求人増」の傾向にある現代では、高給与・高待遇を謳うだけの採用活動が通用しなくなっています。
これらの状況から、各企業では他社との差別化を図り、人材の定着率を高めるために「すべてが満たされた状態」であるウェルビーイングを重視した組織運営に注力する傾向が高まっているのです。従業員が企業に対して貢献意欲を持ち、持続的に勤務したいと思えるような環境を作ることを求められているのです。
そこで企業は、従業員の健康と幸福感を最大限に伸ばす制度やルール、サービスが不可欠と考えています。企業が従業員の心身の健康を経営資源と捉え、健康促進を戦略的に実践する「ウェルビーイング経営」への理解が進んでいます。
ウェルビーイングが働き方にどのような影響を与えるのか
主体的に業務に専念できる
幸福を前提に仕事を行うようになります。つまり、相手基準ではなく、自分がどう思うか、これをやったら自分はワクワクするのか、ということを自分に問いながら仕事をすることになります。そうすることで、受け身ではなく、自分がオーナーシップをとり、業務に専念できるようになります。
細やかな「快」「不快」に気づける
ビジネスにおいて、快、不快に気づけるのは非常に重要なスキルです。自分の幸せ、チームメンバーの幸せ、そしてお客様の幸せを考えた時に、何が心地よくて、不快なのか、突き詰めて考えるようになります。ただ無機質に業務をこなすのではなく、しっかりと自分も含め、会社の中の人、クライアントの心を理解し気づき、感じる力が身につきます。
ウェルビーイング導入のメリット
① 従業員の心身ともに健康な状態を維持することができます
健康経営を通じた従業員の健康問題の改善が、企業の生産性や業績の向上につながります。
② 従業員エンゲージメントを高める
仕事へのやりがいが生まれ、結果としてエンゲージメントが高まります。やりがいのある職場では従業員一人一人がウェルビーイングな状態であり、そこには高いエンゲージメントがあり、企業・従業員間の関係性も良好となります。
③ 離職率の低下
2020年9月の経済産業省の報告によれば、健康経営度の高い企業(健康経営銘柄、健康経営優良法人)は一般企業よりも離職率が低いことが示されています。(離職率は健康経営銘柄で2.7%、健康経営優良法人で5.1%、全国平均 11.3%)
④ 従業員のモチベーションを高める
個人のウェルビーイングは企業が提供するだけのものではなく、従業員自身で追求していくのも重要です。仕事で苦境に立たされたとき、幸せを感じられるような状態ではないかもしれません。しかし、その仕事に高いモチベーションで臨み、意義を見いだし、達成したとき、それはウェルビーイングな状態と言えます。
⑤ パフォーマンスの向上
個人の生産性の向上は企業・組織の生産性を高めることから、企業価値、株価の上昇まで期待できます。
企業は人なり。働くことに対する満足度を高める従業員エンゲージメント
組織と個人が同じ目的に向かって成長し貢献しあう関係を高めることで生産性の向上や、従業員の定着率を向上させ、経営にポジティブな影響を与えることができます。「働くことに対する満足度」と生産性向上は密接に関わっています。組織と個人が同じ目的に向かって成長し貢献しあう関係のことを「従業員エンゲージメント」といいます。
今の従業員は、雑談や新しい出会い、チームでのクリエイティブな仕事という従来の価値に加え、給料よりも企業文化で会社を評価する新たな価値観への指標も満足度を図るうえでは重要となっています。短期的には、売り上げや業務効率に直結しないかもしれませんが、長期的に見れば確実にプラスをもたらす概念です。持続可能な企業経営のために、ウェルビーイングを取り入れている日本企業が増えています。
総合的な生活の質を意味するQoL(Quality of Life)
Quality Of Life(クオリティ オブ ライフ)の略で、日本語では「生活の質」や「生命の質」と略されます。1947年にWHO(世界保健機構)によって人の健康は「病気がない状態」から「身体・心理・社会関係・自立・経済・宗教の側面から満たされている状態」と再定義されています。
生活の質を求めることは、社会的な人間として健康的な生活を送る上で欠かせないものです。物質的な豊かさに満たされた生活ではなく、心身が満たされた生活に焦点をあてた考え方です。
身体的に満足な活動が行えているか?
経済的にはどうか?
日常的に行う作業に精神的満足感があるか?
周囲の人間関係は良好か?
適度に新しい環境に身を置いているか?
精神的な安らぎや充実感があるか?
他者に貢献する活動や気持ちを持っているか?
似た言葉の違い
ウェルビーイング(well being)
体と心と社会的に、すべてが満たされた状態。
健康とは、病気でないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることをいいます。日本WHO協会
ウェルネス(wellness)
体と心と環境や社会的に、豊かになることを目指すこと。
身体の健康、精神の健康、環境の健康、社会的健康を基盤にして、豊かな人生をデザインしていく。国立大学法人琉球大学 ウェルネス研究分野
マインドフルネス(mindfulness)
今、あるがままの自分に目を向ける行為のこと
今、この瞬間の体験に意図的に意識を向け、評価をせずに、とらわれのない状態で、ただ観ること。Wikipedia マインドフルネス
ヘルスケア(health care)
健康になるため、もしくは健康維持のための行為や健康管理のこと。
健康の維持や増進のための行為や健康管理のこと(中略)未病の段階でそれを的確に察知し、自己治癒力を高めることで早めに対処しておこうとする考え方。Wikipedia ヘルスケア
フィットネス(fitness)
健康になるための運動のこと。
肉体的観点、健康的観点で望ましいと考えられている状態に適っている状態、およびそういう状態でいること、そういう状態でいる/状態になるために行う行為・活動などを指している。すなわち健康のための運動であり、セルフケアの一つを構成する。Wikipedia フィットネス
参考資料
この記事を書く上で参考にしたり引用させて頂いた記事です。深く御礼申し上げます。素晴らしい記事ばかりなので是非原文をお読みください。
矢印株式会社は好きなことを仕事にしています。企業紹介や事業内容、そして経営指標、統計オープンデータ、メンタルヘルス、マーケティングなどの経験も記事にしています。
--- yajirushi owned media ---
note Twitter
Instagram Facebook YouTube
矢印株式会社のご説明
経営者の職務経歴 LinkedIn
矢印株式会社 Contact|お問い合わせ
LINEから気軽に Contact|LINE WORKS
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?