「きみはオフィーリアになれない」 安達凛子 前編 #003
凛子はその魚を一目で気に入った。休みの日に、先輩が車に水槽と用具一式を積んでやってきた。そして、飼い方の説明をしてくれた。エサは水槽に生えている水草とコケだけで十分で、特別に追加する必要はないらしい。
その日から魚との同居生活が始まった。水槽やコケを食べているところを見たことがなく、死んでしまうのではないかと焦ったが、魚はときどき生きていることを思い出したようにぐるりと水槽をまわる。光沢のない純白のウロコをしていて、見つめていると、鏡を至近距離で見つめているような、不思議