殺人ロボット(16)
16
思いがけない愛子の言葉に、
嬉しさと戸惑いを隠す事が
出来ない、私であった。
…どの様に答えれば良いのか?
愛子を傷つけずに答えるには・・・…
「愛子さん。
私は他の人からも太郎君と似てるって言われます。
でも、私は太郎君の様に優しい男ではないです。」
と、答えた。
愛子は、うなずく様に聞いていたが、
「でも、私は貴方が優しい人だと感じます。」
私にとって本当に嬉しい言葉だった。
私は温かい心を無くしたロボット。
冷酷で残虐を好む心しかない人間。
そんな人間を愛子さんは
「優しい人だ」と言ってくれた。
でも愛子さんと付き合う事は絶対にできない。
私の事を知れば、愛子さんを落胆させる。
傷つけてしまう!
私は身を引くべきであり、
もう絶対に会ってはいけない人だ。
その時、私は強く想った
……諦めよう。愛子さんの事は!
いや、私は愛子さんに限らず
私は誰も愛してはいけない、
愛されてもいけない、
「殺人ロボット」だ。
それを肝に染めてこれからは生きる……
愛子さんの電話番号を消去し、
改めて決意を固める私であった。
愛子さんとの出会いから1か月過ぎた頃、
新たな殺人依頼が来た。
1か月は冷酷な自分に戻るにはちょうど良い期間でもあった。
頭の片隅から、愛子さんの想いを消す事に成功した俺は、
元来の冷酷な「殺人ロボット」になっていた。